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王宮中ホールの会場は、国の内外の美味しい料理やデザートがビュッフェ方式に並べられ、子供達は目を輝かせて嬉しそうに食べていた。
実はその献立の多くが、セイントーク領発祥のものであり、ハルコンのレシピを参考に王宮の一流シェフ達によって調理されているのだ。
ハルコンもミラ達と共に、軽く食べてみる。
うん、美味い。なるほど、プロが作るとこんな味になるのかと思った。
「さすがハルコンの料理だねっ! 王都でもバッチリ受け容れられているんだっ!」
「そうだね、良かったぁ……」
ミラが目を輝かせて感激した様子で、ハルコンもついつい嬉しくなる。
「あれっ!? ハルコン、あっち見て見てっ!」
ミラがハルコンの腕を取って、会場の奥に連れてゆく。
すると、向こうにいくつも、ファイルド国最新の技術を紹介する展示がされていた。
「うんっ!? あれって!?」
「そうだよっ、工事現場で使った、あのクレーンだよっ!」
「ハハハッ、……凄いなっ! さっそくこっちでも作っちゃったんだ!」
聳え立つクレーンに、ハルコンは唖然として、思わず乾いた笑いを浮かべた。
「ハルコン、見て見てっ! あっちの方なんてさ、……」
今度はスクリュープレスのお目見えだ。次々と新鮮な食用油が出来上がり、係の者がサラダのドレッシングをその場で作って、参加者達に提供していた。
はたまた、次は蒸留器を使って、バラのエッセンスを抽出して香水を作ってみせたりとか。
他にはクレープやお好み焼き、プリン、極めつけは、まだ汗ばむ季節故にアイスクリームが配られていたりとか。
子供達は、夢中になって王都で流行する最新の料理やデザートを味わい、この国の最先端のクレーン運搬技術のアトラクションに、目を輝かせて見入っている。
あんな重たい物が、たったあれだけの人数で運べるのかと、少年達は驚きを隠せない。
少女達は、特に香水づくりに目を輝かせていた。
最近、自宅の屋敷でも使われ始めたシャンプーやリンス。母親や姉達が使い始めた基礎化粧品も、その多くがセイントーク産品だと、よく知っているのだ。
これら技術革新の全ては、戦後のごくごく短期間のウチに、ある一人の少年によって齎されたものだ。
そして、どうやらこのパーティーの席で、シルファー第二王女殿下ご自身が、少年のお披露目をするつもりらしい。
会場に、くだんの少年が招かれているらしいのだけど。一体どの子だろう?
参加者達はそんなことを噂しつつ、その少年が何者か探している感じだ。
子供達の間に徐々に期待が広がっていく中、ハルコンはとりあえず大人しくしてようと思い、終始笑顔を絶やすことはなかった。