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最終話◇桜の世界で幸せに……そして新たな世界へ旅立つ男◇

「みんな~~~っ! 蘭華ッ! 帰ってきたぞーーーっ!」


 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!


 大歓声の鳴り響く桜ヶ丘ドームの観客席。

 5万人を収容する客席の全てが彼女のファンで埋まり、待ちわびていたアイドルの帰還に歓喜の雄叫びを上げる。


「みんな、長い間いなくなっちゃってゴメン。今日はね、みんなにお知らせがありますっ! なんとっ! 蘭華は新しい仲間を加えて、アイドルグループとしてみんなに歌を届けたいとおもいまーすっ!」


 会場が突然の発表にどよめき始める。


 これまで一人のアイドルとして完成してきたと言っても過言では無い蘭華が、突然グループとして活動し始めるというのだ。


 普通は逆だ。グループから脱退してソロになることはあっても、ソロからグループになるケースは非常に珍しいだろう。


 だが、にわか仕込みのグループではない。

 心と心同士を繋げ合った、まさしくソウルメイトというべき仲間達が支え合って皆の心を掴んでいく。


 そんなアイドルグループが、今誕生しようとしていた。


「それでは新たに加わるメンバーの紹介ですっ! 優奈、小雪、舞佳、そして美砂~」


 そうしてステージ脇から舞台に上がる四人の美少女達。


 いずれも蘭華に負けず劣らずの容姿の美しさを持ち、そのタイプもバラバラで、どよめきは徐々に歓声に変っていく。


「はじめまして! 優奈ですっ! 突然ですみません、これから皆さんに素敵な歌とダンスを届けられるように頑張ります!」


 優奈の可憐な容姿は、魅惑の声と相まって観客の心を早くも掴む。

 突然現われた謎の美少女の登場に、観客の歓声は更にヒートアップしていった。


「小雪の名前は小雪。蘭華ちゃんのパートナーとして認めてもらえるまで、頑張る」


「舞佳でーすっ! 元気印が取り柄の溌剌娘ッ! みんなに元気をお届けできるようにがんばりまーすっ!」


「美砂……。頑張る」


 五者五様。個性豊かな女の子達が次々に自己紹介し、観客は一気に彼女達に魅了された。


 小雪と美砂。

 蘭華と舞佳。


 キャラがかぶっているように見えるが、優等生キャラの優奈が自由過ぎる四人を制御するという構図が徐々に出来上がり、ファンに受け入れられていった。


「今日から私達、『桜色の乙女団』として活動していきますっ! 皆応援してねっ! それじゃあ私達のデビュー曲、「始まりの丘」聞いてください」


 歓声に包まれる桜ヶ丘ドーム。

 蘭華というアイドルが進む新たなステージに、観客は一人として否定的な感情を持たなかった。


 それは紛うことなき、彼女達が持っている天性のヒロインとしての風格の成せる業だ。


 ◇◇◇


 美砂を復活させ、俺のヒロインハーレムは完成した。


 その後の俺達は毎日をやりたい放題ドスケベシチュエーションを心行くまで堪能していた。


 俺がこの世界の管理者になったことでエロスキルは自由自在。


 学園生活は夏休みを迎え、皆で海のリゾートに行ったり、祭りを堪能したり、レジャーを貸し切って遊び倒したりと。


 エロい事以外にも思い出を重ねつつ、俺は欲望のままにヒロイン達と非現実シチュエーションでエロいことをしまくった。


 それらを事細かに語っていきたいところだが、とりあえず先に伝えておくことがある。


 蘭華はアイドルに復帰し、ファンを歓喜させた。

 しかし、それだけではなく、新しいサプライズもひっさげての復活となったのである。


 活動を休止していたのは、新たなメンバーの選出を密かに行なっていたからだ、というのが表向きの理由だ。


 もちろんそんな選出は行なっておらず、蘭華の分身である美砂は、蘭華の能力の全てをコピーされた天性のアイドル気質だった。


 そこにシンクロした親友となった優奈が加わり、仲の良かった小雪、舞佳も加わってアイドルユニットとして再デビューを果たすことになる。


 これが後に世界的な人気アイドルグループへと成長していく事になるのだが、それを語ることはもうあるまい。


 ◇◇◇


 さて、俺がこの世界の管理者になってやった事と言えば、ヒロイン達とのエロいことばかりではない。


 まずは主人公のその後の世話だ。


 あの後、霧島の魂を引っこ抜いてからの顛末を話しておこう。


 蘭華が復活し、この世界の異物である霧島の魂を引っこ抜き、主人公は全ての力を失った。


 しかし、どういうわけかこれまでの記憶は失っておらず、自分がやってきたことをちゃんと自覚していた。


 そして精霊によって強化された肉体は元に戻り、ボコしたヤンキー達に壮絶な復讐をされたようだ。


 しかも悪い事にヤクザの手下が混じっていたらしく、拉致されてボコされたあげく、強面のお兄さん達10人に囲まれて、いわゆる「東京湾コース」寸前だったらしい。




 俺としては死のうが朽ちようがどうでも良かったが、ヒロイン達にとってはかつての幼馴染み。


 野垂れ死には後味が悪かろうと思い、琴葉に命じて人を使わし、ヤクザ事務所から救い出した。


 どうやら死ぬ寸前まで痛めつけられたらしく、半年以上にわたる入院生活をすることになる。


 俺達の邪魔をするだけでなく、調子こいて人を傷つけた報いはそれで十分受けただろうと、ヒロイン達も納得していたので、それが終わったら静かな余生が過ごせる環境を準備してやった。


 具体的には一家まとめて他県に引っ越しさせたのだ。

 この町から出て行くことは、ゲーム世界からの離脱を意味する。


 人間関係を完全にリセットした新しい環境で、どう生きていくのかはアイツ次第。


 少なくともこの町では嫌われすぎてしまった好摩が肩身の狭さに耐えながら生きていくのは厳しいだろうということで、琴葉に命じて新たな環境だけ準備してやったのだ。


 あとはどうとでも生きていけば良いだろう。

 霧島に壊れされて自己保全と排他主義な性格になってしまったとはいえ、これからの人生もその性格で生きていかねばならない。


 あいつの苦労はこれからが本番だ。


◇◇◇


 ヒロイン達との生活も順調である。


 優奈、小雪、舞佳、美砂は、蘭華と共にアイドル活動に勤しみ、学園生活との両立に忙しい日々だ。


 小雪はそれに加えてVTuberとしても活動しており、最近は正式に子兎ルルカの所属する大手事務所にスカウトされて正式にプロのバーチャルアイドルとしても活躍している。


 そういう意味で言ったら劇的に変わったのは小雪かもしれないな。


 ヴァーチャルでもリアルでもアイドルとして大活躍だ。


 涼花はその年の同人誌の祭典で新たに販売した同人誌が爆発的大ヒットとなり、プロのイラストレーター兼漫画家としてデビューすることになった。


 俺をモデルにした「チャラ男×ちっぱいヒロイン」のグチャエロ寝取られ同人誌はアニメ化もされ、世の中のスケベ達の脳を破壊しながら下半身に衝撃を与え続けている。




 次に初音と彩葉だ。

 この二人はアイドルとかデビューとかの派手なバックグラウンドはないものの、毎朝俺の家に来て食事の準備や洗濯、掃除といった身の回りの世話を甲斐甲斐しくやってくれた。


 特別な才能を有して大きな活躍をするヒロイン達もいいが、こうして俺の身の回りを「普通の女の子」として世話してくれる二人に毎日癒されている。


 もちろん夜の生活は別だ。初音は退廃的なドMだし、彩葉はとにかく全部のことに一生懸命だ。


 肉欲は初音。心の安らぎは彩葉。


 それらを「普通の女の子」として与えてくれる二人に、俺の心はいつも癒やされている。


 桜結美ちゃんは相変わらず初音のことを俺から取り返そうと、あの手この手で迫っては返り討ちにされて、結局初音と一緒にグズグズになるまでエッチするのが常だ。


 最後に琴葉と桃華。

 琴葉はハーレムを作る俺の経済的基盤に欠かせない飯倉家の財力を既に手中に収めており、将来多くの女達と一緒に暮らすマンションの建設に取りかかっている。


 町内の一等地に5年後に完成する最高級マンションは、俺達が一緒に暮らす巨大な城となる予定だ。


 琴葉は俺のためにまったく自重することなく実行しようとするため、やりすぎないようにするための歯止め役となっているのが桃華だ。


 彼女の苦労が目に見えるようであるが、それを享受しているのは俺自身なので、ご褒美と慰労を兼ねて時折二人きりのデートに連れ出したりしている。


 最後に絵美のことだが、付き合ってしばらくはハーレムに参加することはなかった。


 彼女に関しては知っての通りかなり特殊な立ち位置であり、若い女の子達の輪の中に入れずにいた。


 何しろ年齢が違うし、純粋な恋愛感情というものが初めてだっただけに、過去の自分の行いが嫌なものに感じて「自分は汚れている」といって近づこうとしなかった。


 それを救ったのがヒロインの中で唯一接点のあった美砂だ。


 ひょんな事から美砂と再会し、そこから色々あって全員と打ち解けることになった。


 簡単にいうと美砂が絵美に懐いて、最終的にエッチに参加することになり、裸の付き合いで解り合う、みたいな流れだ。


 それがきっかけで元々勤めていたOLを退職し、【桜色の乙女団】のマネージャー兼SPとして再就職することになった。


 もともと女子に対しては面倒見の良い性格をしており、色々と人生経験も豊富なだけあって、今では女の子達の良き相談役となってくれている。


 こうして、11人のヒロイン+1人の女との幸せなハーレム生活を満喫している俺であるが、それらに刺激的な潤いを与えくれるイレギュラーが最近になって復活した。


 いや、俺が復活させたのだ。


『さあさあっ! 久しぶりにいきましょーっ! 妖精さんのラッキーちゃ~んす★のお時間ですよー♪』


 そう、俺をこの世界に転生させ、翻弄させてきた妖精さんの正体は桜木蘭華であった。


『まさか私の人格を独立させて復活させるなんて。あんたも好きネー♡』


 なんというか、俺の中で蘭華と妖精さんは分けて考えたかったという想いが根底にあった。


 それにアイドルとして復帰した彼女はとても忙しく、俺のそばにいられないことも多い。


 俺のためならアイドルはいつでもやめてしまえる蘭華だが、彼女がヒロインたらしめる要素のアイドルを捨てることはない。


 そして妖精さんと蘭華を完全に独立させたことで、俺の中で蘭華のヒロイン像が安定することになるという副次効果もあった。


 これで俺のハーレムは完全になった。


 これからも大好きなヒロイン達相手にやりたい放題する生活が続いていくだろう。


 なんといっても人生の大半を捧げたゲームのヒロイン達とのラブラブ生活なんだ。


 楽しくないわけがない。


『さあそれじゃあ行ってみましょ~♪ 【真夜中のPV撮影! 可愛いヒロインあなただけのエッチなビデオ作っちゃおうぜ大作戦ッ】』


「いやぁ、私国民的アイドルなのにこんなドスケベ衣装着たの初めてですよぉ」

「でも、せ、先輩が喜んでくれるなら、私、頑張りますっ!」

「リョージ、とってもエッチ。美砂も嬉しい。エッチエッチで頑張る」


 蘭華、優奈、美砂の着用しているのは、今度セカンドシングルで着用する予定のアイドル衣装だ。


 しかし、本来あるはずの大事な部分がくり抜かれ、あられもない姿で丸見えになってしまっているドスケベ衣装である。


 もちろんこれは妖精さん空間だけの特別仕様。

 俺だけが知っている扇情的な桃色プロモーション映像の撮影だ。


「えへへ~。亮二君はこういうエッチな衣装が大好きですよねー。舞佳も恥ずかしいですけど、勢いで乗り切りましょー」

「お兄ちゃん、小雪、エッチなこと、頑張る。アイドルも、頑張る」


 当然舞佳と小雪も同じ衣装で撮影に臨んでいる。


 そして、それに加えて新たなメンバーが参戦することになる。


「りょ、りょうくーん、この格好すっごく恥ずかしいんだけどぉ」

「亮二さんのエッチな視線がたまりません。恥ずかしいけど幸せです」

「うう、初音先輩のためにもここはガマンぅ。でもちょっと期待しちゃってる自分がいますぅ」


 彩葉、初音、桜結美の三人。


 それに加えて琴葉、桃華の二人もアイドルデビューが決まっている。


 当然これは妖精さん空間の中での話しだ。彩葉はアイドル性はあるけど、割と庶民派な女の子だしな。


「さあいよいよ撮影開始だ。全員並んでダンスのシーンからいくとしようっ」


 当然単なるPV撮影で済む筈がない。


 男の欲望を一身に受けるエロスな空間で、俺達の欲望の宴が始まる。


 ◇◇◇


 時は更に経過して、新たな桜の季節が近づいてきた。

 俺は学園を卒業し、大学の進学が決まっている。受験勉強なんてやっていなかったが、前世の知識を活かしたので大学入試程度は軽いもんだ。


『亮二さんのおかげでこの世界が明るくなりましたねー。ところで亮二さん、一つお願いがあるんですがいいですか?』


「どうした?」


『実は向こうの世界で発売されたさくさくが大ヒットを記録いたしましてですね、即座に続編の製作が決定しています』


 妖精さんが言っていた『向こうの世界で面白い事になっている』という話。


 どうやら俺がこの世界の在り方を正したことで、本来あるべき姿に戻ったさくさくの世界がゲームとして発売され、爆発的大ヒットとなったという。


 それ加えて、俺が転生してからやってきたことがR18版としてリリースされ、そちらも売れに売れているらしい。


『そこで【花咲く季節と桜色の乙女2】のヒロイン達を新たなハーレム要員として選出しましょう』

「なんだそりゃ。どうやってやるんだそんなこと」


『隣町を新たなゲームの舞台として亮二さんが拡充するんです。世界の管理者である亮二さんが【そう決める】ことで、あらたな世界が創造されるわけですよ』


「なるほど。恋愛シミュレーションの続編が前作の隣町ってのはよくある設定だな」


『そうです。亮二さんが愛してやまないさくさくの世界を、今度は自分で創造するんです。ワクワクしませんか?』


「よーし、その提案に乗ってやろうじゃねぇか。俺が最高のゲームの歴史を作ってやる」


 愛するヒロイン達とのラブラブ生活。

 それに加えて、愛してやまなかったゲームの続編を自ら創造する。


 そんなワクワクすることなんて他にないじゃないか。


 季節は巡り、まもなくゲームのエンディングである一年後の桜の時期がやってくる。


 そのタイミングで新たな世界を創造し、新しい物語を紡いでいくのだ。


 桜舞い散る丘の上で、一本の桜の木がこの町を見守っている。


 世界を乱され、他の世界に助けを求めた桜の木の精霊は、今も俺の隣で微笑んでいる。


 さあ、これから楽しくなるぜ。


 俺の挑戦は、まだまだ終わらない。


◇◇◇








◇◇◇










◇◇◇


 ここはどこかの世界、どこかの国。

 町の中に建てられた雑居ビルに入ったゲームショップで、その日、新しいゲームの発売を知らせるプロモーション映像が公開された。


「おっ。あのブランドの新しいゲームか」

「完全純愛シミュレーションだってよ」

「【花咲く季節と桜色の乙女】かぁ、いかにも純愛って感じのタイトルだな」


「うわ、パッケージのヒロインめちゃカワじゃん。俺予約するわ」


「あれ、これって、コンシューマ版とR18版が同時発売だってよ」


「へえ。移植じゃなくて同時なのかよ。え、主人公が違うの?」


「全年齢版が完全純愛系で、エロゲ版がやりたい放題ドスケベシミュレーションだってよ」

「受けるッww 全然ジャンル違うじゃん」


 同名タイトルであるにも関わらず、まったく違うジャンルとして発売されたこのゲームは、全年齢版の甘々な純愛要素と相反するR18版の自由過ぎる作風でカルト的人気を博した。


 やがて全年齢版はテレビアニメとしても放送され、まったく同じキャラクターが違うゲームであられもない姿で好き放題されるという前代未聞のジャンルとして新たなブームを巻き起こすことになる。


 これが亮二の元いた世界で起こった確かな変化。


 それは壊された心を修復し、ヒロイン達と本当の幸せを掴んだ好摩楽人の魂が築いた世界がゲームという形で流れ込んできた結果である。


 そして言わずもがな、R18版がどんな内容なのかは……これを見ている皆さんが知って通りである。



 Fin


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