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第8話 巨乳が水着に着替えたら

 綿丘さんの肌は透きとおるように白い。

 陶器のようにきめ細かくて、雪のように白い。

 雪というのはもちろん比喩で、あたたかい血のかよった色をしている。それほど透明感があって、綺麗だということだ。

 そんな彼女が白いビキニを着たらどうなってしまうのだろう……。


「白が好きなのかな?」


 綿丘さんが持っている白い水着をぼうっと見ていたら、彼女はそう言った。


「あ、うん。す、好きかも……」

「そう。じゃあ試着してみようかな。すみませーん、試着してもいいですか?」


 綿丘さんはさっき彼女の胸を見て、唖然としていた店員さんにたずねた。

 アラサーくらいの女性店員は僕たちに向かって愛想よく笑った。

「もちろんけっこうです。そちらの試着室をご利用ください」


 試着室は水着売り場の隅にあった。


「じゃあ着替えてくるね。小鹿くんの好きな水着を買いたいから、遠慮なく感想を聞かせてね」

「き、着替えるの? こ、ここで水着になるの? 僕、綿丘さんの水着姿を見ていいのかな?」 

 僕があたふたとあわてると、彼女はぷっと吹き出して、口に手を当ててにまっと笑った。

「あたりまえじゃーん。彼氏に選んでもらいたくて、ついてきてもらったんだよ。今日は絶対にきみ好みの水着を買うからね!」


 綿丘さんは僕好みの水着を買うつもりなのか……。

 すごくうれしいことを言ってくれるんだな。

 僕のカノジョは可愛すぎる。


 綿丘さんは試着室の中へと消えた。

 僕は呆然として、ベージュのカーテンにつつまれた小部屋を眺めた。

 微かに衣擦れの音が聴こえてきて、僕の心臓は激しく鼓動を打った。

 あの綿丘さんがいま服を脱いでいる……。


「すごく綺麗なカノジョさんですね」

 店員さんから声をかけられた。

「あ、はい。僕なんかにはもったいない人です」

「そんなことはありませんよ。彼氏さんもとてもカッコいい……カワイイですよ」

 言い直されてしまった。まあ僕の評価が格好いいより可愛いに傾いてしまうのは仕方がない。

「カノジョさん、素敵なスタイルですね。ごゆっくりとお選びください」

 店員さんはなんだか楽しそうに僕を見ていた。

 水着を買いにきた高校生のカップルが初々しく見えるのかもしれない。


「小鹿くん、そこにいる?」

 試着室から綿丘さんの声がした。

「う、うん。いるよ」

「着替えたから。カーテンを開けるよ」

 シャッと音がして、とばりが開かれた。


 天使のように美しく、淫魔のようにエロいカラダがそこにあって、眩しく光っていた。


 綿丘さんは照れながら微笑むコケティッシュな表情をして、僕を見つめていた。

 白い布が胸と股間を隠すだけという煽情的な格好で、僕の前に立っている。

 白い肌に白い布。一瞬真っ裸なんじゃないかと錯覚して、僕はひどく狼狽したが、彼女はちゃんと水着を身につけていた。


「どう、かな?」


 僕はごくりとつばを飲み込んだ。彼女から目が離せなかった。

 わかっていたけど、ものすごい胸だった。

 いや、僕はわかってなんかいなかった。

 服の上から膨らみを見ただけでは、その破壊力を理解することは到底できはしなかったのだ。


 たわわに実った大きな果実が、ばいーんと張り出しながら、重力には逆らい切れずに幾分か垂れている。

 見事に造形されたふたつの釣鐘型とそれが形づくる深い谷間……。


 しかも、彼女の姿態の魅力はそれだけではなかった。

 腰は細くくびれ、その下はまた丸みを帯びて膨らみ、長い脚はなまめかしい曲線を描いている。

 太ももはむちっとして、足首はきゅっとしまっている。

 腕だって美しくて、指は白魚のように細く長い。


 あ、これ、僕には刺激が強すぎる……。

 水着に着替えた綿丘さんの破壊力は、僕の頭を沸騰させ、鼻の奥の血管をたやすく切った。


「き、き、綺麗だよ……。でもちょっと待って。は、鼻血が……」


 僕は鞄の中からティッシュを取り出して、急いで鼻の穴に詰めた。

 そんなことをするのはものすごく恥ずかしかったけれど、やむを得なかった。

 たちまちティッシュは血で濡れた。

 僕のそんなぶざまな姿を、白いビキニを着た綿丘さんがじっと見ていた。


「小鹿くん、大丈夫?」

「だ、だ、大丈夫だよ。綿丘さんが美しすぎて、鼻血を出しちゃったけど大丈夫。ご、ごめん……」

「どうしてあやまるの? わたし、うれしいよ」

「えっ?」

「小鹿くんがわたしの水着姿を見て、鼻血を出したことがうれしいの。それって、気に入ってくれたってことでしょ?」

「あ、うん。そうだね。綿丘さんは最高だよ……」


 僕は心を落ち着けようとして、深呼吸をした。

 しばらくして鼻血は止まった。

 僕はあらためて綿丘さんを見た。


「こ、こんな女の子がリアルに存在していることが信じられないほど綺麗だよ」と僕は正直に感想を言った。

「てへっ、小鹿くんの感想、ちょっと恥ずいね。でもうれしいよ。この水着、似合う?」

「すごく似合ってる」

「そっか……」


 綿丘さんは下を向いてはにかんだ。


「でも他の水着も着てみたいし、見てもらいたいな」


 彼女は「すみませーん」と声をあげて、店員さんを呼んだ。

「はーい」と答えて、さっき僕と話した女性店員がやってきた。


「あの、別の水着も試着してみたいんですけど、いいですか?」

「もちろんです。お手伝いしましょうか?」

「そうですね。おすすめがあったら着てみたいかも……」

「どのような水着をお探しでしょう?」

「ちょっとセクシーなやつ、かな」

 店員さんは僕をちらっと見て、目だけで微かに笑った。

「わかりました。彼氏さんに喜んでもらえるような水着を探してみましょう」

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