ティラノの木刀に集約された
その威力はレックス・ブレードの比ではなく、火山の噴火にも匹敵するような全てを破壊し尽くす脅威。
——まさしく
しかし、バルログはよほど自信があったのか、それともなにも考えていないのか。
分裂体が合体して一人に戻ると、逃げることもなく
――これはティラノの
最恐ティラノが放つレックス・ディザスターが、炎の化身バルログが展開する
轟音が大気を震わせ、それにともなって発生した衝撃波は周りの枯れた木々を薙倒し、砂嵐を巻き起こした。
全員が隠れられるだけの大きさの岩とラミアの
弾丸の如く飛んできた小石はガイアの
「とんでもない威力ですわね」
十数メートル先に吹き荒れる嵐を見ながら口を開くラミア。
その言葉を受けて、バツが悪そうな顔をしなが頬をポリポリとかく
「マジで……オレの……」
「新生のせいなのニャ!」
……容赦のないベルノであった。
しばらくして暴風がおさまり、辺りがシーン……となったのを見計らって、ベルノが大岩の陰からヒョコっと顔をのぞかせた。
みなもつられて、ティラノの安否を確認しようとのぞくと、そこにはボロボロの姿で立ち尽くすティラノと、血だらけのバルログがいた。
ティラノの剣筋はバルログの右肩から左膝の辺りまで、ザックリと袈裟斬りにしていた。
その
「ちっ、まだ足りねぇ……」
「ヒョ……ヒョ……。そんナものかや、最強の技とイうのは……」
かなり深い傷であることは間違いない。事実、バルログは機動性を失い、その場から動けずにいる。
……しかし、残念ながら彼を倒すほどのダメージにはなっていなかった。
「ティラノなにやってるニャ。もっかいやるニャ!」
「すまん、無理なんだ……」
レックス・ディザスターを構えている時に何度も聞こえて来た『パキッ』という音。そして今……
――バキッッッッ……
更に大きい音がティラノの手元から聞こえたかと思うと、木刀は砕け、手元から折れてしまった。
即興未完成のレックス・ディザスターとは言っても、気象に影響がでてしまうほどのとんでもない威力の技だ。
それでもバルログを倒せなかったのは、木刀が耐えきれずにヒビが入り、技の威力をだし切れなかったからなのだろう。
「ヒョヒョ。貴様らニはもう攻撃手段はナかろうヨ」
ニヤリと笑いながら煽ってくるバルログ。しかし言葉とは裏腹にかなり息が荒い。
相当なダメージを負っているとみた初代新生は、剣鉈を構えながらみんなに聞いた。
「——まだだ。全員、動けるか?」
もちろん答えはわかっていたが、最後の攻勢を仕掛けるために必要な問いだったのだろう。
「当たり前ニャ。あのハゲはしっぽの仇ニャ!」
「では、神使のわたくしもお供いたしますわ」
「みんな……諦めてない。デス」
戦国武将が味方を鼓舞するように、初代新生のこの問い掛けはみんなの気持ちを高めていた。
そしてそれは、ティラの耳にも届いていた。
「トリス、上から頼む。思いっきり
「わかった……やってみる。デス」
覚醒したかのように、テキパキと指示をだし始めた初代新生。
「ラミア、ベルノに防御のなんかを!」
……しかしここは適当だった。さすがにJKが魔法の種類など知っているはずもないのだから。
トリスは急上昇するとバルログの視界に入る高さで止まり、ランスを脇に構えながら声高々に宣言した。
「神の御名のもと、
空を覆う黒い雲の隙間から太陽の光が差し込み、トリスとその得物であるランスを、神々しく輝かせていた。