目に見えるのは砂と岩だけの大地、そして所々にある血だまりと焼け焦げた跡。
そんな、
確かに
……いや、むしろこの天災とも言えるエネルギー量を想定できる者なんていないと断言できる。
ティラノ本人も木刀に収束したエネルギーに振り回されているみたいだ。足元が少しフラつくような
「あの竜巻みたいな
ラミアの言葉は冷静だが、目の前に発生している強大なエネルギーに、顏はこわばり冷や汗が頬を伝っていた。
「バカティラノは加減を知らないニャ!」
「いや、そうじゃなくてよぉ……」
困惑した表情で仲間の方を振り向くティラノ。
「新生っちぃ~。これ、どうやって止めればいいんだ?」
「んなもん知るかよ。とりあえず撃っとけ」
悪態じみた口調ではあるものの、明らかに同様している初代新生。
……自分が原因なのだと認識はしているようだ。
「マジかよ。どうなっても知んねぇぞ……」
「みんな……下がった方がいい。デス」
ガイアの頬を汗がつたって流れる。生命エネルギーである“マナ”が見える彼女には、この異常事態が理解できているのかもしれない。
「ティラノ……頑張れ。デス」
「ティラニャ~。気合ニャ!」
「みんなで応援してますよ、ティラノさん」
「……
黒い雷雲がティラノに引き寄せられ、辺り一帯が薄暗くなってきた。いつの間にか空は全てが灰色で、つい数分前の爽快な青空はひとかけらも残っていない。
ティラノは今、全てを吹き飛ばす暴風域の中心と化していた。
「ひとつ思ったのですが……」
多分、みんながなんとなく思ったであろう疑問を、トリスが初代新生にぶつけた。
「あれって、普段のレックス・ブレードよりも周りに悪影響がでていません?」
これは完全に初代新生の誤算だった。
きっと彼女は、漫画で見たような『土壇場で機転を利かせて新技を編みだして敵を倒したぜ~』みたいな展開を考えていたのだろう。
「オ、オレのせいかよ……」
しかし現実は、単なる力の暴走だ。さすがにみんな、『誰かのせい』と言うのには抵抗があったと思う。だが……
「間違いなく新生のせいニャ!」
ベルノのぷにぷに肉球が初代新生の尻を“ぽふんっ”とたたいた。何者にも忖度しないベルノの直球は、こういう場面で意外と役に立つ。
ラミアは苦笑しながら大岩の陰にみんながいるのを確認すると、
ガイアもそれに続いて
暴風は激しさを増して更に膨れ上がり、頭上の黒い雲の中には、雷が暴れる
そして、細かい雨粒は風に乗って、周囲の岩や枯れ木、そしてティラノとバルログを激しく打ちつけていた。
炎をまとうバルログに当たった雨粒は、ジュッと小さな音を立てて気化していく。そして大量に発生した水蒸気は、そのまま黒い雲に吸い寄せられ更に膨れ上がっていった。
奇しくも、熱と水蒸気を発生させるバルログの存在が上昇気流を生み、ティラノが作った雨雲を強大にしていたのだった。
そんな時、ティラノの耳に『パキッ……』という微かな音が聞こえて来た。それも一回ではなく、断続的にだ。
「……やべぇな」
すでに限界点だ。頭上にある強大な
これ以上大きくなってしまったら始末に負えない。
「おっさん、頼むから死ぬなよ……」
――パキッ
「レックス……」
――パキパキッ
「ディザスター!!!」