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「晴子さん、……あなたは地球の人類にとって、類まれなる人物でした。そんな素晴らしいあなただからこそ、私は大いに期待しているのです。私の願いを叶えて頂けませんか?」
女神様は、さっきからずっと晴子の両手をしっかりと握って放さない。
晴子の全身を、女神様の齎す真善美の3つのパワーが駆け巡り、多幸感の嵐が波のように幾重にも迫っては、彼女の頭脳を蕩かせてゆく。
通常の人間に、万能の神が迫ってきたらこんな具合なのか。かつてギリシャの神々も、人間に随分な扱いをしてくれたもんだが、……。
でもっ、今回のはそれ以上でしょ!? もう女神様のご提案、絶対断れないよぉ~っ!
「ワッ、ワッカりましたっ! 受けますっ! 女神様のご提案、私受け容れますぅ~っ!!」
「あらやったぁ~っ! 受け容れて下さるのねっ! さっすが晴子さんっ!!」
女神様はニンマリと笑い、ぺろりと舌を出している。
晴子は肩で息をしながら、とんでもねぇ~女神様だと、思わず苦笑いをした。
幸い、女神様は晴子のことを大変気にかけて下さり、たまに様子を見にこられるとのこと。
「まぁ、先ずは恋愛かしらね。晴子さんは前世では恋人なしの独り身でしたから、今度の世界では恋愛を大いに楽しみなさいな!」
晴子は、女神様が大変押し付けがましいなぁと、思わず苦笑いする。
「生前の私は、異性に非常に冷淡だったと思います。ですから、……今度も生涯独身なんじゃないかなぁ」
そう自己分析したところ。
「晴子さん。今度のあなたの人生は、とても素晴らしいものになると思いますよ。何か問題があれば、その都度一緒に悩んで上げますから」
そう言って、ニコリと微笑む女神様。
「ありがとうございます」
「とりあえず、お薦めのNPC人格達を、メンテナンスも十分済ませてあります。おそらく退屈させませんよ! ウフフフッ」
それは大いに期待して良い、ということなのだろうか?
生前あまりにも忙しかった晴子は、自分が何人もいたらいいのにと常々思っていた。
だから、女神様のご提案は、とても楽しみでもある。
それにしても、……だ。
「晴子さんの生前過ごされた地球でも、その人類の3割、約20億人が実はNPCだったんですよっ! ウフフフッ」
女神様が朗らかに告げる驚愕の真実に、思わず背筋がゾッとする晴子であった。