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17 ミラの縁談_05

   *          *


 査察団の衛兵達は槍や剣を手に闘っているが、ゴブリンライダーの数はざっと30。形勢はかなり不利と言えた。


 ギャッヒャァッッ!!

 ウオォォ~ンッ!


「何としても姫様をお守りしろぉーっ!!」


 戦闘で騒然とする中、衛兵隊長の悲痛な叫び声が続く。

 すると、森の中から突然、……一組の少年と少女が現れた。


「助太刀いたしますっ!!」


 見るからに身なりのいい服装。知性的でよく整った明朗な顔立ち。おそらく貴族の子供達であろうと思われる雰囲気。

 侍女のセロンは、シルファー殿下を守りつつ馬車の中からその様子をじっと見ていた。


「あの方は、……おそらくハルコン・セイントーク様でございます」


「あの少年が!? まだ子供じゃない! それに女の子まで一緒よっ!」


「えぇ。助太刀と仰いますが、私には、とてもそのようには思えません」


「なら、私も一緒に闘うわっ! あんな子供だけ闘わせるワケにはいきませんものっ!」


「なりませんっ! 殿下はここで待機ですっ!」


「グッ、ムゥ……」


 セロンの非常時故の剣幕に、シルファー殿下は従わざるを得なかった。


「いくぞっ、ミラッ! いつものように連携するよっ!」


「了~解っ! いつでもいいよっ!」


 ハルコンとミラは、とても慣れた調子で体捌きすると、急に縮地してゴブリンライダーに肉薄する。


 ギャッヒャァッッ!!

 ウオォォ~ンッ!


「そぉ~らよっと!!」


 ハルコンはごく自然な様子で犬狼の背に飛び乗ると、ゴブリンの下顎を掴んで地面に叩き落す。


「イィ~ヤァァァッッ!!」


 一方、ミラも気合一閃、長枝をぶんぶんと振り回すと、薙刀術を駆使して、次々とゴブリンライダー達を叩きのめしてしまうのだ。


「一体、何なのっ! あの2人っ!?」


 シルファー殿下が、窓にしがみ付いて叫んだ。


「者共っ! 子供達に後れを取るなっ! 参るぞっ!!」


「「「「「「「「「「ウオオオォォォーーーッッッ!!!」」」」」」」」」」


 衛兵隊長の指示に鼓舞されて、叫び声を上げる衛兵達。

 戦局がガラリと変わり、衛兵達はハルコン達の活躍に刺激されたのか、奮ってゴブリン達を倒しては、刃で串刺しにしていく。


 10数分後、……全てのゴブリンと犬狼を殲滅した衛兵達は、ついに勝鬨を上げた。

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