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翌朝、父カイルズがシルファー殿下の査察団一行と打ち合わせをしていると、……。
「カイルズ卿、……もしよろしければ、ハルコン様とミラさんも一緒に連れていっては如何ですか?」
「はい、……殿下の仰せのままに!」
父上は殿下のお言葉に恭しく従い、急遽メンバーに追加して現地に向かうことになった。
途中馬車の中、ハルコンの目に、殿下は終始真面目なご様子に見受けられた。
技官や父カイルズと、工事に携わった延べ人数や、土木の最新技術が駆使されたことについて、事前説明を受けていらっしゃった。
30分程馬車に揺られて工事完了現場に到着すると、セイントーク領内の工事関係者や技官を交えて、改めて綿密な査察が行われた。
だが、既に領内での工事は完了している。シルファー殿下は、ひととおり現場を検分した後で、率直にワカらないことを、領の事情に詳しい父上らに質問する。
その際、更なる詳細は領の技官が補足説明して回答する、というのを繰り返した。
ハルコンとミラは表向きまだ幼いため、実地研修という名目で、後方から査察団とセイントーク領側とのやり取りを見学していた。
今回の上水道普請工事において、驚異的なまでに早く完了したのには、いくつかの理由があった。
ひとつは新しいマンパワーの確保。もうひとつはクレーン運搬技術だ。
ロスシルド領の上水道の普請は、莫大な財力を武器に近隣のマンパワーを独占することで、ほぼ完了間近ということだが。
でも一方で、セイントーク領は獣人達の人的ネットワークを導入することに成功し、新しい運搬技術にも恵まれたこと。
しかも、本来なら失敗することがほぼ確実だったシルウィット領の方も、何とかいいところまで工事が進んでいる。
査察団にしてみたら、本来あり得ない話だったんだろうなぁとハルコンは思った。
父カイルズは、にこやかな笑顔で技術面ではドワーフの親方、マンパワーの面では女盗賊をシルファー殿下に紹介すると、二人は王族相手に緊張した様子で頭を下げて挨拶する。
「セイントーク領は、人に恵まれていらっしゃるのですね」
殿下が率直に笑顔で返されると、
「はい。人あってこその、セイントーク領です!」
父カイルズも、恭しく頭を下げてからそう断言した。
ハルコンは、これまでのやり取りを振り返って思った。
シルファー第二王女殿下は、おそらく傑物だ。いるところにはいるんだなぁと。
殿下がまだ幼いにも拘らず、大人顔負けの知識と知性で専門家達と堂々と渡り合っているのを見て、ハルコンはとても身の引き締まる思いがした。