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「なぁハルコン。オマエはとても賢い子だから、この際伝えておく。今から3ヶ月前のことだ。私が懇意にしている情報屋から、いくつかのタレコミがあった」
あぁ、なるほどね。その話からか。ハルコンは父の顔を真っ直ぐに見つめながら、そう思った。
その情報屋は、表向きは王都で有名な女占い師だが、裏の顔は情報屋の元締め。
王都に集まる無数の情報を、一手に握っている人物でもある。
何でそんなことを私が知っているのかと言えば、彼女もまた思念を同調させている、女神様御推奨のNPCの一人だからね。
そんなことを思いながら、ハルコンは父の話を聞いていた。
どうやら父の話によると、女占い師は、率直に数枚の資料と共に、ロスシルド伯が隣国コリンドと密貿易を行っていることを伝えてきたのだという。
「私もな、考えたくもなかったのだが。やはりな、……というのが正直な感想だ。これで、ロスシルド伯については疑念が確信に変わったと言っていいだろう」
「父上は、それでどうされるのですか?」
「差し当っては、ロスシルド伯の件はこのまま内偵を進めるつもりだ。占い師には今後とも継続的に面談をする旨伝え、彼女の今後の活動資金として金貨を望むだけ渡すことにしたよ」
「なるほど、……そうでしたか」
「なぁ、ハルコン。オマエは、この件をどう思うかね?」
あぁ父上、さっそく私に相談してくるんだね、とハルコンは思った。
もう既に、女占い師の思念に同調させているため、状況をよく理解しているつもりだ。
「私がお伝えしてもいい話なのでしょうか?」
「オマエは有能だ。まだ幼いとはいえ実績がある。今回の普請の件に関しては、実はロスシルドの忠誠心を試すために行われている。その事も踏まえて、オマエに話しているのだ!」
「私からは、父上に特に申し上げることはありません。突然の普請の理由がワカり、なるほどと思っただけです」
カイルズの語ることは、要するにロスシルドは敵国コリンドと内通しているということ。
今回の普請工事は、彼の王家に対する恭順の意を示させるために、あえて為されたものであるということ。
だったら、シルウィット家にとって、とんだとばっちりだよなぁとハルコンは思った。
「とにかく、オマエにはホンと感謝しているのだ。我が領だけでなく、シルウィット領をも救って貰い、親として適切な言葉が見つからない。だからな、ハルコン。ありがとう!」
そう言って、カイルズはハルコンの頭を優しく撫でた。