目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
地獄の始まり

 ひよばあと離れ離れになり、情緒不安定になったことでいろいろ見えてきたものがありました。

 自分が目をそらし続けてきたもの、それは家族に愛されていないという事実でした。

 小学校ではいじめにあい、家では姉との比較に苦しみ、だんだんと私は自暴自棄になっていきました。

 中学生に上がって、私は声が出なくなりました。出そうとしても声がかすれて上手く声がでません。

 鬱っぽくなったせいでしょうか? 頭に何もはいらなくなって必死に勉強しても何も理解できなくなっていました。

 声も出なければ、勉強もできない、母の暴力は激化して、勉強もついていけなければ、友達にも見限られ、私は一人になりました。

 塾に行かされるようになりましたが、塾では汚物扱いされ、家でも汚い、汚いと、お風呂に入ることすら禁止され、深夜の公園で頭を洗う日々でした。

 それは三か月続き、無理やりお風呂に入ろとしました。

 素っ裸のまま腕をつかまれ、外に追い出されました。いくら夜とはいえ、思春期の女の子を裸で追い出され、必死に身をかがめて体を隠しました。

 家の中では母と姉の会話が聞こえます。

「近所の人に虐待だと思われるから、早く中に入れなさい」

 正直、何を今さらと思いました。

 逆に虐待だと思われなければ、母は助けてくれなかったのかとか、目の前のすべてが腐って見えていました。

 それからでした。姉のサンドバッグになっていったのは。家の中でなら何をしてもいいと勘違いしたのでしょう。

 お腹の上に何度も飛び乗られ、吐いては雑巾を投げつけられ掃除させられます。

 気に入らないことがあれば、お茶をかけられ、殴られ、それを母は見て見ぬふりをしていました。

 学校ではいじめにあい、凍ったペットボトルで殴られ、私物は捨てられ、汚物扱いされ、嫌がらせはエスカレートし、先生に万引きをしている。お金を盗まれたなど悪評を流されました。

 先生は私を嫌い、ひどく睨むようになりました。

 家に帰れば暴力、学校に行けばいじめ、塾に行けばいじめ。否定もできないほど、お風呂に入ることができない私は汚物そのもので。

 塾が帰りに何度も道路に寝ころんで、このままひき殺してほしいと泣いていました。

 それでも悲しくても苦しくても、いつかひよばあが迎えに来てくれる。助けてくれるんだと夢を見ていました。

 それだけを救いに生きてきたのですが、ある日限界を迎えて発狂しました。

 声にならない叫びをあげて、畳をかきむしり、泣き叫んでいました。

 それを見た母は私を殴り、正気に戻るまで私はひどい暴力に会いました。痛い、痛い、助けて、ばあちゃん。ばあちゃんと泣きました。

 母は「こんな頭のおかしい子供をもって恥ずかしい。死んでくれたらいいのに」と吐き捨てました。

 当時、自傷行為をしていた腕は、彫刻刀でびっしりと傷があり、それに興味を持った姉に写真を撮られ、知人にばらまかれました。

 地獄。ここは地獄なんだ。

 せめて涙が枯れるまで泣いてしまおう。そう思ったのに、泣いても泣いても涙が枯れることはありませんでした。

 きっと永遠に泣いても泣いても、死ぬまで涙は枯れないのだと思いました。優しいひよばあが、いつか助けてくれる。迎えに来てくれると、縋りました。

 世界は暗く濁っていました。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?