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カイルズとローレル達は、ソファーのボックス席で車座になって、誕生日会が始まるまでの間、何か商いの話を熱心に行っている。
どうやら、かなり順調そう。大人達の表情が、ハルコンにはとても和んで楽しそうに見受けられた。
その一方で、ハルコンは先程よりずっと、ミラからの熱い視線を感じていた。
ミラは、自分が如何に能力の優れたお得物件であるかをアピールしつつ、虎視眈々と獲物を狙う。そんなハンターのような目つきで、こちらを窺っているのだ。
「ハルコン様。私3歳の頃より剣術、組手、槍術を習っておりまして。実は一級剣士の先生からも、よく褒められております」
そう言って、ミラはニッコリと微笑んだ。
「それは素晴らしい。もしよろしければ、我が家の修練場にて、後ほど拝見させて頂けませんか?」
ハルコンは、さも興味がある様子で、にこやかに訊ねてみた。
「ですが、……私の本日の服装では、さすがにお見せ辛いかと」
そう言いながら、ミラはドレスのスカートの裾を、少しだけ持ち上げてみせた。
「でしたら、後日改めて、我が屋敷にお出でになって頂けたら如何でしょう?」
ハルコンがニッコリと微笑むと、ミラもバラが咲いたような笑顔をする。
ミラにしてみると、目当てのハルコンから次の面会の機会を得られたということ。それは彼女にとって本日最大の目標であり、無事達せられたことになる。
ハルコンはこう思っている。
まだ6歳にも満たないミラが、思いの外上手く交渉してくるんだもんね。なんか、率直に楽しんじゃったかなぁと。
ホンとさ、この子かわいいんだけど、……結構やり手だよなぁと、思わず感心してしまった。
その後、誕生日会が始まり、たくさんの同年代の子供達と会話をしたハルコンだが、子供達相手故に、少々物足りなさを感じてしまった。
一方、ミラとのごく短い会話の中で、彼女の相手への気遣い、目標達成への意志力、胆力等、様々な魅力を強く感じ取っていた。