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第三話

司は何とか学園まで辿り着いた。

財布が無くなって絶望していたが、学園はキョウト駅からかなり近い場所にあった。


この大都会キョウトで一番頑張ってるのは俺じゃないかと思えるほどに、コミュ力を発揮して人に声をかけたさ。


まぁでも普通に考えたら頭から血を流してるやつから話しかけられたら、逃げていくよな。

俺も逃げるもん。

誇張抜きに50人以上には声かけたけど優しく教えてくれたの一人だけだよ?

大都会キョウト恐ろしいぜ。


だが俺の災難はそれで終わりでは無かった。

学園を見つけたは良いが、いざ正門から入ろうとしたら警備員に止められた。

そこから武装した警備員みたいな人が集まってきて、もう大変。


「学園長に話しさせてくれ!!」って何回言っても不審者扱いだったわ。

まぁ、でも俺も頭から血を流してるやつが来たら止めるわな。

分かる。


なんやかんやで騒ぎを聞きつけて学園長が登場。

学園長の姿を見て溢れる出る俺の感情。


学園長はほんとただのおっさんだけど、俺おっさん見て涙が止まらなくなったんだよな・・・。

いやー、まさか高校生にもなって人に泣きつくなんてな。

学園長に泣きついてしまったよ。


本当に学園にたどり着くまで不運しかなかったから余計かも知れない。

財布掏られるわ、命狙われるわ、誰も話聞いてくれないわ・・・。

「ほんと俺キョウトに来てから不幸しかねぇ。町からでなければよかったか・・・?」


それもこれも百合成分を安定して補給するために仕方ないってわけよ。

百合はまだ結核には効かないが、そのうち効くようになる。


「はぁ・・・、ほんとキョウト初日濃すぎだろ」

だが司は明日からのことを考えて、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべる。


「明日からは安定して百合を補給できるはずだ。ワクワクがとまらねぇぜ!」

司は寮の部屋で叫び、高笑いをする。


寮は個室でそこそこの部屋に広さなので、多少騒いでも隣には迷惑が掛からない。

さすが、金持ち御用達の学校といった感じだ。


夜は興奮を抑えきれず、眠ることが出来なかった。


「はぁ、一睡も出来なかった。入学までには体調を整えないとな!」

今日は3月20日。

入学まで後十日もある。

余裕だろう。


「さて、今日は何するかな?」

財布の中身を確認しようとする。


「あっ、そうだ。財布スられたんだった。くそぅ、してぃぼーいになるための資金どうすんだよ!」

司は肩を落とす。

折角外に出る用意をしたのに、外に出ても何も出来ない。


「いや、こういう時こそ百合の補給だ!」

司は意気揚々と部屋の外に出て、学校内を探索し始める。

少し歩くと雰囲気のある噴水広場を見つける。

丁度いいベンチを見つけたので司はベンチに座り、周りを観察する。


「アイカお姉様!ここに居たんですね!」

少女が息を切らして、走ってくる。


「まぁ、マリナ。はしたないですよ?」

アイカと呼ばれた女性とはハンカチを取り出し、マリナの汗を拭く。


「あ、ありがとうございます」

マリナは頬を赤らめる。


「それで、何か有りましたか?」


「へ、部屋にいらっしゃらなかったので、探しに来てしまいました」


「今日は部活で朝早くから出ていくと事前に言っていたじゃ無いですか。ほんと、マリナは忘れん坊さんですね」

アイカはマリナに微笑みかける。


「そ、そうでした。私としたことがまた・・・」

マリナは肩を落とす。


「気を落とさないで大丈夫ですよ。私を心配してきてくださったのでしょ?私とても嬉しいです。お時間有りますか?一緒に紅茶でも飲みません?」


「は、はい!」

マリナは笑顔になり、アイカに抱き付く。


「こら、ダメですよ」

アイカはマリナの頭を軽く叩く。


「あっ、す、すいません」

マリナは肩を窄めてしまう。


「はぁ・・・」

マリナの様子を見てアイカはため息をつく。


「帰ったらいくらでもして良いので、今は我慢してくださいね」

アイカの言葉にマリナはとびきりの笑顔で頷き、手を繋いで喫茶店の中へと消えていった。


司はその様子をずっと観察していた。


「と、尊い!あぁ、最高だ!良い!素晴らしい!ビューティフォー!エクセレント!」

ベンチから急に立ち上がり叫び始めたので周りに居た人達は驚き、蜘蛛の子を散らすようにその場から離れていく。


「はぁ、はぁ、聖ジャンヌ白百合学園・・・。なんて素晴らしい場所なんだ!」

第三者から見れば、明らかに不審者である。

いつ通報されてもおかしくないが、蜘蛛の子を散らすように皆居なくなったので司を通報するものは誰もいない。


「さて、満喫したし飯でも食いに行くかぁ!学園の中はタダで飯が食えるし、ほんと助かるな!」

噴水広場から食堂に向かう。


聖ジャンヌ白百合学園は学園内で全て完結してしまう程、何でも揃っている。


食事処も多数あり、その他に喫茶店はもちろん百貨店、授業で使用する為に武器屋も完備してる。

学園内の食堂は無料だが企業が運営している食事処にいくと、金がかかる。

当たり前だ。


昨日入寮した際に学園内の地図はしっかりと把握したので、どこに何があるか手に取るように分かる。

広い学園内で迷子になることなく、食堂に到着する。


「さて、何を食べようかなぁ。オムライスあるかな?」

食堂は食事をオーダーする場所、出来上がった食事を受け取る場所で分かれている。


メニューは分かりやすい様にオーダーする場所の頭上に書いてあった。


「おっ!オムライスあんじゃん!おばちゃん、オムライスちょうだい!チキンライスで上にはマヨネーズかけてよ!」


「あいよー!あんたオムライスにマヨネーズなんて変わったもの好きなんだねぇ。普通ケチャップじゃないのかい?」


司は人差し指を立てて、メトロノームの様に振る。

「ちっちっちっ、わかってないなぁ。通はマヨネーズなんだぜ」


「そうなのかい?分かった。出来たら呼ぶからあっちで待ってな!」


「よろしく!」

食事を受け取る方へ移動する。


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