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03 神の御使い、ハルコン・セイントーク_01

 ここは、地球から遠く離れたところにある、ファルコニアと呼ばれる異世界。

 様々な人種が多く住む、地球の中世文明レベルの、豊穣な世界だ。


 人種は地球のそれとは大きく異なり、いわゆるヒューマンの他に、亜人という種族がいる。

 大きく分けると、亜人はエルフ、ドワーフ、獣人、竜人の4種族だ。


 圧倒的にヒューマンの数が多く、全体の6割方を占めている。残りの4割が亜人種だ。


 女神様は、その世界の中堅国家であるファイルド国という王政の国に、聖徳晴子を遣わした。人口は王都が75万。国全体で800万人程。


 その王国の面積は、32435k㎡。日本で当てはめると、大体関東地方位の面積だ。

 四季に恵まれ、豊かな景色が楽しめる、風光明媚な土地と言える。


 東方エリアが海洋に面していて、その大半が平野と森林で構成されている、豊かな農業国だ。王都を始めとした都市部では、家内制手工業レベルとはいえ、工業も盛んだ。


 長年続いた隣国コリンドとの戦争も、現在休戦中だ。一時的とはいえ、この国にも平和が齎されていた。


   *          *


 晴子は転生する際に、何らかの通過儀礼などが伴うのではないかと期待していたのだが。


 でも実際は、女神様が満面の笑顔で晴子の両手をギュッと握り、その齎される多幸感の波に晴子がよろめいている隙に、全ての処置が施されていた。


 聖徳晴子という人格は、女性としての身体が消滅する感覚を味わうこともなく、……。

 その際に、大きな痛みもなく、苦痛すらなく、……。


 自らの意識を奪われることもなく、……。

 暗闇に足元を取られることもなく、……。


 唐突に、……意識をロストした。


   *          *


 晴子は、自分がいつの間にか泣き喚いていることに気が付いた。


 不思議なことに、視力も聴力も既に備わっており、自身を囲む産婆や手伝いの女中達、少し離れたベッドに横たわる母親らしき人物と、その娘らしき少女の様子が一望できた。


 私、……もしかして、生まれ変わった!?

 あぁっ、……もう転生しちゃったんだ。


 これまでの私。慣れ親しんだ170センチ近い長身も、女性の身体も、既に存在しない。


 泣き喚くのを止め、意識的に周りを窺っていると、産婆や女中達が心配した様子で騒ぎ出した。


 いけないっ! 私っ、今、赤ん坊なんだよねっ!!


 慌てて泣き始めると、周りもホッとした顔をする。

 すると、先程の少女が近づいてきて、……その生まれたばかりの手を、優しく握った。


「キミは男の子だね。私は、お姉ちゃんのサリナだよ!」


 えっ!? 男の子って!? 

 やはり、……女神様のご説明のとおり、性別も変わっちゃったんだ。


 戸惑っていると、そのサリナという少女は満面の笑みを浮かべている。


「これから、ヨロシクねっ、弟クンッ!」

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