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02 7枚のチケット_04

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「あなたがこれから7回、命の営みを行うのもいいのですけれど、……どうせでしたら、一度に7人分の人生を歩んでみては如何ですか?」


 ニッコリと微笑む女神様に、晴子は眉間に皺を寄せて考え込んだ。


「それは、いわゆる多重人格なのでしょうか?」


「いいえ。これからあなたには、単純にいくつもの人生を同時に歩んで欲しいの。有体に言えば、メイン人格で基本の生活をし、残りはNPCをサブ人格として利用して欲しいのね!」


「NPCって!? ネットゲームの、ノンプレーヤーキャラクターのことでしたっけ?」


「そう、それですね! 予めその星の文明が効率的に回るように、私どもでそういったキャラクターを用意しているの。それらには個別に記憶と能力と性格をインストールしていますから、その人格に相応しい行動を取ることができているのね」


 晴子は、この話がいわゆる人間機械論に通じているのではないかと思った。

 誰しも一度は思い当たる話の類ではあるが、……まさか女神様ご本人からこんな話を聞かされるとは!?


「晴子さんのメイン人格には、今回に限り、生前の地球での経験値や知識、思考を付与させることにします。それにより晴子さんの天才的な頭脳が活かされ、一人で複数の人生の並列進行が可能となることでしょう!」


 女神様によると、メイン人格は、とある異世界の、……中規模国家の辺境の中堅貴族、その3男坊に生まれ変わる。

 晴子の転生は、赤子として生を受けるところからスタートする。


 次に、サブ人格は膨大な数が用意され、その人種も年齢も性別も多岐に渡る。


「私の自信作なのが、中年のヒト族の一級剣士、ヒト族の若き女盗賊、ヒト族の妙齢の女占い師、弓使いの女エルフ、一級鍛冶士の中年ドワーフ、ヒト族の中年の商人ですね!」


 そう言って、笑顔でお薦めしてくる女神様。

 晴子は、さすがに困惑した。だって、……話が急展開過ぎるから。


「これら6つのサブ人格達は、いずれもスタンドアローンのNPCとして、既に世界に存在しています。それぞれの性格や経験値は、その最適解がインストール済み。環境に最も馴染んだ人格を形成していると言えましょう!」


 女神様のあまりの熱心さに、晴子の天才的な頭脳でも、思わずショートしてしまいそうだ。


 晴子は直感的に確信する。この女神様はもしかすると、……新たに私こと聖徳晴子という玩具ができて、とても楽しくてたまらないのではないかと。

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