パンダの写真がある。
白黒のパンダ、13匹。
一見パンダの写真だが、
これはラブパンダの暗号だという。
「そういうわけだ、頼めるか、解析屋」
解析屋と呼ばれた男は難しい顔をした。
「あんた、白黒の敵かい?」
「まぁ、そんなところだ」
「まぁ、深いものじゃなければいけると思う」
「深いもの?」
「解析していると、泥沼になるのがあるのさ」
解析屋はおどける。
「俺は基本的に中立だ。だからどっちの暗号も解く」
白黒の敵の男は、困ったような顔をした。
解析屋は続ける。
「暗号を機械に任せてると、パンダにも聞かれますよ」
解析屋は飄々と言う。
「わかった、それじゃ、引き受けてくれるんだな」
「金次第ですよ」
解析屋は笑った。
白黒の敵の男が帰って、
解析屋は簡単な解析から始める。
電脳が進歩したこの時代、
暗号を作るものと、解析するもので、
いたちごっこが続いていた。
電脳で複雑な暗号にするもの、
そして、電脳で解くもの。
この話の解析屋は、
様々の暗号を解くことを生業としている。
解けない暗号はない。
何かの意味があるはず。
ラブパンダのパンダなら、なおさら。
解析屋はそう思う。
「しかし、写真とは。まだあるんだな、こんな技術」
解析屋はしげしげと写真を見る。
13匹のパンダ。
思い思いの姿をとっているように見える。
そういえば三毛はいない。
解析屋はちょっとだけひらめく。
白と黒。0と1。
電子暗号を形にしたか?
それだけじゃないな、
13匹にも何か意味があるはず。
解析屋は電脳から情報を検索する。
13は不吉な数字というイメージから、検索。
次々と思いついたことを、検索に混ぜる手法をとる。
ラブパンダは、パンダを守るだけでなく、
パンダは神からの使いとする一派までいるという。
検索イメージにそれを混ぜる。
一匹だけ顔を背けているパンダがいる。
もしかしたら、これは。
「最後の晩餐…か」
宗教的な絵画の一つと伝えられている。
そこに様々の意味を求めて学者が研究したという。
それがパンダになっている。
噂には聞いていた。
パンダを神とする一派の使っている、
解析困難な暗号のことを。
もしかしたら、この写真がそうなのか。
13匹のパンダが。
これはもしかしたら、
「パンダヴィンチコード」
つぶやき、解析屋は武者震いした。
ぞくぞくする。
こんなに面白そうな解析は初めてだ。
「楽しませてくれよ、パンダさん」
解析屋は全力の解析を始めた。