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13 異世界チートの及ぶ範囲で_03

   *          *


 美男美女揃いのシルウィット家のミラは、素材が大変素晴らしいだけに、ナチュラルメイクひとつでもガラリと印象が変わりそうだなぁとハルコンは思った。


 さっそく化粧筆の使い方や口紅、白粉の使い方をざっと説明すると、ミラは大真面目な顔で頷きながら話を聞いていた。


 何しろ領に戻ったら、母親相手に本日の化粧道具の効能や使い方をひとつひとつ説明しなければならないから、とても責任重大だ。

 とにかく、一言一句聞き漏らさないよう、じっと耳を傾けている。


「それでは、始めてみようか?」


「よろしくお願いしますっ!」


 ミラの緊張して強張った顔。目つきもギラついている。


「ほらぁ、リラーックスゥ、リラックスだよぉ、ミラ!」


「はいっ」


 大体10分程で、その工程をワカり易く実践形式で説明しながら、とりあえずアッサリ目に仕上げてみた。


 大体こんな感じかな? ミラの土台が美しいから、これ位造作もないよね。

 まぁこれも、前世が女性で、かつ絵心のあるハルコンだからこそできる芸当なのだが。


「ねぇ~っ、ハルコン。私どうなった?」


「いいよ。見てごらん!」


 そう言って、ミラに手鏡を渡してみると。


「これって、……私なのっ!?」


 まるで、部屋一面、匂い立つバラでいっぱいにしたような美少女。

 おそらく、東方3領の選りすぐりの美女を集めてみても、今のミラに敵う者など決していないはずだ。


「ミラは素材がいいからね。ホンのちょっと手を入れただけで、これだもん」


「……」


 ミラは手鏡に映る己の姿を、うっとりと見つめている。それも、穴が開く位に。


 あぁ、ちょっとやり過ぎたかな。

 このままでは、自分の美貌をこよなく愛してしまうナルシストさんになってしまうかも。


「はいっ、ここまでっ!」


 そう言って、ハルコンは手鏡をサッとひったくると。


「えぇーっ!?」


「ミラ、本日は新作料理を試食して貰いたいと思います。美味かったら後でレシピを渡すので、領に持ち帰って下さいねっ!」


「新しい料理っ!?」


 どうやら、ミラは色気よりも食い気の方が勝るお年頃のようだ。彼女の関心は、急速に料理へと向かっていく。


 ハルコンにとって、料理は現代日本の家庭料理だけでなく、フレンチもイタリアンもお手のもの。

 まぁ、この世界にはそもそも米がないので、……とりあえず蒸したジャガイモで代用して、洋食のオムポテトハンバーグでも作ってみようかな。

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