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「あ~っ、おっかしぃ~っ! こんなに笑ったのって、ホンと久しぶりですわっ!」
シルファー殿下が、お腹を押さえて笑いを堪えている。
殿下はハルコン達の案内を終えたので、もう元の場所へ戻っても良かったのだが、……。
でも、皆の様子が気になるのか、ニコニコと笑顔でその場に残っていた。
「とにかく、……ハルコンもミラ嬢も、学内ではボクらのことは呼び捨てでいい。何しろ、そういうルールだからな!」
マルコム兄の言葉に、ハルコンとミラは当初「どうしよっか?」って具合に、お互いに顔を見合わせていたのだが、直ぐに決断して頷くと、
「「ワカりました、マルコム、ケイザン!」」
「「ヨシッ! それでいいぞ!」」
兄達2人が、笑顔で親指を立ててグッドサインを出してきたから、すかさずハルコンとミラも笑顔でグッドサインを出した。
「プフゥッ!」
その様子を見て、殿下は笑いを堪えようと、何とか口元を手で押さえている次第だ。
「もぉ~うっ、あなた達ってホンと善神に愛されるような人達なのねっ! 見てて、心から飽きさせないわっ!」
その言葉に、3兄弟もミラもニッコリ笑った。
「マルコ~ムッ、ケイザ~ンッ、ど~しよぉ~っ!」
すると、サークルルームに、数名の先輩達がどんよりとした雰囲気で入室してきた。
「どうした、オマエらっ! また何かあったのか?」
「だよぉ。イメルダのサークルに、またメンバーが引き抜かれたんだぜって、えっ!? マジでっ!?」
マルコムが訊ねると、相手はハルコン達が室内にいたことに目を丸くした。
「えっ!? えっ、マジでっ!? オマエの弟さんとミラ嬢までウチにきたのかい? えぇ~っ!? 殿下までいらっしゃるって!?」
「はぁ~いっ!」
そう言って、笑顔で手を振って挨拶するシルファー殿下。
「「「おいっ、マルコムッ! マジかよっ!? 一体、どうなっちゃってるんだ?」」」
兄達のサークルは、セイントーク流合気術を実践する集団なのだが、他のサークルからは弱者連合と揶揄されている。
そのサークルに、華やかな王族と、先日のパーティーで主役を務めたハルコンとミラが、突然訪れたのだ。
「弟とミラは、……とりあえず、サークルの見学だよ!」
「そっかぁ~っ。大いに歓迎するよっ!」
そう言って、先輩達は嬉しそうに笑った。
「マルコム、私達も事情を伺っても構いませんか?」
ハルコンは、少し身を寄せて訊ねた。
「あぁっ。今更隠すことでもないしな。まぁ、ハルコンもミラも、がっかりしちゃうかもしれないんだけどな」
そこでハルコン達は、イメルダのサークルによって引き抜きなどの実害を被っている様子を、ざっと聞かされる。
ハルコンは親身そうに何度も頷いていたが、ミラとシルファー殿下は、「うっわぁ~っ、そんな目に遭ってんの!?」って感じで、半分ドン引きした表情で横から話を聞いていた。