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19 子供達のパーティー_02

   *          *


 秋に入ってまだ少し汗ばむ頃、ファイルド国各地の教育機関は、一斉に入学シーズンを迎えていた。


 王都にも国中から夢と希望溢れる学生達が多数詰めかけ、これから慣れない生活を始めるため、期待と不安の入り混じった表情を浮かべている。


 そして、そんな学生達の中に、ハルコンとミラの2人も含まれていた。


 初めての引っ越し。親元を離れ、人でごった返す学園に圧倒される田舎者のミラ。

 でも、……ハルコンは少しも動じている気配がない。


 しかも、生まれて初めて大都会の王都にきているのにも拘わらず、地理も道路事情も店の並びに至るまで、全て把握しているのだ。


「ハルコン、凄いねっ!? どうして、そんなに王都に詳しいの?」


「父上から、よく王都の話を聞いていてさ。それで詳しいんだ。まぁ聞き齧りだけどね」


「ふぅ~ん、そっかぁ~」


 まぁ実のところ、ハルコンは女占い師と念話で文通みたいなことを続けていることもあり、王都の様子を大体把握しているのだ。


 でも、そんな都会の知識チートのハルコンのことを、ミラは何ら疑うことなく尊敬の眼で見つめていた。だから、……ちょっと、後ろめたい気持ちにもなる。


「ミラ、今度美味しいものを食べにいこう! 評判の店があるんだ!」


「やった。楽しみぃーっ!」


 ミラが嬉しそうにしているので、まぁこれでいいかとハルコンは思った。


 王都にもセイントーク家は屋敷を持っているが、王立学校は寄宿舎生活が基本となる。

 ハルコンとミラは新入生でごった返す中、無事入寮手続きを終えてホッとする。


 貴族寮とはいえ、部屋は個室ではなく基本2人部屋だ。もちろん、男女別々の寮棟になっている。

 ミラはハルコンの姉サリナと相部屋になり、とりあえず安心だ。


 通常なら、ハルコンも兄達と相部屋になる。でも、上の兄2人だけで、もうハルコンの入る余地がない。ミラが、心配そうにこちらをじっと見つめてくる。


 すると、まだ慣れない新寮生の群れをかき分けながら、長身の寮長がやってきた。


「ハルコン・セイントーク。キミの部屋は別に用意してある。付いてきなさい!」


「はい」


 返事をしながら、ハルコンは思った。なるほど、シルファー殿下の根回しどおりだなと。


「ハルコン! 一人だけ別部屋だなんて、……大丈夫なの?」


 ミラが心配そうに訊ねてくる。


「大丈夫だよ、心配しないで!」


 そう言ってニッコリ笑うと、ミラもホッとしたように笑った。


 ハルコンは寮長に頷くと、通常の寮棟から中庭で隔てた離れの方まで歩いていく。


「ここがキミの部屋だ。ワカらないことがあったら、後で私に声をかけてくれ!」


「はい。ありがとうございます」


 どうやら、寮長室の隣りの個室が、ハルコンの部屋のようだ。

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