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17 ミラの縁談_03

   *          *


「ねぇハルコン。シルウィット家は、これから一体どうしたらいいんだろう? こんな嫌がらせが、いつまで続くと思う?」


「……」


 おそらくずっと手こずらせられるだろうなぁ、なんて本音を言えるワケもない。


「なら、ハルコンは私達のことを助けてくれる?」


 正直に、ハルコンにお願いしてくるミラ。

 さて、……どうしよっかなぁとハルコンは思った。


 そもそも父カイルズは、ロスシルドと直接事を起こすことは避けたいと思っている。

 セイントーク家の当主がジョルナムを泳がしている以上、子のハルコンがその方針に背くワケにはいくまい。


 ハルコンは、既に東方3領の上水道普請の査察団が急遽編成されたことを掴んでいた。

 なら、その査察団に好印象を与えれば、領同士の諍いに、国が待ったをかけてくれることもあるのかもしれない。


 ハルコンは、様々な可能性を模索した後、期待と不安の目でこちらを見つめてくるミラに向き合った。


「シルウィット領の普請工事が、せっかく上手くいっているんだ。王宮の要請に、ちゃんと対応できてるんだから大丈夫っ! それで、査察団からお墨付きを貰えれば、ロスシルドは嫌がらせをしにくくなると思うよっ!」


「ハルコンがそう言うのなら。でも、何かあったら手伝って下さい!」


 ミラはホッと胸を撫で下ろすと、ニコリと笑顔で頼んできた。

 その辺りの用心深さが、貴族の子女らしいとハルコンは思った。


 すると偶然、……遠方の草木の陰に、ゴブリンの緑色の頭がいくつか動くのを目撃する。

 ハルコンは、慌ててミラの口を塞ぐと、そのまま木の陰にパッと隠れた。


 ミラも異変に勘付いたのか、じっと黙っている。ハルコンは姿を隠しつつ、向こうの様子を窺った。


 あれっ!? 何だか、おかしいな? ゴブリンの頭の位置が、妙に高いんだけど。


 背の低いゴブリンの身長なら、地上2メートルの位置に頭がくるわけがない。

 おそらく、馬か大型の犬狼に跨っているのかもしれないと思った。


 とりあえず、その数を見ていくと、全部で30。街道の方に向かっていくようだ。


「どうやら、ゴブリンライダーの群れに遭遇したみたい。厄介だから、このまましばらくの間、隠れていよう!」


 ミラもこくこくと無言で頷く。


 ライダーの群れが街道に向かったということは、おそらく隊商などを狙っているのだろう。

 さて、この後どうしようか? とハルコンは思った。

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