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第二話

「聖ジャンヌ白百合学園」があるキョウトには汽車が通っているので、汽車の始発駅まではタクシーを利用する。

それから汽車に乗りキョウトを目指す。


荷物はかなり減らしてきた。

キョウトに着いたら新しく揃えようと思う。

部屋着と外着は念のため一着ずつ持ってきた。


だが結局は首都のキョウトでおしゃれなものを買ったほうがいいだろう。

幸いお金に余裕はある。

学生生活を送る上で必要経費だろうと割り切る。


汽車内は思っていたよりもすることも出来ることも無く、窓の外をボーッ眺めたりしていたら、睡魔に襲われていつの間にか眠っていた。


「次はキョウトォ、キョウトです。終点となりますので、皆様お忘れ物無いように降車下さい」

到着の車内アナウンスで俺は目を覚ます。

汽車は何事もなくキョウトに到着したようだ。


司は汽車の出口から勢いよく飛び出す。


「はーはっは!ついに来たぜキョウト!!」

元気よく司が叫ぶと司の周りから人が離れていく。


「都会のみんな冷たいぜ!さぁ学園に向かうか!」

財布にどれだけお金が残っているかを確認しよう右ポケットに手を入れる。


「あれ?ない、ない、ない、ない」

上着、ズボン、マント、カバンどこを見ても財布がない。

司は膝から崩れ落ちる。


「財布がねぇぇぇぇぇ」

司は空を仰ぎ叫ぶ。


もちろん見逃しているなんてことはない。

司が汽車内で睡魔に負けて睡眠を始めた時、近くの客に盗まれたのだ。


「都会クソかよ!!やべぇ、ここからどうやって学園まで行けばいいんだぁぁぁ!」

司は地面に頭をバンバンとたたきつける。


「そこの貴方。何かお困りのようですが、どうしましたの?」

司が声がする方へ視線を向けると、これぞ“Theお嬢様”という感じの桃色縦ロールの女子が心配そうに司を見つめる。

見つめるその瞳は淡くて綺麗な桃色で、非常に愛らしさを感じる。


「さ、財布を盗まれたんだ!これじゃあ学園にいけねぇよ・・・」

頭からタラタラと血を流しながら司は答える。


「あら?どこかの学生ですの?私も今年から学校に行きますのよ」

桃色縦ロールは嬉しそうに話す。

血を頭から垂らしている司を前にしても、ここまで慌てず雑談までかます女生徒そうそういないだろう。


「えっ?マジ?どこ高よ?」

司が立ち上がり、Theお嬢様の近くによる。


「ど、どこ高?」

Theお嬢様は言葉の意味が分からず聞き返す。


「ふっ、これ位分からないとこの大都会キョウトじゃ、やっていけないぜ」

司は立てた人差し指を横に振りながら話を続ける。

「どこの高校行くんだってことだ」


「まぁ!そういうことですのね!さすがキョウト。進んでますわ!ふふふ、聞いて驚かないでくださいまし。私、今年より聖ジャンヌ白百合学園に入学しますの!」


「えっ?マジ?一緒じゃん」


「ほーほっほほ、すごすぎて言葉も出な・・・。えっ?あなたも聖ジャンヌ白百合学園に?嘘をつくのはお辞めになったほうがよろしいですわ。嘘をつくことであなたの品位が下がりますわよ」


「いや、ほんとだって。ほら!」

司は何を入れれるのかわからない薄っぺらいカバンから入学許可書や学園案内の手紙を見せる。


「えっ!?嘘ですわよね!?なんであなたのような平民が・・・」


「おいおい、人を悪く言うことで自分の品位を下げてるぜ」


「そ、そうですわね。人は見かけによりませんもの。そんな格好ですがきっと名家の御曹司なのでしょ?」


「いや、くそ田舎の出身だが?」


「よ、余計に意味が分かりませんのよ!なぜそんな平民が私と同じ学園に!?」


「お嬢様!離れてください!」

司に銃を向けながら、桃色縦ロールに声をかける男性が二人現れる。


「おいおい、それ鉄砲ってやつだろ。知ってるぜ。鉛の弾を打ち出す武器だろ。けど初対面のやつにそれを向けるなんてあまりに物騒すぎねぇか?」

司は両手をあげて、抵抗の意思が無いことを示す。


「あなた達、おやめになって!」

桃色縦ロールは止めようとするが、二人組の男性は銃口を司に向けたまま動かない。


「そうだ!そうだ!暴力反対!」

司が片手のをグーにして、天に突き出し抗議すると男性の一人が発砲し、司の顔を弾丸が掠る。


銃声を聞いた周りの人が逃げ惑う。


「おいおい、こんなところで発砲って正気か?お前ら」

司の頬弾丸が掠り血が滴る。

血を拭いながら発砲した男性を睨みつける。


「お嬢様の命を守るのが俺たちの仕事だ。俺たちの判断で危険分子は排除してもよいと許可をもらっている」


「その判断で罪のない人間がケガを負ったとしてもか?」

司は睨みつけながら拳を握る。


「俺たちの仕事はお嬢様の命を守ることだ。誰が死のうが関係ない」

ニヤリと男たちは笑う。


「そうか、キョウトにはお前らみたいなゴミもいるんだな」

司が地面に置いていた鞄を取り、この場を立ち去ろうとする。


「いけません!」

桃色縦ロールの声が聞こえる。


ダンッダンッダンッと乾いた音が鳴り響く。


「お前みたいな危険分子は排除しないとならないなぁ」

男性はニタニタと笑いながら話す。


だが、司はいつまで経っても倒れない。


「あっ?外したか?」


司が男性二人の方を見る。

「俺にだって我慢の限界はあるぞ」


男性がさらにもう一発弾丸を司に向かって打ち込む。


だが銃弾が司の顔に到達する前に止まり、その場で落ちる。


「お前らが最底辺の人間で助かる。俺も遠慮しなくていいってもんだ」

司がそういうと道に落ちていた石や銃弾が浮き始める。


「おい、なんだよそれ!」

男性が慌て始める。


「まさかお前、超能力者リミットレス!?」

もう一人の男性が叫んだ時にはすでに遅かった。


発射ファイア

司が手を銃の形にして、銃を撃つ真似をする。


浮いていたものが一斉に男性たち向かって放たれる。


石ころは男性達の顔面向かって飛んでいく。

四発あった弾丸は全て男たちの手のひらを貫く。


「あがぁ!」

男性達は痛みで拳銃を落とす。

両手を貫かれたので、拳銃を持つことも出来ない。


「そこのあんた」

司は桃色縦ロールのお嬢様を呼ぶ。

お嬢様はぺたりと地面に座り込んで、司をボーッと見つめていた。


「な、なんですの!」

呼ばれたことに気付きハッとする。


「あんたの家の警備兵だろ?二人とも殺さないように手加減したから病院連れていくか医者呼んでやんな。じゃあ俺は行くわ」


「お、お待ちなさい!」

桃色縦ロールは司を引き留めようとするが、司は振り向きもせずヒラヒラと手を振って、その場去っていく。

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