拠点に四人ともいないなんて……
「とにかく急ごう。ティラちゃんたちの安否もだけど……こうなると先行してもらったキティちゃんも心配だ」
――まさかすでに手遅れだったのか?
この、まったく見えない状況が必要以上に不安を掻き立てて来る。
それはきっとアンジーも同じなのだろう、トリスの姿が見えない事に、めずらしく動揺しているのがウチにもわかった。
「ねえ、プチちゃん。トリスはどうしたの?」
「えと、少し周囲を見回ってみるって言ってました」
「そっか、わかった……八白さん、私は一旦自分の拠点に行くよ」
トリスの安否もだけど、アンジーの
アンジーは『トリスと合流したら適度によろしく』と言い残してスーを連れて拠点に走り去っていった。
「適度ってなんだよ……」
余計な事に気を回してしまうのは、変えようのないウチのクセだ。それはよくわかっているつもりなんだけど
……でもこの状況では、悪い事ばかり想像してしまう。
あの四人が誘拐されたとか?
それとも、魔王軍に全滅させられたとか?
どちらもありえない。返り討ちならわかるけど。
う~ん、そうするともしや……
「うう……みんな、かんにんやで~」
労働環境に嫌気がさして、家出してしまったのかもしれない。
「マ、マスターさん、一体なにが……」
「姐さん、なぜ涙目なんスか」
「き、君たちはウチを見捨てないでおくれ~」
〔はぁ、相変わらずですわね。また妄想暴走ですか〕
……ぐすんっ。
♢
そろそろ拠点も近くなってきて、ウチたちは身構えながら進んだ。
首が痛くなるくらい右へ左へと頭をうごかし、目ん玉が飛びでるくらい周囲をガン見したんだけど……
「なんか変ですわね……」
タルボがぼそっと呟いた通り、これは……なにかおかしい。というか、なにも
「まったく、いつも通りっスね」
「そうなんだよね。なにも変わってない」
襲撃を受けたのなら、なにかしら戦闘の跡が残っていてもいいはずだ。それなのにまったく普段通り、木が折れているのでもなく、大地が踏み荒らされている訳でもなかった。
――おかしくなっていないのがおかしい。
それはウチたちの拠点“しっぽの家”を目前にしても変わらず、警戒して進むのが馬鹿みたいに思えて来た。
宴会ハウスの前にキティが見える。彼女は辺りを見回し、地面を調べ、異常がないかチェックしているようだ。
「キティちゃん、様子はどう?」
「誰もいないだすな(キリッ)」
「争った形跡もないね」
「よし、二人一組で周囲を探そう。ルカちゃんとキティちゃんで東側を。ウチとタルボちゃんで西。プチちゃんは空から探索してみて」
とにかく周辺を調べてみないと始まらない。なにかちょっとの痕跡でもいいんだ、それさえ見つかれば……。
「こういう時にガイアちゃんがいてくれたらな~」
〔そのガイアを探しているのでしょう〕
「そうなんだけどさ。アンジーのとこに似た能力もってる
〔多分無理でしょうね。ガイアは特異体質というか、言わば特殊な個体と思われますので〕
ま、普通に考えてあの
「マスター、足跡発見だす!(キリッ)」
「どこどこ?」
「ここだす(キリッ)」
「……はい?」
わからん。普通に地面があるだけだが。片膝をつき、木の葉を丁寧にどかしながら地面を観察するキティ。
「マジで忍者かよ……」
「ここから四人の足跡が南東に続いているだす(キリッ)」
「つまり、なにかあって四人一緒に移動したってことか」
とりあえず襲撃を受けたとかじゃなくてよかった。でも、いったいなにがあったのかは謎のままだ。
「姐さん追いかけるっス」
「あ、待って……」
「どういたしましたの?」
「南東……南東……なんか引っかかるな。ずっとモヤモヤしてんだけど。なんだっけ?」
さっきから引っ掛かっているなにか。全く答えがでて来なくて悩んでいる所に、女神さんがズバっと回答を示してくれた。
〔思い出しました。紫のマナ、ですね〕
「そうか、南東って
四人は初代新生を追いかけたのか?
あまりにムカついててボコりに行ったのか? 『皆でやっちまいますか、ティラさん!』『おう、しばいたるで!』とか。
いやいやいや、さすがにそんな姑息なことをする
とすると……
「やはりウチ、見捨てられたんか? みんな、かんにんやで~」
「あ~、また始まったっスね」
「マスター、それはいいからさっさと追いかけるだす(キリッ)」
……ぐすんっ。