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VS ポコポコ様 Round3③

東京都西部

眼下に市街地を見ながら、上空1000m付近を飛行するポコポコ。航空自衛隊のF15戦闘機が6機飛来し、ポコポコに向けて誘導弾ミサイルを発射する。しかし、体の周りを漂う黒い邪気が左右の手の形に変型。指の間で挟むように誘導弾を全て受け止めた。



ポコポコ「センスねぇプレゼントやな……ノーサンキューですわ」



手の形をした邪気が、誘導弾を投げる。戦闘機に向かって飛ぶと、6機中3機に命中し、爆散させた。残った3機がポコポコから距離を取りながら、機銃を連射する。しかし邪気に阻まれ、ポコポコにはかすり傷一つ負わせられない。



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ポコポコと航空自衛隊が交戦中の空域から5km東。川沿いに数十台の10式戦車が並ぶ。そのうち1台の上部のハッチが開き、迷彩柄のヘルメットと戦闘服を着た中年男性が上半身を出した。男性は双眼鏡を両目に当て、西の空を覗く。



男性「1機120億円以上するF-15戦闘機が、夏の花火みたいに爆発してやがる。空自くうじの連中には期待できんな」



戦車の中から若い男性の声が響く。



若い男性「もしかして、ターゲットこっちに来そうですか、五島ごとう1尉?イヤだなぁ。空を飛んでる敵なんだから、空自だけで対処してほしいなぁ」



五島と呼ばれた中年男性は、両目から双眼鏡を離し、戦車の中に向かって怒鳴る。



五島「何を不抜けたこと言ってやがる!空自が倒せなかった敵を我々陸自りくじが倒せば評価はうなぎ登りだ!わかったら覚悟を決めろ!甘えたいなら、無事家に帰ってからママに泣きつけ!」


若い男性「へいへーい」



再び双眼鏡を覗く五島。ポコポコの周囲を飛んでいた戦闘機3機が、黒い光線に飲まれ粉々に散った。



五島「無能どもが!お高級な戦闘機を、日本国民の皆様の税金で運用しているという自覚があるのか!?無駄遣いしやがって!」



五島が文句を垂れた直後、空から一筋の黒い光線が降り注ぐ。待機していた戦車の3分の1が、川沿いの道路とともに消失した。



五島「何だとぉ!?まだ5km以上離れてるというのにぃ!?」


若い男性「ここはすでにヤツの射程範囲だったのか……どうします、1尉!?」



五島は左の胸元に装着している無線機に叫ぶ。



五島「全軍、迎撃せよ!とにかく撃つべし!撃つべし!撃つべし!」



無線から重機関銃の発砲音が鳴る。五島は「重機関銃での狙撃は無理だ!戦車の主砲を使え!」と激昂。しかし予想外の答えが返ってきた。



“カマキリ人間が……あぁぁぁぁぁっ!”



男性の悲鳴が響き、無線が途切れた。



五島「何があった!?おい!……カマキリ人間だと?」



視線を無線から周囲に移す五島。戦闘服を着たマンティノイドが十数体、戦車部隊を襲撃していた。応戦する陸上自衛隊員たち。五島は即座に状況を察し、自身が乗る戦車に迫るマンティノイドに向けて「うぉぉぉぁぁぁっ!」と叫びながら重機関銃を乱射した。



−−−−−−−−−



マンティノイド専用シェルター

ギリシャのエンタシスを彷彿とさせる柱が立ち並ぶ、広大な地下空間。カマキリの顔をした、非戦闘員のマンティノイドたちおよそ1000体が、小さなグループに分かれて腰を下ろし談笑している。


その中にツバサの姿もあった。ツバサのすぐ目の前で父親が横になり、右隣で母親がスマートフォンを触っている。



ツバサの父「おい、やめないか。もうすぐスマホは使えなくなる。スマホのない生活に慣れておけ」


ツバサの母「だからこそ今のうちに使っておくんじゃない。ママ友たちに最後の挨拶も言えないままここに来ちゃったんだし」


ツバサの父「人間どもと仲良くするなと何度も言っておいただろう。情が湧いてしまうから」


ツバサの母「情?湧かないわよ。今まで言えなかった恨み辛みを送ってるの」


ツバサの父「……そうか。なら構わない」


ツバサの母「ツバサも、友達が死んじゃう前に連絡を入れておいたら?知り合いにガツンと言えるチャンスなんてそうないわよ」



ツバサは、たしかに今が「チャンス」だと確信する。ズボンの右ポケットからスマートフォンを取り出し、メッセージアプリを起動した。



ツバサ「うん。そうするよ」



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シゲミ一家邸宅地下 ステルス爆撃機格納庫

爆撃機のコックピット内、右側の座席にシゲミが、左側の座席にハルミが座っている。ハルミは離陸のための操作中。


シゲミが着るブレザーのジャケット、左ポケットに入っているスマートフォンが鳴動した。取り出して画面を見る。



ハルミ「誰からじゃ?」


シゲミ「よ。敵の情報を送ってもらう?」


ハルミ「不要。敵は発見し次第、即殲滅。それだけじゃ」



格納庫の天井が左右に割れ、太陽の光が機体を照らす。床がせり上がり、ステルス爆撃機は邸宅内の庭に、その全身をさらした。


マイク付きのヘルメットを被るシゲミとハルミ。



ハルミ「行くぞ。準備はええな、お嬢さん?」


シゲミ「いつでもどうぞ」



ステルス爆撃機の前方、芝生が広がる庭が地面ごとひっくり返り、コンクリート製の短い滑走路が現れる。爆撃機は滑走路に沿って前進し、ゆっくりと浮上。タイヤを機体の中に仕舞うと、スピードを上げながら大空へと飛び立っていった。

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