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「兄様っ、サークルの見学に参りましたっ!」
「おぉっ、ハルコン、……よくウチのサークルに辿り着けたな? ミラ嬢もご一緒か?」
長兄のマルコムが、ドア越しに少し驚いた後、笑顔で出迎えてくれた。
ミラがぺこりとお辞儀をしていると、部屋の奥にいた次兄のケイザンも、笑いながら入口までやってきた。
「はいっ、シルファー先輩が、こちらまで案内してくれたんです!」
「「えぇっ!?」」
「はぁ~いっ、私がハルコンとミラをここまで案内しちゃいましたっ!」
「「えぇ~っ!!」」
王族のシルファー殿下が、こちらの背中越しに笑顔で手を振ると、兄達は顔を真っ赤にさせた。
「「ハルコンッッ!!」」
「ひえぇ~っ!」
「次にこんな不調法なことをしたら、ゲンコツだぞっ!!」
「はぁい~っ!」
握り拳を作る次兄のケイザンに殴られたら堪らんと、サッと両手で頭を隠したところ、殿下がクスクスと笑い始めた。
「クククッ、……あの猛者のハルコンが、まさかお兄様達には形無しなのですね? マルコムとケイザン、……ハルコンは何も悪くありませんよ! 私から学園の案内を申し出たのですから、全然構いませんわ!」
「「殿下が、……そう仰るのでしたら」」
「ほらほら、マルコム、ケイザン。私のことは後輩なのですから呼び捨てで構いませんと、何度も申し上げているではありませんか? いい加減、殿下呼びは、こちらも辛くなるだけですよ!」
そう言ってから、殿下は目元を袖口で押さえて、ヨヨヨの仕草をした。
でも、いくら学園が身分に捉われないことを建前にしていても、王族に案内させたのはさすがにマズかったなぁと、……ハルコンは、大いに反省した。
ちらりとミラを見ると、彼女も顔を赤くして小さくなっていた。
「ミラ嬢は全然悪くないっ。悪いのは、ハルコンだけだっ!」
「そうだ、そうだ、ミラ嬢は全然悪くないぞっ! ハルコンが悪いっ!」
「えぇ~っ!」
兄達がミラにフォローを入れると、ミラもおそるおそる笑顔を浮かべた。
「もぉ~うっ、これではいつまで経っても、話が始まりませんわっ! あなた方っ、いい加減大人しくして下さいましっ!」
「「「はぁい~っ!!」」」
殿下の言葉を受け、セイントーク家の男子3人が一斉に姿勢を正すと、それを見て殿下とミラが「「プッ」」と吹き出した。
「「「「「アハハハハハッッッ、……」」」」」
気が付くと、このサークルルームにいた5人、皆で声を上げて笑っていた。