最優先で決めなければならないこと。それは……
「「連合チーム……」」
その瞬間、ウチとアンジーの視線が交差し、バチバチと火花を散らせた!
「ダブルアッキー!」
「白あん!」
「ちょ、アンジーなによ白あんって? 腹減ってんの?」
「いやいや、八白さんこそ
「恥ずいって失礼な。いいじゃん二人ともアキなんだから」
……なんてセンスのない謎女なんだ、アンジーって!
「八白の白と、アンジュラのアンで白あん。こっちの方が洒落が効いててイイって!」
「だが断る。ウチは小豆のつぶあん派だ! バターを敷いたフライパンの上で、あんぱんをじっくりこんがり押し焼いて食うのが最高に美味い派なんや!」
「あのさ、八白さん。バターの塩気とあんこの甘さ、そしてカリカリの表面ともっちりとした食感がベストマッチなのはわかるけど、今はチーム名の話っしょ!」
……アンジー、やっぱり腹減ってんだろ。
「しっかし、白あんはないわ~。アンジー衰えたり!」
「衰えたりって失礼ね。女子大生に向かってそれはない」
「ええ? アンジーって女子大生なん? マジで?」
「あ~、うん、異世界転生前は……」
一瞬、視線が泳ぐアンジー。あれ、なんか動揺してる……?
「その異世界に何年いたのさ」
「まあ、十年と、ぉ~……ちょいくらい……かな?」
「それすでに女子大生じゃないから! アラサーじゃん。ウチと同世代じゃん」
それでもJDと言い切る胆力は認めるぞ。なんたってウチも『永遠の十七歳教』信者だからな。
「え、マジ? 八白さんって結構年下だと思っていたよ」
「それってウチが女子高生に見えたってこと? ウチJKってヤツっすか?」
「小学生くらい……とか?」
「ひどっ、アラサー小学生がおるかい!」
「JKでもいないってば!」
「二人とも息がピッタリだすな(キリッ)」
さりげなくウチとアンジーにラーメンどんぶりを手渡し、箸を配り始めるキティ。
「キティちゃん、これのどこを見て言って……」
って、あれ? みんなエントラ……宴会場でのんびりしているかと思ったら、いつの間にかウチたち二人を囲んで会食モードに突入してるし。
「なんかわからんけど、ジュラっちも食おうぜ!」
「ちょいまち、ジュラっちって私のこと⁉」
と言いながらもティラノに促されて『ずずず……』とスープを飲み始めるアンジー。複雑な表情してるけど、嫌がってる感じはない。
「だって二人ともアキっちじゃわからねぇし」
「そうっスよ、ジュラ姐さん」
「その呼び方やめて~」
「だからダブルアッキーでいいじゃん」
「いや、そうゆう問題じゃなくて。ありえないって!」
アンジーが壊れかけている……楽しいぞ、このカオスっぷり。こんな風に人と話すことがあるなんて、
引き籠りのウチを連れだしてくれた女神さんに感謝しなきゃ。……なんてことは絶対に口が裂けても言えないけど。
「ところで、みんなどうしたの?」
「お二人が楽しそうなので、こちらで食べることにいたしましたの」
と、今度はタルボがレンゲを配っている。なんか、みんな手際よくなったな。
「あ、八白さんはお子様だから半ラーメンにしてあげてね」
「まだ言うかアラサー女子大生が。ウチは全ラー食うで!」
「え? 脱いでいいんスか?」
「全裸ちゃうわ!」
「もう、腹割って話し始めたらこれだよ」
……アンジー、あんた腹割って壊れてんじゃん。
「よし、決めた」
「ん? アンジーどうしたの?」
「ルカちゃん、チーム名決めちゃって」
おいおいマジか。いきなり
さらに指名したのがルカって、悪い予感しかしないぞ。『夜露死苦』とかつけられたらどうすんだ。
「自分でいいんスか! それなら……」
ゴクリ……
すでに“いつものサラシにボンタン”という最大限許容範囲内の露出スタイルになっているルカが、目に炎を宿して命名する!
「チーム……レックス・ドライヴっス!」
……超キラキラした笑顔でティラノとグータッチをするルカ。
「いいじゃん、それ。シンプルでいいと思うよ」
「ジュラ姐さんあざっス!」
「……それやめて」
「ところでルカちゃん、名前の由来は?」
「自分とティラさんで湾岸流していた時のチーム名っス!」
「そうきたか……」
恐竜がチーム組んで湾岸を爆走してるって、どんな光景だよ。ステキすぎてめちゃくちゃ見てみたいわ。
♢
連合チーム名も決まり、ミノタウロスやドライアドたちの捜索、そしてまだ見ぬ新しい
ガイアにマナを探ってもらったら、この拠点を中心に五か所にマナの塊が確認できた。
西方面海沿いに青系の塊、これはアンジーの
南東に紫が一人。これは間違いなく
そして魔界との門がある北方向二か所に黒系の塊と、南にも黒系の塊。ラミアもなんだけど、魔王軍関係は総じて黒っぽい色らしい。
実はこれがこれが悩み処だ。
ミノタウロスとドライアドは別々にいて、もう一つが新たな魔王軍なのか? それとも一緒にいて、もう二つがそれぞれ魔王軍なのか?
南の黒い塊は、位置的に新たな魔王軍の可能性は低い。それでも低いってだけで可能性はゼロではない。向かうにはそれなりの戦力が必要になる。
北に主力で行くとしても、もし両方とも新たな魔王軍だったらかなりの危険をともなう。
そして、それ以外にも点在するマナ。これがまだ見ぬ恐竜なんだけど、先に見つけてライズ化しないと、魔王軍に攻撃されてしまうかもしれない。
——この恐竜たちの救助が最優先だ。
ウチとアンジーの二人で三か所を回るのか。戦闘は一切避けるとしても、もう一手……もう一人欲しいよな。
「
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(注)恥ずい-はずい
読んで字の如く『恥ずかしい』の意味。1990年頃に使われていたらしい。