「なるほど。やはりハルコン・セイントークは、傑物であったか!」
「はい、お父様。その認識で、先ず間違いありません!」
王宮にある、王族のためのいつものプライベートルームにて。
王ラスキンは、末娘シルファー殿下とハルコンの人物評について率直に話し合っていた。
室内はソファーと少しの家具があるだけの、非常に簡素な造りに仕上がっていて、王族だけの内緒話をするのにはもってこいの部屋と言える。
12畳程の狭い室内にいるのは、侍女のセロンも含めて3人だけ。今回もまた、セロンの目を通して、ハルコンはばっちり様子を窺っていた。
「もう直ぐハルコンは、王立学校に入学します。彼の頭脳は極めて先進的です。本来なら学徒としてではなく、むしろ教師として迎え入れるべきではないかと思われます。ですが、まだ若干7歳であることから、今回の措置を取らせて頂きました」
「ふむ、そうだな。多少特別扱いしても問題あるまい」
「とりあえず、彼の入る寄宿舎の部屋は個室。最新の学問を記した書籍を網羅した本棚を用意しております。また、様々な研究作業ができるよう、広めのテーブルも用意しました。これで、セイントーク領と同様に快適に過ごせるのではないかと思います」
「当然だな。貴族寮故に、他の貴族家から文句が出たりせんだろうな?」
「寮長に既に話を通してあります。問題ありません!」
「ならば良い。まだハルコンは7歳の子供だ。オマエも友人として、何かと目をかけてやってくれ。それだけで、彼も心強く思うだろう!」
「はい。それに合わせて、近日中に王家主催による同世代の子供向けに、親睦を兼ねたパーティーを催すのがよろしいかと」
「ふむ、……パーティーか」
「私が主幹事という形にすれば、貴族家の子供達もこぞって参加することになるでしょう。如何でしょうか?」
「いいだろう。シルファー、オマエは戦後復興世代の希望の象徴と呼ばれている。できるだけ楽しく華やかに、子供達が目を輝かせるような会を企画してみなさい!」
「はい」
「係の者を何人か付けるので、オマエならそれで十分できるだろう?」
「はい。さっそく手配に取りかかります」
そのやり取りを聞いた後、ハルコンは思った。
シルファー殿下、……私のことを少々買いかぶり過ぎです、と。
それに、陛下まで一緒になって、私のことをVIPか何かと思われてるご様子。
ハルコンはさすがに面食らっていると、シルファー殿下が最後にこう仰られた。
「ハルコン・セイントークは、先ず間違いなく、神の御使い様であらせられます」と。
なるほど。もう全てバレてるのね、とハルコンは思った。