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第五話

翌日、学園長に話をしてちょっとだけお金を貰った。

学園長かなり儲かってんだろうな。

呼び方が“つかさくぅーん”だったもん、間違いない。


ちょっと気持ち悪かったけど、お金貰えたからいいや。


それにしても、この学園には超能力者リミットレスは居ないのだろうか。

司と同じように後天的に超能力者リミットレスに目覚めるような人間もいるのだから、この学園に超能力者リミットレスが0人なわけないと思うんだが


「まぁいいか」

司は気を取り直して、キョウト観光に向かう。


神社や寺。

キョウトはそういう宗教的な物が多い。


もちろん若者が好きな百貨店や遊び場もある。


「今日はどうするかなぁ。一人で寺とか神社に行くのも寂しいから百貨店に行くか」

友達がいれば神社とか寺も楽しいだろうけど、友達は未だ0である。

まぁ、友達がいれば百貨店も何倍も楽しくなるのだが。


学校からそう遠くない場所にとんでもなく大きな百貨店がある。

大都会キョウトの百貨店は本当に凄い。

なんでも売ってる。

なんでも売っているからといって、乱雑に商品が置かれているわけでもなければ、店の配置がされているわけではない。

フロアによって客層をしっかりと分けているようだ。

若い女性向け・男性向け・マダム・ジェントルマン向け等、フロアによって置かれているものが違う。

なんならそのフロアにかなりオシャレな名前がついてる。


司は男性向けのフロアを徘徊する。

当たり前だが、値段が高い。


「ふっ、流石百貨店と言ったとこか」

無駄にカッコつけているが、この男とんでもない田舎者である。

おそらく学園からの頼みじゃなければタクシーも来てくれないくらいの田舎出身である。


一通り見て回ったので、次はジェントルマン向けフロアに足を運ぶ。

一目散に司が向かったのはのはジェントルマン向けの高いスーツコーナー。


「これが高級なスーツか・・・。どれ・・・。ブッ」

値札を見て、司は吹き出す。

店員が吹き出した司を睨みつける。

司はすぐさま頭を下げる。


「すげぇ値段だな。流石大都会キョウトだ。俺もいつかこんな高いスーツ着て仕事したいなぁ」


色々と物色してありとあらゆる高級なスーツを見て回ったが、その中でも司の目を引いたのが、紺色のスーツ。

紺色に金糸で装飾が施されており、司の好みにがっつり刺さっている。

いや、もうこの感覚は刺さるとかそんな生温い表現ではない。

百合カップルを見つけた時のあの高揚感と同じだ。


マネキンはそのスーツと中に同じ柄のベスト着用して、シャツは青色のストライプの入った白シャツで締めている。


「すげぇクールだ!でもオーダーメイドでしか受け付けてないのかぁ。値段は・・・。上下で125万円!?」

司は遠い場所を見つめる。


「卒業式にはこれを着て出たいなぁ」

最高にクールな自分を妄想する。


「まだ三年も先だけど」

数秒ほどで我に返り、涎を拭き取る。


「よし、かっこいい自分も想像できたし、飯って帰るか!」

ジェントルマン向けフロアから下に降りる階段で昨日学園でみかけた、アイカとマリナのペアを見つける。


「おっ!あれは昨日見た百合ップルじゃん!後ろから何話してるのか聞きながら帰ろ!」

ご飯は別に今じゃなくても食べれるが百合成分の補給は今じゃないと出来ないと、急遽後ろをついて帰ることにする。


どうやら二人も遊び終わって、学園に戻るようだ。

春休みの宿題や予習、復習はちゃんとやっているかとか、帰ったら何をするかを話しているようだ。

護身術の方が上手くいかないから教えて欲しいと後輩が先輩にお願いもしている。


司は手取り足取りアイカがマリナに教えているのを想像してニヤニヤする。

後ろを歩きながらまだ結核には効かないがいずれ効くようになる百合成分を補給する。


だが明らかに学園までの最短距離で帰宅しているのではなく、少し遠回りして帰っている。


「やばい、後ろついてるのバレたか・・・?」

そんな司の心配はスグに無くなる。


アイカとマリナはどうやら自然公園に寄りたかったようだ。


「あぁ、公園か。なるほどね。自然公園か、都会なのにこんな場所もあるんだな」

司も二人の後をついて行く。


こちらに気付いている様子も無く。

マリナは楽しそうにずっとアイカに話しかけている。


その様子を少し離れた場所から観察する。


ん?何故離れて居るのかって?

公園でもずっとついてまわってたら不自然だろ。


「くそぅ!でも何を話してるか聞きてぇ!」

司はため息を吐きながら、観察を続ける。


そして、司は気付く。

百合ップルが楽しそうに歩くその先に全身を漆黒のマントで覆った集団がいることに。


「あぁ、やっぱり俺以外にも百合ップルを見守る紳士ってのはいるんだな」

百合を見てるだけで心が洗われる。

美術館に置いてあるどんな作品よりも儚く美しい。


だが、あの不思議な装いの集団が何かやったのだろうかアイカとマリナは集団の隣を通ってから急に早足になり公園から出ていく。


「えっ?あいつらなんかやったのか?こういうのは陰ながら見守るのがルールだろうがよ」

司は黒ずくめの集団に怒りを覚える。


どうやら二人は足早に学園に戻っていったようだ。

司も学生証を門番に見せて、学園内に戻ろうとしたが学生証は学ランのポケットの中だ。


「・・・。あの・・・。」

学生証を今持っていないことを門番に言おうとしたが、門番は何も言わずに通してくれた。

どうやら制服を着ていたから助かったみたいだ。

これでもしも制服を着ていなかったらと考えたらゾッとする。

また学園長に頼ることになるところだった。


司は学園の私有地へ入り、噴水の広場のベンチにアイカとマリナが息を切らして座っているのを見つける。


「あいつらに何か言われたのかそれとも姿を見て逃げたのはわからんなぁ。んー、何か助けになってあげたいけど、あの百合ップルに認知されるのは違うしなぁ。今の俺に出来ることはなさそうだ」

百合ップルを横目に司は食堂に向かい、大好物のマヨオムライスを食べて、部屋に戻る。


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