カランコロン——。
ベルの音と共に美貌の男が現れた。
「見て、あの人、すごいイケメン!」
女性客の声が弾けるように響く。
百八十センチを軽く超えてそうな長身。無造作な茶色の髪は柔らかく光を反射し、シャープな顎に端正な顔立ち——遠くからでもキラキラと輝いて見える。
白い開襟シャツに細身のパンツというラフなファッションにもかかわらず、その人の着こなしは、映画のワンシーンを切り取ったようにおしゃれだった。
(まるで闇夜に光がさしたみたい。やさぐれてる私とは真逆だわ……)
未来を閉ざされた不幸な女……。
それが私の自意識だったから、ただそこに居るだけで太陽のように輝いている彼が、ことさら眩しく見えてしまう。
ふと彼はこっちを見た。視線があった瞬間、探し物を見つけたみたいな、嬉しそうな表情を浮かべる。
(んん????)
彼は長い脚でこちらに近づいてくると、テーブルの前で立ち止まる。
そしてにっこりと微笑みかけてきた。
これは、人生の崖っぷちにいた私が、悪魔みたいに綺麗な王子様とめぐり合い、砂糖菓子のように甘いときめきを味わう物語。