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第98話・ウチのせいですか!?

 北の遠征から急いで戻り『ティラちゃんたちが危ない!』と、キティと二人で南東に全力疾走している時だった。


 ウチはなんだかよくわからない不安に駆られてしまい、とりあえずティラノのジュラたまを、装着したんだけど……


 丁度その時ティラノは、ジュラたまブーストパワーでベルノを打ち上げてしまったらしい。


 ……宇宙飛行士ベルノ爆誕の原因はウチだったという事だ。



 しばらくして、進行方向の遥か先に黒い雷雲が集まって行くのが見えた。


 ——明らかに異常事態。


 その時、ティラノのジュラたまが光ったんだ。それも、今までになく強く、そして強烈に。


「これ、なんかヤバイよね……」

「オラもそう思うだす(キリッ)」


 その時、力がす~っと抜ける感じがしてさ。そしたら今度はベルノのジュラたまも強く光りだして。『めっちゃ緊急事態じゃん!』って事で二つ目、ベルノのジュラたまも装着。


「キティちゃん、全力ダッシュで向かって。あとの判断は任せるよ!」

「わかっただす(キリッ)」


 直後、風になるキティ。そして最後にウチは、キティのジュラたまを指にはめた。


 左手にギラギラと光り輝く三つのジュラたま。ガンガン光り、ガンガン激減するウチの体力。

 もうヘロヘロすぎてヤバイって時に、キティのジュラたまが強く輝いて体力がドガガガッっと抜けて……。


 なんにしても、よくここまでたどり着けたなって感じだった。


「あぁ~、みんなぁぁ~~、無事ぃぃぃ~~~?」

「おい『無事~?』じゃねえよ。亜紀っちの方がやべぇじゃねえか」


 とりあえず、ティラノやみんなの顔を確認したら安心してしまって気が抜けたのだと思う。


「ウチ、マジで死にそうや。ジュライチしんどいわ……」


 そして、その場に瀕死の猫人ウチがぶっ倒れたらしい。


 ……あとでベルノが『エクトプラズムが見えたニャ』と言っていた。





〔全力疾走しながらジュラたまを三つも使えば、そうなるのは当然ですね。自業自得と言うものです〕 


 気を失っていたのは五分くらいか。ベルノやラミアが介抱してくれていたみたいだ。

 そして、爽やかな目覚め直後の第一声がこれ。うう、なんか女神さんが冷たい。


「もうちょっと優しい言葉かけてくれてもいいじゃんか~」

〔そんな事をしたら、あなたは調子に乗るのでダメです〕


 ……うん、よくわかっていらっしゃる。


「ところでさ、あれ、説明してもらってもよい?」


 見たこともない赤デカい魔族が、そしてアンジーの恐竜人ライズであるトリスが、ベルノを神とあがたてまつっている摩訶不思議まかふしぎな状況。


 初見で理解できる人がいたらそれは天才以外の何者でもないと思う。


「臣下ってどゆ事?」

「すまん、亜紀っち。俺様にもよくわからねぇ」

「でもこれ、亜紀ぴの影響ですよね」

「え……ウチのせいなん?」

「ええ、まず間違いなく」 


 冗談ぽく笑いながらラミアに断言された。……ますますわけわからん。そして、その腕の中にはぐったりしている鳥が見える。


 この娘は、あの時海岸で見かけた“ちっこかわいい鳥”だ。


「その鳥さんはどうしたの?」

「まあ、色々ありまして。大丈夫、もうすぐ目を覚ますと思います」


 そう言いながらヒールをかけ続けるラミア。軽く『色々と』なんて言っていたけど、かなり大変な事態だったことはこの場所の荒れ方とみんなの顔を見ればわかる。


 砕けて折れた木刀、大量の血溜まり、地面の焼け焦げと数か所のえぐれた跡。そして辺り一面の薙倒された木々。


 なにより、初代はつしろ新生ねおが真っ青な顔をして座り込んだままなのが一番気がかりだ。


「そこの血溜まり。お前のか?」

「……だったらなんだってんだよ」

「なるほどね。貧血で立てないのか」


 地面に吸われて黒くなっている部分を考えると、かなりの量の血が流れたと思う。


 回復魔法で傷が治っても、流れた血は戻らない。

 多分今の初代新生は眩暈めまいが酷かったり手足が異常に冷たかったりするはず。


 それでも死に至るほどの出血じゃなかったのは幸いだ。


「おい、八白亜紀……」

「な、なんや……」


 なんか物凄い剣幕でにらみつけてくる初代新生。その健康状態でどこにそんな力があるんだ?


「おまえ、オレの顔にいたずら描きしただろ」


 ——!!


「な、なんのことかな~。多分、女神さんじゃないかな~」


 無言で振り下ろされる、“ぱふっ”としたカカト落としのツッコミ。直接反論しなかったのは、止めなかった自分にも責任はあると思っているのだろう。


「はぁ? おまえしかいねぇよ」

「と、とりあえずさ、チョコ食えチョコ」

「てめ、ふざけんなよ、こんな時に」

「こんな時だからだろ。脳にブドウ糖は必要やで。エネルギー変換効率も良いし、疲労回復にもなる。貧血のオマエには今一番必要なもんや」


 と、半分聞きかじったような、嘘か本当かわからない御託ごたくを並べながら、彼女の口にムリヤリ放り込んだ。


 なんだかんだ言ってもJKだ、甘いものが嫌いな訳じゃない。


「あとは毛布でもあればいいんだけど……」


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