「やはり、カイルズ・セイントークの子ハルコンは、神の御使いで間違いないのだな?」
王ラスキンの執拗に問い詰める言葉に、女占い師は表情を硬くして押し黙ったままだ。
ここは王宮奥深くにある、とある一室。
時は深夜。燭台の灯りだけが部屋を照らしている。
室内にいるのは王と宰相、女占い師の3人だけ。まさに極秘の話し合いが行われていた。
そして、本日もまた、ハルコンは女占い師に思念を同調させることで、この会談をじっと見守っていた。
「女占い師殿、……貴殿はこのハルコンという少年について、どの程度ご存じか? ざっくばらんで構わないから、話して貰えないか?」
宰相の言葉に、女占い師はかなり動揺している感じ。おそらく、どこまで答えるべきか迷っているのかなぁとハルコンは思った。
「ここ最近の急速なセイントーク領の発展は、王宮でももっぱら噂でな。その陰には、ハルコンという若干7歳の少年が関わっていることを、直属の隠密に調べさせて、報告を受けたところでな」
王の言葉に、もう逃げ道はないと諦めた様子の女占い師。
そもそもハルコンと女占い師は、思念の同調と「天啓」という念話を通して、そこそこ仲良くなっていた。
例えば、セイントーク領で次に出す新商品やサービスをそれとなく伝え、女占い師からは王都で流行の芝居やファッション等を教わっていたのだ。
まぁ、ネットの文通仲間みたいな感じかなぁとハルコンは認識していた。
今回、女占い師は、ハルコンとの関係を重視するあまり、王相手でも極力情報の秘匿をするつもりのようだ。でも、そうなると彼女の立場が悪くなるのは目に見えている。
いやぁ、それはマズいでしょ。何とかしなくちゃなぁ。
だから、今回ハルコンは女占い師に助け船を送ろうと、「天啓」でこう伝えた。
『私のことを、陛下と宰相様にお伝えしても構いませんよ。後のことはこっちで上手くやりますから、もう我慢しなくていいですよ』
すると、女占い師は天井を仰いで、ホッとしたように何度も頷いている。
先程まで、陛下達の追及に対し、もう限界にきている様子だったのだが、……。
「陛下、私からお伝えすることは、ただひとつ。私は、年甲斐もなくこの若干7歳の少年に恋焦がれ、いつの日かお会いしたいと願っております。もうこれ以上、申し上げることはできません」
いや、……むしろ覚悟を決めて、王と宰相の要求を突っぱねることにしたようだ。
王と宰相はファイルド国の最高権力者だが、女占い師の覚悟を前に、表情を硬くした。