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13 異世界チートの及ぶ範囲で_04

   *          *


 セイントーク家とシルウィット家の両家は、ハルコンの齎した数々の発明により、ますます発展しつつある。

 最近では、ドワーフの親方が考案したとされるクレーン運搬技術によって、これら2つの領の普請工事は順調に進んでいる。


 技術革新と獣人ネットワークのおかげで、ついに人手不足は解消した。

 決められた期限までに何とか工事が無事終わりそうで、ハルコンの周辺は皆、ホッと一息吐いていたのだ。


 最近のミラは様々な不安が解消され、以前にも増してかわいらしくなった。

 おそらく、これからローレル卿と奥方様が、ますますミラにハッパをかけてくるかもしれないなぁとハルコンは思った。


 両家の月一度催される食事会でも、奥方様だけでなく、ミラまでばっちりメイクをして出席する。平民出身ながらも、シルウィット領一番の美女と名高かった奥方様。


 更には、美丈夫なローレル卿の血も受け継いだ、美のサラブレッド、ミラ。こっちもばっちりお化粧して、ハルコンにニッコリと微笑むのだ。

 ハルコンじゃなかったら、並の男なら、もうそれだけでイチコロだろう。


 とりあえず、これで両家共に安泰だねとハルコンは思った。


 一方で、ハルコンにはまだ懸念材料があった。

 それは、領都で目撃した暗殺者のNPCの行方についてだ。


 ハルコンは、先日男を取り逃がしたことから、今度は攻めに転じて、何としても探し出そうと苦心していた。

 こうなったら、今回もNPCを操る、異世界チート能力を使わせて貰おうと考えた。


 女神様から推奨されたNPCは6名。現在セイントーク領周辺を生活の拠点にするのは、中年の一級剣士、若い美貌の女盗賊、それとドワーフの親方だ。


 そして、今回ハルコンが採用したのは、中年の商店主のNPC。

 彼は東方3領と王都を結ぶエリア一帯を仕切る大店の代表で、その商業ネットワークは、まるで鷹の目のようにエリア一帯の情報を収集し、その全てを把握していた。


 ハルコンは、そんな要職に就くNPCの思念に同調して、男の行方を継続して追っていたのだ。

 すると、しばらくして男の潜伏先が、隣領ロスシルド領の代官屋敷だということが判明した。


 やっぱりねぇ。ロスシルドが、何者かの殺害を目論んでいたのかもしれないね。

 これは、何て言うのかな。ウチやシルウィット家を出し抜こうとする、ジョルナム・ロスシルド伯爵らしい行動と言えるよね。


 ハルコンは、暗殺者の思念にさっそくリンクを貼り付けると、何かあっても直ぐに対応できるよう、手はずを整えた。

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