「姉ちゃん、それ
「しつこいざます。主さんみたいな妹はござりんせん」
「いやいや、同じ顔なんだよ。ミアぴ……ラミアの姉ちゃんだろ?」
見た目だけならそっくりなんだよな、見た目だけなら。
「……やはり主さんが、わっちの妹を殺したのでありんすね」
「え~、なんでそうなるのよ」
「そうが、オマエがか……許じておげないよな」
「だから違うってば~」
どこからそんな情報が伝わったのかわからないけど、完全に思い込んでるな。ウチがマブのラミアを殺す訳ないじゃん。
……でもこれ、どうやって証明すればよいの?
「いいから話を聞け。でもとりあえずはうしろをなんとかしてからだ」
前の方からルカとタルボが走ってくる。スケルトンをサクッと全滅させて、こちらの応援に来てくれたのだけれども……
「ルカちゃん、服、服着て!」
さすがに大事な部分はサラシで隠れてはいるものの、ほぼほぼ全裸で走ってくるカルカロドントサウルスのルカ。
元々上着を脱いでいたとは言え、遠目に見たらマッパだぞ。
「しゃーないっスよ、もう一発インパクト撃ったら服燃えちまったんスから!」
「マジか……。キティちゃんの蹴りも凄くなってたし、なんか
……いや、ルカに限ってはわざとという可能性も?
それはさておき、キティが作ってくれた十数メートルの余裕がここで活きる事になった。
ワニの恐竜の前に颯爽と立ちはだかるルカとタルボ。水棲恐竜に対して雷属性のルカなら、かなり優位に事を運べそうだ。
「手加減はするんだよ~」
「わかってるっスよ!」
しかし、やる気満々臨戦態勢300%のルカを手で制して、タルボが進みでた。
「ルカさん、ここは譲っていただきますわ」
「タルボぉ~、そりゃねぇっスよ」
「ダメです。今のあなたでは力加減が難しいと思いますの」
なるほど。パワーアップした雷撃は、まだ手に余るって事か。ここは間近で見ていたタルボの判断を信じよう。
「ルカちゃん、あとで出番用意するから。ここは譲って」
「しゃーねーっス。タルボ、気合入れるっスよ!」
「いえ、気合なんて入れませんわ。そんなことしたら
……なんか今、スゲー恐ろしい事をサラッと言っていたような?
「ま、まあ、やさしくね、やさ~しく~」
一直線に向かってくるワニの恐竜をチラリと見ると、タルボは二言三言呟いて両手を前にだした。
そして、腕を左右に開きながら叫ぶ。
「小細工はいたしませんわ。喰らいなさいませ!
「ええ? タルボちゃん、それって魔法なんじゃ⁉」
魔法名からすると重力操作みたいだけど。この
……と、そこまで考えた時、ある事に気がついた。
今までの攻撃も重力属性ならば、あの小さな身体で特大の破壊力を持つ技を繰りだせるのも頷ける、と。
「ルカちゃんを抑え込んだパワーの
そして今は、その潜在能力が魔法という形で行使可能になっている。これは嬉しい……嬉しすぎる誤算だ。
ワニの恐竜は足が止まり、胴体が地につきそうになっている。
唸り声をあげて必死で抵抗はしているが、
あれだけの巨躯を身動できなくさせるタルボの魔法力、これはかなりのものだ。
「ごの化げ物め!」
その時、うしろから怒鳴り声が聞こえた。
振り向くと、ウェアウルフが漆黒の両手剣を肩に構え、身動きできなくなったワニの恐竜に斬りかかろうとしていた。
「化け物ちゃうわ、アホ犬!」
漆黒の両手剣は魔力を帯びているらしく、赤黒いモヤモヤが剣身からでていた。
こんな『いかにも呪われています』なんて剣で攻撃させるわけにはいかない。
ウェアウルフは一呼吸で間合いを詰めると、身体全体をバネにして飛び上がり、ワニの恐竜に両手剣を振り下ろした。
「——やらせるわけねぇっスよ!」
「——スピードもまだまだだすな(キリッ)」
振り下ろされた剣はワニの恐竜に当たる寸前で止まる。右からはルカの拳に、左からはキティの蹴りに、それぞれに挟まれて真剣白刃取り状態だった。
「ルカちゃん、キティちゃん、ナイス連携!」
二人はウェアウルフが動くと同時に走り込んでいたようだ。
ウチが考えるよりも先に、本人たちの意思で動いてくれる。
思考というか気持ちというか、繋がっている感じに爽快感すら覚えてしまう。
「ぞうか。オマエ、やばり……俺だぢと戦う気なのだな」
「
「もう、だからなんでそうなるんだよ~」
それぞれ武器を構える魔王軍の二人。これは戦いを避けられそうにない。
ミア姉は魔術師だからウチが抑えるとして、ウェアウルフはルカとキティにまかせておいて大丈夫だろう。
あとはワニの恐竜のライズ化だけど、このままだとタルボの魔力切れが心配だ。
「八白さん、お待たせ~」
と、そんな時にタイミングよく現れたのは自称謎女のアンジー。海岸の時と同じようにトリスに乗って飛来した。
「アンジー、おっそい。なにやってたのよ」
当然のようにアンジーの顔を見て驚く二人……いや、驚いているのはミア姉だけか。
ウェアウルフはよほど肝が据わっているのか、微動だにしない。……こういうのが強敵だったりするから要警戒だ。
「ごめんごめん、ちょっと色々あってね。まあ、それはあとで話すとして」
「うん、手分けしないとだね。ウチは姉ちゃんの魔法を封じるのでいっぱいいっぱいかも」
「そしたらこの恐竜さ、私にまかせてもらっていいかな?」
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(注)欺瞞-ぎまん-
嘘、ごまかし、騙しと言った意味。