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20 ハルコンとミラ、王立学校に入学する_02

   *          *


「あら、お二人さんっ。入学オリエンテーションは如何でしたかっ?」


 ハルコンとミラが受講案内を聞き終えて、多くの新入生達と共に大講堂から出てくると、シルファー殿下がよく通る声で話しかけてきた。


「殿下、科目がたくさんあって、……どれも大変興味深いです。だよね、ミラ!」


「はいっ、私もそう思いますっ、殿下っ!」


 ミラも、うんうんと頷いている。


「どれも目移りしそうですが、殿下のお薦めの科目とかありますか?」


 ハルコンは、率直にひとつ年上の先輩に訊ねてみた。


「ハルコン様、それにミラさん、……私達は、同じ学び舎で共に学ぶ学徒です。ここでは王族も貴族も平民もありません。ですから、これから私のことはシルファーとお呼び下さい。私もあなた方のことを呼び捨てにしますから。いいですね、ハルコン、ミラッ!」


「「ワカりましたっ、シルファー先輩っ!」」


 朗らかに応じる2人。殿下は、呼び捨てで名前を言って貰いたかったようなのだが。


「まぁ、それでも結構です。えぇと、そうですねぇ、……あなた方にお薦めの科目は、領地経営学と貨幣経済学、それと魔物生物学かしらね。どれも必修科目ですから、早めに取るといいですよ!」


「「ワカりましたっ!」」


 その後、ハルコンとミラの2人は、シルファー殿下の案内で学園内を回りながら、有力貴族や豪商の子供達の紹介を受けている。


 彼らは、先日のパーティーにも参加していた子達だ。そのため、ハルコンがセイントーク家の者だと知って、とても気さくに話してくれた。


 ミラのことも、パーティー会場でその美貌が際立って目立っていたこともあり、皆お近づきになれて嬉しいといって喜んでいた。


「ねぇハルコン。私達もサリナ先輩のフラワーアレンジメントのサークルに参加しているの。だから、あなた達のことも、もちろん歓迎するわ!」


 そう告げる女子生徒達に訊ねると、どうやらサリナ姉のフラワーアレンジメントのサークルは、学内でかなり大手なのだとか。


 すると、その女子生徒達が声を潜めてちょいちょいと手招きするので、ハルコンとミラは近づいて耳を貸した。


「あなた達、イメルダ・ロスシルドの派閥にだけは、くれぐれも気を付けてね!」


「イメルダ・ロスシルド、……ですか?」


「えぇ、そうよ。ちゃんと伝えたからねっ!」


 ミラが、思わず顔を顰めた。あまり話そうとしないから、こちらも訊ねないようにしていたのだが、……ミラは、イメルダのことが相当苦手らしい。


「あの子はねぇ、……ちょっと」


 ハルコンが声のした方をちらりと見ると、殿下が何とも言えない表情を浮かべていた。

 何でもイメルダの派閥は、父親の財力を武器に、学内で相当幅を利かせているらしい。

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