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第108話◇妖精さんはウブだった◇

 感動だ。まったくもって感動だ。


 憧れのヒロインの処女、いただきました!


 あれだけはっちゃけた性格だった妖精さんテンションはどこへやら。


 蘭華はウブな少女のようにピクリと肩を震わせ、おずおずと肩に手を回して唇を押し付けてくれた。


(やべぇ。ものが妖精さんだったとしても、この感動は言い知れないものがあるな)


「ふみゅぅ……亮二さん、なんか優しいですぅ」

「今まで頑張ってきたんだろ。わりかし振り回された感はあるが、それは後でお仕置きすればいい。今は甘やかす」


「ひぃん、なんか私の行く末が不穏ですよぉ」


「つべこべ言ってないでもっとやらせろ」


 何度も何度も口づけを交わし、俺達の甘い時間は過ぎていった。


 美砂の時の記憶を持っているが、体験としては味わっていない蘭華はキスの甘やかな感覚に酔いしれているらしい。


 ゲームCGでは絶対に見られないトロけ顔は俺だけが知っているかと思うと、感動は一層深い。


「んはぁ、亮二さん、これぇ、気持ち良いです……もっとほしい」


 あれだけ色々とはっちゃけ性癖をぶつけてきた割には奥ゆかしいというか、性に対する好奇心だけが前に出ている。


 耳年増って奴か。ものが精霊とか妖精じゃあ肉体で経験することなんてなかっただろうしな。


「これからいっぱい教えてやるぜ。人に散々特殊性癖実行させたんだから自分も体験しないとな」


 とんでもシチュエーションのスケベもいいが、俺はやはりスタンダードな奴が一番好きだ。


 しかしだ。妖精さんだって恐らくスケベに無頓着というわけでもあるまい。


 あれだけ色々なシチュエーションを提供する知識があるんだ。恐らく興味は尽きなかっただろう。


 はっちゃけた態度の裏に隠れた使命感があったので、自分じゃ興味が無いフリをしているだけだ。


 今回のことでそれが証明された。


 これから何度でもたっぷり体に仕込んでやる。


「なんだか不思議な感じだな。あれだけドスケベだなんだと騒ぎ立てていた変態性癖の妖精さんが、実は経験皆無な耳年増な上に、自分自身は奥手だなんてさ」


「あぅ……亮二さんのこと楽しませたくって……自分も楽しくなっちゃいました」


「なるほどな。じゃあこれから皆にやった分だけ自分も経験してみりゃいい。これからたっぷり仕込んでやるぜ」


「ふにぃ♡ ちょっと楽しみにしちゃってる自分がいますぅ」


 改めて考えると、俺はこの世界のトップアイドルに色々してしまったわけだ。


 前世から憧れ、何度この感触を夢想したことだろうか。


 正体が妖精さんだったことには驚きだったが、それもまた愛しい要素に思えてくる。


「ふえぇ、恥ずかしいですぅ……んんっ、妖精さんの時はエロいの眺めても平気だったのに」


「もしかして蘭華の体に戻ったから羞恥心みたいな感情が動き始めたのか」

「えへへ、そうみたいです。それと同時に凄く嬉しい感情や、興奮してる感覚も強くなっちゃうみたいですね」


「なんだよお前、そんな可愛いキャラだったのか」


「亮二さん、キスゥ、もっかいキスしてくださいぃ」

「しゃーないな。蘭華って甘えん坊キャラだっけ?」


 ゲーム本編の蘭華といえば、天真爛漫な性格で主人公を引っかき回していくトラブルメーカーなキャラクターだ。


 こんなにトロ顔を晒しながら猫なで声で甘えてくる描写など存在しない。


「らってぇ、亮二さんは、私が身を委ねられる最初の人なんですもの……」


「これで俺は妖精さんになったってわけか?」


「私の持ってる全部を差し上げます……。私の代わりに、この世界をいっぱい愛してあげてください」


「いいぜ。この世界に転生させてくれたお礼だ。お前にはなんだかんだ感謝しまくってるんだ。そのくらいの願いならいくらでも叶えてやるよ」


「えへへ、嬉しいです。あなたがこの世界の精霊になってくれればもう安心ですね」


 そうか。妖精さんパワーを受け継ぐってことは、俺が桜の木の精霊になるってことなのか。


 まあ今更そんな不可思議要素に躊躇する理由はない。


 せいぜい好き勝手させてもらうだけだ。


 なにはともあれ。


(全ヒロインコンプリートッ! まさしく感無量!)


 とうとうここまで来た。この世界に転生して最初に立てた最大目標を、俺はこの瞬間に達成したのだ。



 さて、あとは美砂を復活させるだけ。


 これには優奈を始めとした皆の力が不可欠だな。


 いよいよ最後の仕上げって奴だ。

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