2月に入ってから、ここ数日吹雪くことなく暖かい日差しに恵まれたその日。当初の予定どおり、ハルコンの生誕パーティーが盛大に催された。
ハルコンはパーティーの最初にソフィアに抱きかかえられてお披露目されると、大ホールの参加者達から温かい拍手と歓声に包まれた。
へぇーっ。こんなに人が集まるんだ。
人々のあまりの多さに、思わず息を飲むハルコン。
とりあえず、スマイルからだよね。ほらっ、営業はスマイルからって言うじゃない。
ハルコンが笑顔でキャッキャッと右手を振って返したところ、会場は大いに盛り上がった。無数の祝福の言葉に、ハルコンの頬は自然と緩んでしまう。
「良かったわね、ハルコン。皆さん、あなたのことを大事に思って下さっているのよ」
彼を抱きかかえるソフィアが、耳元に優しく声をかけてきた。
「キャッ、キャッ、キャハッ」
再びハルコンは笑いながら人々に手を振ったところ、会場は更に盛り上がる。
ハルコンは、自分がアイドルにでもなったような錯覚に陥った。
「ソフィア、そろそろ体に障るから、……別室に戻ってくれないか?」
カイルズが気遣って声をかけてきた。
「えぇ、そうでしたわね」
生後数か月の赤ん坊だ。祝宴の席に長居はせず、直ぐに母や兄姉達と共にホールから退散し、後は隣室の応接室で個別に出席者と挨拶する手はずとなった。
出席者達は近隣の貴族だけではなく、地元の有力者といった平民達も多く含まれている。
今回の生誕パーティーは、貴族向けの見栄を張った豪奢な催しというよりも、ハルコンの生誕を共に祝って欲しいという趣旨が前面に出されていると言っていいだろう。
酒も食材もふんだんに用意され、ご馳走や歓談に楽しむ参加者達。
応接室に移動すると、部屋の片隅のテーブルの上にハルコンへのプレゼントがたくさん置かれ、なかなか豪華な様子が窺えた。
暖房の効いた応接室で、ソフィアと子供達は時折招待客と話をしながら、ゆったりと過ごしている。
ハルコンは、まだ幼い兄姉達がおすましをして、時折笑顔を挟んで接客する様子を見ていると、なるほど、これが貴族特有のスキルなのかと感心する。
ハルコンの目から見て、兄姉達は将来美男美女になるだろうなと思われた。穏やかな物腰に、母譲りの金髪碧眼の端正なつくりの目鼻立ち。まさしく貴族の子供達だ。
来客達が続き、彼らの持ってくるプレゼントが、次第に増えていく。
先の方の置き場のなくなった箱は、女中が恭しく別室に運んでいく。
なるほど。こうやって、セイントーク家が地元の最有力者であることを誇示しているのかなぁと、ハルコンは思った。