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09 ミラ・シルウィット その1_09

   *          *


 カイルズとローレル達は、ソファーのボックス席で車座になって、誕生日会が始まるまでの間、何か商いの話を熱心に行っている。


 どうやら、かなり順調そう。大人達の表情が、ハルコンにはとても和んで楽しそうに見受けられた。


 その一方で、ハルコンは先程よりずっと、ミラからの熱い視線を感じていた。


 ミラは、自分が如何に能力の優れたお得物件であるかをアピールしつつ、虎視眈々と獲物を狙う。そんなハンターのような目つきで、こちらを窺っているのだ。


「ハルコン様。私3歳の頃より剣術、組手、槍術を習っておりまして。実は一級剣士の先生からも、よく褒められております」


 そう言って、ミラはニッコリと微笑んだ。


「それは素晴らしい。もしよろしければ、我が家の修練場にて、後ほど拝見させて頂けませんか?」


 ハルコンは、さも興味がある様子で、にこやかに訊ねてみた。


「ですが、……私の本日の服装では、さすがにお見せ辛いかと」


 そう言いながら、ミラはドレスのスカートの裾を、少しだけ持ち上げてみせた。


「でしたら、後日改めて、我が屋敷にお出でになって頂けたら如何でしょう?」


 ハルコンがニッコリと微笑むと、ミラもバラが咲いたような笑顔をする。


 ミラにしてみると、目当てのハルコンから次の面会の機会を得られたということ。それは彼女にとって本日最大の目標であり、無事達せられたことになる。


 ハルコンはこう思っている。


 まだ6歳にも満たないミラが、思いの外上手く交渉してくるんだもんね。なんか、率直に楽しんじゃったかなぁと。

 ホンとさ、この子かわいいんだけど、……結構やり手だよなぁと、思わず感心してしまった。


 その後、誕生日会が始まり、たくさんの同年代の子供達と会話をしたハルコンだが、子供達相手故に、少々物足りなさを感じてしまった。


 一方、ミラとのごく短い会話の中で、彼女の相手への気遣い、目標達成への意志力、胆力等、様々な魅力を強く感じ取っていた。

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