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「あなたがお亡くなりになって、たくさんの人が泣いていましたよ。あなたの人生には、とても意味があった。それはご家族や身の回りの人達だけでなく、全人類にとって、とても掛け替えのないことであったと言えるでしょう」
女神様の思いやり深い言葉を聞いて、晴子は静かに涙を流した後、再び断言する。
「私は自らの行いに対し、いささかも後悔しておりません!」
「そうですか。なら、来世では例えば中世ヨーロッパのような異世界に移り住んで、現代日本の知識を駆使してチートとなり、悠々自適にスローライフを送りたいなぁんて。そんな気持ちはありませんか?」
「どうでしょう? 私には、スローライフなんて性には合いませんから」
女神様は、晴子の返事に目を細めて、うんうんと頷いている。
「でしょうね。大体そんなことを思う輩は、現代日本のブラック企業で、雀の涙程の薄給で扱き使われる程度の人物に過ぎませんしね。まぁ反骨心もなく、大して能力の期待できない、間抜けでお人好しな者がほとんどなのですから」
そう言って、屈託なく笑う女神様。
晴子は、女神様の背後に、一瞬黒いオーラが浮かび上がったような気がした。
「その点で、晴子さんは大いに異なります。あなたは現代日本でも文字どおりの天才で、人類史に名を残すような実績のある、いわゆるチーターです。なので、来世でもぜひ活躍して欲しいですし、私としても大いに期待しているのです」
「来世って仰いましたけれど、死後の世界は天国か地獄なのでは? もし天国ゆきなら自分の行いが認められたようで嬉しいですし、……仮に地獄なら鬼の獄卒となって、私を死に追いやった輩を永遠に甚振り尽くしてやりますよ」
晴子はそう言ってから、ヒッヒッヒッと黒いオーラを漂わせながら微笑んだ。
「いいえ、来世には、生前の善悪や道徳によって裁かれる世界はありませんよ。あるのは無数に存在する異なった世界、いわゆる異世界です」
「……、なるほど」
晴子は女神様の説明に頷いた。
なら、自分の魂はどこか別の世界にこのまま送られてしまうのだろうか?
そう思ったところ、女神様は次のように強調する。
「実は晴子さん。あなたは生前の行いが正しく7人分の活躍であったため、その魂のチケットが7枚もあるのですよ!」