ベルノはグレムリンたちから目を離さずに、動けなくなっている
「痛いの痛いの……」
初代新生の外傷が激しい左腕からモヤッとした“痛い”がベルノの手に集まり、それと同時に砕けた腕が再生されていく。
彼女はその強烈な痛みに顔を歪め、口から洩れそうになる呻き声を必死に我慢していた。
そもそも傷の再生自体が自然の摂理に反するものだ。
怪我そのものの痛みは取ることはできても、急激な回復にともなって発生する痛み……つまり、正常な部分と回復した部分の新陳代謝のズレから来る痛みは我慢するしかない。
ベルノはまず、的がデカいバルログを狙い“痛い”を投げつけた。
「飛んでいくニャ!」
ハッキリと見える訳ではない。それでも目を凝らせば、モヤッとした空気の塊みたいなものが”そこにある“とわかる。
「あれはなんだっぺ……」
「ヒョ?」
バルログは投げつけられたモヤっとしたものを無造作に左手で払った。しかしその瞬間“ボキボキボキッ……”と、左手の指が数本折れてしまう。
「うグあぁ、痛デぇ! なンじゃコれは」
――
グレムリンは最初、なにが起きたのかわからなかったのだと思う。しかし、ほんの十数秒前には左腕が砕けて死にかけていた猫人が、起き上がっていることに違和感を覚えたようだ。
「ふむ、もしや……」
「グレ、痛ぇよ~」
「騒ぐなっぺ。おい、バルログ。あのガキを捕まえれば魔王様から褒美がでるっぺよ」
「ヒョ、本当かや?」
「ああ、間違いないっペ。あれは敵の中で一番の脅威だ」
魔法に頼らない回復能力。それでいて攻撃に転じる事ができるスキル。これを『脅威』と判断したグレムリンは、やはりただ者ではない。
「ベルノ、頼みがある」
「ニャ⁉」
「こいつの傷を治してやってくれないか?」
初代新生は両手に抱えた瀕死の鳥に視線を落とすと、ここにきて初めて、他人に頭を下げた。
どのような心境の変化があったのかはわからない。だが、自分の身代わりになって死にかけている鳥を、どうしても救いたいと思ったのだろう。
「……駄目ニャ」
「なんでだよ、オレを治してくれたじゃないか」
「ベルノは恐竜さんを治せないのニャ……」
「嘘だろ……」
鳥を抱いたまま目に涙を浮かべる初代新生。
友人に裏切られ、他人を信じる事ができなくなっていた少女が、わけもわからず一羽の鳥の為に涙を流していた。
「諦めるのはまだニャ。あの中にミアがいるニャ」
「ミア……そうか、さっき
「ナにを無駄話シていルのかや」
言うと同時にバルログは右手に持った杖を振り下ろし、地面に叩きつける。すると、ベルノの足元が勢いよく盛り上がり、地面が鋭いトゲとなって攻撃をして来た。
「あぶないニャ!」
飛びでるまでどこから攻撃が来るかわからない。初代新生は怪我に加え、鳥を抱きかかえたまま避けるのが精一杯だった。
「くそ、なにもできやしねえ」
「ヒョヒョ、避けれルものなら避けてミろ」
足元にばかり気を取られたせいなのは明白だった。直後、初代新生はグレムリンの放った
それでも抱きかかえた鳥には当たらないように、咄嗟に身体を丸めて防御していた。
ボコボコの足元、直撃の
「その
転びかける彼女を受け止めたのはトリスだった。
初代新生はもちろん、ベルノですら気がつかない間に、そっと二人のうしろに降り立っていた。羽ばたき音もさせず、静かに、紳士的に。
「てめぇ、アンジュラのとこの……」
トリスを睨みつける初代新生。アンジーに殺されかけた身としては、その
「ケツニャ。ジェントルメンのケツニャ!」
「意味わからねえ……」
「あの、
トリスは怪我した鳥を抱きかかえるとフワッと浮かぶ。
「この
そしてひと言だけ言い残し、攻撃の及ばない距離まで一気に飛び上がった。
この状況でわざわざ
「新生ニャ。まだ怪我は残っているかニャ?」
「はぁ? どう言う意味……」
そこまで言って、初代新生はベルノの考えが読めたようだ。
「ああ、いろんなとこが痛てぇし、まだ今から