話は明治時代初期まで遡る。
政府が秘密裏に計画していたとある研究が成就した。
富国強兵の一環として発足されたリミットレス計画。
超能力者を生み出そうとする無茶苦茶な計画だ。
歴史の授業で習ったのだが、この日本皇国は戦争時に兵器開発では無く超能力開発に注力した。
不可能だと思われていたその計画はある日を境に一変する。
検体の一人が超能力に覚醒した。
そこから連鎖するように一人、また一人と超能力に覚醒していった。
覚醒した超能力には色々な種類がある。
上げればキリが無い、人によって目覚める能力が違うのだ。
超能力は遺伝する。
時代は流れ大正25年。
俺、
毎月かなりの金額が支給されるのだ。
四人家族が慎ましく暮らせば一月くらい余裕で生活ほどの金額だ。
だが両親は「司が全部使えばいい」と言ってくれている。
あくまで俺の稼ぎという認識でいてくれているのだ。
日本皇国に命を賭けていると言っても過言では無いからかもしれない。
兵器があまり発展していない日本皇国では
戦時中の
超能力に目覚めていなかった時の俺はありえないと思っていたが、
危機と言っても戦争だけではない。
日本皇国は他の国に比べると地震が多い。
それに伴って津波等も発生することもあり、救助要員として招集呼ばれることもあるようだ。
だが、俺にとって金は割とどうでもいい。
・・・いや、どうでもいいは言いすぎたが、それよりも俺には『好きな学校に通うことが出来る権利』この権利の方がよっぽど嬉しい。
俺のような一般市民は金銭的に県立の高校に行くのが精一杯だったが、これのおかげで俺が行きたかった高校に入学することが出来た。
『聖ジャンヌ白百合学園』
全寮制の超お嬢様学校で国の重鎮や金持ちばかりが集まる学校だったが、時代だろうか段々と人が来なくなってしまい、今年から共学に変わった学校だ。
何故俺が『聖ジャンヌ白百合学園』に行きたかったか、その理由はたった一つだ。
この学校には古き良き風習が残っているらしい。
『シスター制度』
下級生と上級生がお互いの合意で契りを結び、上級生が下級生に対して、勉強や戦闘術などの指導をする。
そして、下級生はシスター契約を結んだ上級生をお姉様と呼ぶことが許されるのだ。
また、学園内では食事の時はもちろん寝る時は同じ部屋、この制度は本当の姉妹より硬い絆を生み出す最高の制度なのだ!
この制度を聞いた時、俺は全身に電流が走ったような感覚がした。
下級生が上級生をお姉様と呼ぶ?勉学を指導する?手取り足取り戦闘術を教える?
最高じゃないか!
俺は俗にいう百合が大好きだ。
百合は美しい。
百合に挟まれたがる男はみんな地獄に堕ちろ!
おっと、失礼。
過激な発言をしてしまった。
俺は壁になって間近で百合を眺めたい派だ。
俺に百合を供給してくれ!
それさえあれば俺は何処でも戦うし、誰でも助ける!
命を賭けるのなんて容易いことだ。
ということで、俺はこの制度がまだ残っている『聖ジャンヌ白百合学園』に入学したいと思った。
成績?あぁ、入学したいと思った時は全く歯が立たなかった。
だから必死に勉強した。
それはもうとにかく勉強した。
だが、それだけではダメだったんだ。
元超お嬢様学園ということだけあって、学費が公立とは比べものにならなかったのだ。
中学生だった俺にお金の問題はどう足掻いても無理だ。
俺は諦めるしかないと思っていたが、中学三年生の夏に突然
そこからはとんとん拍子で『聖ジャンヌ白百合学園』への入学が決まった。
学園長が直々に挨拶に来て、一般市民だった俺が学園長に接待された。
普通は考えられないだろう。
理由は接待されている時に学園長は嬉しそうに話してくれた。
国から補助金が貰えるだけでなく、
学園長はウハウハ、俺もウハウハ。
俺は『聖ジャンヌ白百合学園』へ入学書類などを提出して、その時を待った。
そして時間は進み迎えた3月19日。
入寮する為に学校に向かう日だ。
俺は何を入れるのかわからない位の薄っぺらい黒い革のカバンと少し大きめのカバンを手に持ち、玄関を出ようとすると母さんに呼び止められる。
「司、あなたが
「ありがとう、母さん!俺、頑張ってくるよ!」
「それと、もしも戦いに行くことになっても絶対に死なないでね。これは母さんとの約束だからね」
「おう!俺にはやらなきゃいけない事があるから、絶対死なないよ」
「はいはい、どうせ百合の為とか言うんだろ」
母さんは笑いながらな話す。
「そうだよ、俺は百合を守る者になるからな。それじゃあ!」
母さんに背を向け、右手を挙げて学校の寮に向かう。