目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
夫婦漫画は新刊です!
夫婦漫画は新刊です!
ROI_call
恋愛現代恋愛
2025年01月18日
公開日
3,734字
連載中
薄暗い部屋に青白く光る一台のパソコン。その正面にはヘッドフォンを付けてキーボードを叩いている男がいる。それが俺【天野 司】(アマノ ツカサ)である。

俺は大ヒットとまではいかないがそこそこヒット作を持っている小説家だ。今は以前まで連載していたバトル小説の連載が終わり新たなジャンルに挑戦しているところなのだが絶賛迷走中である。

ふぅっとヘッドフォンを外しゆっくりと息を吐く。俺は執筆中はこうやってジャンルごとにイメージにあったBGMを聴きながら書くのだがこれがなかなかに集中力を使うのだ。

ブルーライトを浴び続けた目を休めるため目を閉じて呼吸する。するとコンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえた。

「大丈夫だよ」

俺がそう言うとその扉はガチャリと開く。

そこには俺の嫁こと大ヒット漫画家である【天野 志那】(アマノ シナ)がお盆に乗せた夜食を届けに来てくれていたのだった。

夫婦漫画はプロローグ

部屋の扉を開けて部屋に入ってきたのは俺の嫁で大ヒット漫画家である天野 志那(アマノ シナ)である。その両手にはお盆が握られておりその上には美味しそうなおにぎりが2つ置かれていた。




「夜食作ったから…よかったら食べてください」




既に時計の長針は1時を回っていた。




「あぁ。ありがとう」




渡されたおにぎりを頬張っていると志那は嬉しそうな笑みを浮かべている。その笑顔に少しばかりにやけながら一つ目を飲み込むと志那が聞いてきた。




「進捗はどうですか?」




「問題なし…と言いたいところだけど迷走中で…」




そこまで言ったところでふと気になった事を聞いてみた。




「そう言えば志那の方の締め切りは大丈夫なのか?」




すると当然ですと言わんばかりに胸を張りドヤ顔を浮かべる。だがその顔に若干の曇りがある事を俺は見逃さなかった。




「何か困ってることでもあるのか?」




すると何故かボフンと赤くした顔を持っていたお盆で隠した。




「?」




しばらく疑問符を浮かべているとゆっくりとお盆が下がっていく。




「実は…また協力してほしいことが…」




そう言ってスマホを取り出す志那。なるほどなと思い俺はリモコンを操作し部屋の電気をつけた。




「次はどんなシーン?」




俺がそう言って立ち上がったその刹那、志那が顔を近づけてきてごくあっさりと唇が重ねられる。




「!?」




唐突なことで硬直しているとゆっくりと離れる志那。その手にはスマホが握られていた。




「こういうシーン…なんです…」




再びお盆で顔を隠す志那の声は照れていると言うより申し訳なさそうな声だった。




「そうか…納得した」




そう言って俺は志那のお盆をひょいと取り上げ、肩を跳ねさせあわあわしている嫁の唇を俺は奪う。




「んっ…!?」




俺たちはまだ結婚して間もないのでキスの回数もそこまで多くない。さっきの嫁は自分が描きたいキャラクターになりきっていたのだ。それが嫁の描き方なのは知っているので特に言うこともない。だがこうやって小さく喉を鳴らしている嫁のほうがやはり可愛い。




さっきよりも長い口付けを終えた俺はそっと志那を解放した。




「司くんは意地悪ですよ…」




俺の胸に顔を埋めながらそう講義する嫁の頭を俺は優しく撫でる。




「志那が書く漫画を楽しみにしておくよ」




小さく首を縦に振る嫁は急足で部屋を出て行つた。




「さて…俺も頑張るか!」




俺は改めて椅子に座り直し残っているもう一つのおにぎりを食べたのであった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?