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流星のリビオン
流星のリビオン
髙橋彼方
SF宇宙
2025年01月18日
公開日
3.9万字
連載中
 今から100年後、地球は異常気象による食糧危機に直面していた。
地は枯れ、北極の氷が完全に溶けたことによる海水上昇が起きて、地表の六割は海に飲まれてしまった。その原因はオゾン層崩壊による紫外線だった。
一旦、人類は生き抜くために地下へ避難した。
その後、人類は二分化した。
豊かさを求めて宇宙へ旅立った者たちと故郷を捨てられない、もしくは金銭的に地球を離れられない者たちに。
地球に残った者たちは生き抜くため、地下に都市を作り、移り住んだ。しかし、人々は日光が当たらない地下の生活によるストレスと元々裕福ではない者が多かったため、限られた物資の取り合いによる治安の悪化が起こった。
これを何とかしようと地球連邦国は軍を作り、治安の悪化を抑制した。
そして人類の半数が地球から出ていくと月日が流れるに連れて徐々に地球は元の姿を取り戻した。
宇宙に旅立ったものたちはバイオテクノロジーで豊かさを得た。
そして、外へ行った権力者たちは地球に戻り、自分たちが再び地球を統治しようと考えたがそれは都合が良すぎると地球の民たちは拒否した。
これが全ての始まりだった……。
銀河連邦国は地球を手に入れる計画を立てた。
地球を去った者たちが新たに結成した軍事国家、銀河連邦軍と地球防衛軍の激しい戦争が始まった。
すると、銀河連邦軍の化学兵器の影響で地球の異常気象が再発してしまった。
銀河連邦軍は今の状態の地球には移り住むのが困難と考え、一旦は気象が整うまで地球を離れた。地球防衛軍は異常気象から逃れるため再び地下に戻り、両者の冷戦が始まった。
銀河連邦軍と地球防衛軍はこの機に兵器の開発を進めた。
再び起こる地球を賭けた戦いの為に……。

『デッド・ワイズ・サーキット』1

◆プロローグ


 今から100年後、地球は異常気象による食糧危機に直面していた。

 地は枯れ、北極の氷が完全に溶けたことによる海水上昇が起きて、地表の六割は海に飲まれてしまった。その原因はオゾン層崩壊による紫外線だった。

 一旦、人類は生き抜くために地下へ避難した。

 その後、人類は二分化した。

 豊かさを求めて宇宙へ旅立った者たちと故郷を捨てられない、もしくは金銭的に地球を離れられない者たちに。


 地球に残った者たちは生き抜くため、地下に都市を作り、移り住んだ。しかし、人々は日光が当たらない地下の生活によるストレスと元々裕福ではない者が多かったため、限られた物資の取り合いによる治安の悪化が起こった。

 これを何とかしようと地球連邦国は軍を作り、治安の悪化を抑制した。

 そして人類の半数が地球から出ていくと月日が流れるに連れて徐々に地球は元の姿を取り戻した。


 宇宙に旅立ったものたちはバイオテクノロジーで豊かさを得た。

 そして、外へ行った権力者たちは地球に戻り、自分たちが再び地球を統治しようと考えたがそれは都合が良すぎると地球の民たちは拒否した。

 これが全ての始まりだった……。


 銀河連邦国は地球を手に入れる計画を立てた。

 地球を去った者たちが新たに結成した軍事国家、銀河連邦軍と地球防衛軍の激しい戦争が始まった。

 すると、銀河連邦軍の化学兵器の影響で地球の異常気象が再発してしまった。

 銀河連邦軍は今の状態の地球には移り住むのが困難と考え、一旦は気象が整うまで地球を離れた。地球防衛軍は異常気象から逃れるため再び地下に戻り、両者の冷戦が始まった。


 銀河連邦軍と地球防衛軍はこの機に兵器の開発を進めた。

 再び起こる地球を賭けた戦いの為に……。



◆第一章「デッド・ワイズ・サーキット」


 薄暗いコンクリートで出来た棚に工具や部品などが並ぶ倉庫。中央を蛍光灯の光が照らしている。そこには茶色の作業着を着たリュカとビニールシートに掛かった巨大な機器がある。

 リュカは不安で押し潰されそうになっていた。大きく息を吐くとビニールシートに手を掛ける。

——バサッ!

 リュカはビニールを勢いよく退けると、そこから銅色の中央に防弾ガラス製の窓が付いた楕円形だえんけいの胴体、両手はガトリング砲が装備された三本指のアーム、四機構のジェット噴射器が付いた両足を持つ戦闘兵器リビオンが現れる。

 機体には所々錆や傷があり、鉄板で補強されてぎのようになっている。


 本当に勝てるのか……。


 リュカは憂いのある表情でじっとリビオンを見つめる。

 リビオンに近寄るとズボンのポケットから片手に収まる程のリモコンを取り出すと赤いボタンを押す。

——ウィーンッ!

 音を立てながらゆっくりと窓が開き、リュカはリビオンのアームをよじ登りながら乗車する。コックピットに座るとドックタグがぶら下がった操縦桿そうじゅうかんを握り、リュカはゆっくりと目を瞑った。


「兄貴……」




[六年前]




 幼いリュカは母に手を引かれながら息が白くなる程寒い夜の廃れた街をひたすら走る。周囲には同じく逃げようとしている難民でごった返していた。


「どけぇ!」

「たすけて!」

「畜生!」


 街は悲鳴や怒号が飛び交う町は正しく混沌と化している。

 リュカが上空を見上げると、そこには戦場と化した空が広がっていた。銀河連邦軍と地球防衛軍の飛行戦艦隊がレーザー砲の激しい戦闘を繰り広げている。撃ち落とされた機体の破片があちらこちらに飛び散り、落ちた場所では火災が発生する。

 そして、戦艦から互いのリビオンが出撃する。

 リュカの視線には、その中でたった一機の白銀に輝くリビオンを見つめる。


「お兄ちゃん!」


 白銀のリビオンは見方を追い抜き、敵戦艦の方へ突っ込んでいく。

 機体の中で戦闘機ヘルメット姿のリュウジがアーム型の操縦桿を操作し、一斉に飛んでくるレーザー砲の攻撃を華麗に避けて進む。


「こちらRE-18。このまま敵艦への攻撃を開始する」


 攻撃を避けながら近づいて来るリュウジのリビオンに対して、銀河連邦軍のリビオン隊が立ち塞がる。

 そして、銀河連邦軍艦隊の前に一機、漆黒のリビオンがいる。

 機内には胸に六つのバッジが付いており、黒い戦闘機ヘルメットの隊長が無線で指揮を取る。


『今日こそ流星を撃ち落とせ!奴へ一斉射撃だ!』


——ダダダダダダダダダダァ!

 リビオン隊のアームに備え付けられたレーザーガンによる紫色の光線が一斉にリュウジを襲う。

 すると、天高く舞い上がり、リュウジは機体を回転させながら避けていく。

——ピピピピ……。

 黒いリビオンのホログラム状に映る画面にはリュウジのリビオンがロックオンされている。


『ミサイル発射!』


——ブシュゥゥゥゥ!

 号令と同時に追尾ミサイルがリビオン隊の腹部から発射され、リュウジのリビオンを追いかけていく。


『DANGER』


 警告の文字がホログラム状で画面に表示され、リビオン内にアラームが鳴り響く。リュウジは冷静に操縦桿の赤いボタンに親指を乗せる。


「フレア発射!」


 リビオン後部から発射されたフレアは左右に分かれるように飛んでいき、ミサイルが逸れると次々に誤爆していく。

 アラームが止み、急降下するリュウジのリビオン。画面には敵リビオン隊たちが表示されている。


「次はこっちの番だ」


 リュウジは操縦桿のトリガーに指を掛ける。

——ババババババババァ!

 レーザーガンの蒼い光線が次々とリビオン隊たちを貫いていく。


『ちくしょぉぉぉぉ!』

『たすけてぇ!』


 無線から聞こえる断末魔と共に爆発するリビオン隊の光景に隊長は歯を食いしばって睨みつける。


「流星……」


 リュウジは漆黒のリビオンに標準を合わせると画面にロックオンと表示される。

 トリガーを弾きレーザーガンで攻撃を始める。

 すると、漆黒のリビオンはを描きながら蒼い光線を避けながら逃げるように距離を取る。


「逃がすか!」


——ダダダダダダダダダダァ!

 漆黒のリビオンもレーザーガンで攻撃するがリュウジは操縦桿を巧みに操り、左右に回転しながら避けながら距離を詰めていく。

——ババババババババァ!

 リュウジが発射したレーザーガンは、逃げる漆黒のリビオンの右肩と背中のジェットパックに命中する。


「畜生! 一、二番をやられたか!」


 漆黒のリビオンは足に付いたジェットパックのみで、不安定な蛇行状態になる。

 リュウジは冷静にふらふらと逃げ跳ぶ隊長のリビオンに標準を合わせる。


「終わりだ」


 隊長が乗るリビオン内にアラームが鳴り響く。


 やられる!


 脳内が死の絶望で満ちた時、隊長は暴挙に出た。

 隊長は地上の逃げ惑う市民に標準を合わせる。

 リュウジは不審な動きを察知し、隊長のリビオンが見る方向を確認する。


「まさか!」


 リュウジの目には必死で逃げる難民たちの中でメグとリュカの姿が写る。


「ならば、一人でも多く地球防衛軍側の奴らを道連れにしてやる!」


——ガチャン……。

 発射態勢に入った漆黒のリビオンの腹から灰色のミサイルが顔を見せる。


 あれはBK―9……。


 それは熱体制加工がされた旧型のミサイルで、最新のリビオンに備えられたレーザーガンでは撃墜することは不可能だった。

 咄嗟にリュウジは操縦桿のハッチを開いてブースター起動させる。


「やめろぉぉぉぉぉ!」


 不敵な笑みを浮かべ隊長はミサイルボタンを押す。

——ブシュゥゥゥゥア!

 発射されたミサイル目掛けてリュウジは突撃する。


 母ちゃん。リュカ……。どうかご無事で……。


——ドガァァァァァァァァァン!


「いやぁぁぁぁぁぁあ!」


 リュカは空を見上げながら泣き叫ぶ。

 火を纏う兄のリビオンは街はずれに落下すると爆発する。

 その場に崩れる我が娘に涙を堪えてメグは無理やり立ち上がらせる。


「立ちなさい!」

「でもお兄ちゃんが……」


——パシンッ!

 俯くリュカに平手打ちをする。


「アンタまで、ここで死ぬつもり?しっかりしなさい!」


 メグはリュカの手を引き走り始める。

 メグの頭の中は一瞬で我が子を失った悲しみと、ここで止まってはもう一人の我が子まで失ってしまうという焦りでぐちゃぐちゃだった。

 リュカは走りながら涙を拭く。それは、メグの守ろうと必死な気持ちが伝わったからだった。


 漆黒のリビオンの中では緊急無線が入り、応答する隊長。


『おい! どういうつもりだ! 一般人を狙った攻撃は条約で禁止押されている!』

「でも、ヤツ……流星を葬りました。これで敵軍の戦況は傾くかと」

『チッ……詳しい話は後だ。マザーベースに帰還しろ』

「分かりました」


 無線を切ると隊長は操縦桿を操作し、上空に居る母艦に向かって飛んでいく。



 メグとリュカは蛍光灯で照らされた薄暗い地下通路に入り、生き抜くために必死な難民たちと共に逃げている。

——ゴゴゴゴゴゴ……。

 地下通路は音を立てて大きく揺れる。難民たちはあまりの揺れの強さに立ち止まる。


 此処から早く逃げないと、長く持ちそうもないわ……。


 メグは険しい表情を浮かべる。


「あと少しで非常時エレベーターに着くわ。そしたら貨物列車で移動する」


 メグは振り向き、不安に押し潰されそうなリュカの顔を見る。


「絶対、ここから生きて出よう!」


 それはメグが今出来る限り、リュカに元気付けるための言葉だった。

 リュカは思いに応えるように頷く。

——プー! プー! プー!

 天井につけられたスピーカーから緊急のブザー音が流れ、皆がスピーカーに注目する。


『こちら貨物列車運転手、ワイルダーです! 外の戦闘が激化したことにより、十分後に列車は出発します! 皆さん急いで!』


 難民たちは放送を聞き、一斉に走り出す。


「どけぇ!」

「邪魔だぁ!」


 放送で焦った難民たちは狭い道でごった返し、リュカとメグはもみくちゃにされる。


「きゃあ!」


 リュカの悲鳴が聴こえ、メグは振り向くと、足を押さえて倒れている。


「リュカ!?」


 メグは走る難民たちに体当たりされながら、娘を助けるために逆走する。

 すると、リュカの足首が赤黒く腫れていた。押し倒された表紙に足首を踏まれたのだ。


 このままでは踏まれてしまう!


 メグは咄嗟にリュカを抱き上げて、生き抜くため走り出す。

 リュカを抱き抱えたまま何とかエレベーターが見えるところまで行くと、そこは長蛇の列が出来ていた。

——ゴゴゴゴゴゴ……。

 建物全体に音を立てて揺れる嫌な音が響く。

 メグは列に並ぶと天井を見上げる。すると、天井から砂煙が落ちてくる。


 ここも、いつまで持つか……。


 不安気にメグは列の先にあるエレベーターをじっと見つめる。

 リュカはメグの顔をじっと見つめた。

 列は徐々に進むが、それと共に建物の揺れも激しくなっていく。

 そして、エレベーターに無事乗り、ドアが閉まったその時だった。

——ドガァァァァァァ!

 なんと戦艦が墜落し、地下施設に落下したのだ。

 エレベーターは縦に大きく揺れ、皆が体勢を崩す中、メグは窓を見る。

 すると、建物が崩壊して並んでいた難民が瓦礫の下敷きになっている。更に墜落した戦艦からは出火しており、燃料タンクからオイルも漏れていた。

 メグは咄嗟に外の光景を見せないためにメグの目を手で覆う。

——ギギギィ……。

 エレベーターは金属の擦れる嫌な音を立てながら地下改札に向かって降りていく。



 地下改札に着くと二線あるリニア列車のうち片方に天井の瓦礫が落ちて下敷きになっていた。列車の窓からは下敷きになった人の腕が出ている。

 メグはあまりの悲惨な状況に思わず口を覆う。

 辺りにいる駅員たちは改札に辿り着いた難民たちの列を誘導するので手一杯だった。

 駅員に先導された難民たちは次々に列車最後尾にある大きなハッチから搭乗していく。


「皆さん! 前の人を押さないように! 慌てずに乗車してください!」


 メグは急いで列車までの列に入る。

——ゴゴゴゴゴゴ……。

 改札全体が音を立てて揺れると同時に天井から瓦礫が落ち始める。


「ここもいつまで持つか分からんぞ!」


 一人の男が列を外れ、ハッチに向かって割り込みをした途端に先程まで並んでいた難民たちが列を崩して列車に無理やり乗車を始める。


「危険です! 列に戻ってください!」


 駅員は何とか列を戻そうと崩れた所に割り込むが、生き抜くために我を忘れて必死になる難民たちに弾かれてしまう。不安で極限状態の人間に列を守るなど無理があったのだ。

 メグも抱き抱えたリュカを守るため、列を無視する難民の間を潜りながら前に進んでいく。


「皆さん! 押さないで!」


 揺れは次第に強くなる中、メグは子供を守るため一心不乱にハッチに向かって突き進む。

 そして、ハッチまで僅か三メートル程の時だった……。

——ボッガァァァァァァァァンッ!

 地響きを起こす爆発音と共に天井から墜落戦艦が炎をまとい落ちてくる。


 もう助からない……。でも、この子だけでは!


 メグは咄嗟にメグを両手で高く持ち上げると、貨物線ハッチに向かって投げ込んだ。


 お母さん……。


 リュカの目には宙を飛ぶ中で母が涙を流しながら微笑む姿が映る。


 生き抜いて……。


 リュカがハッチの側に居た男をクッションにして倒れ込むように無事列車に乗り込んだのを目に焼き付けるように見つめる。

——ガガガガガガガガァッ!

 天井と墜落戦艦が落ちてリュカの目の前は一瞬で火の海になる。


「いやぁぁぁぁぁぁぁあ!」


 リュカの悲痛な悲鳴と共にハッチが閉まり、列車は発車する。


「このガキ! 早く退け!」


 薄暗い車内で男は自分に覆い被さるリュカを払いのけるように退けると列車の奥へ移動する。

 リュカは閉まったハッチの前で倒れ込んだまま只々啜り泣いた。



To Be Continued…

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