――タルボの攻撃でドライアドが硬直した時、すでに勝負は見えていた。
ドライアドは右腕と左足をそれぞれ押さえられ、砂浜に倒されたまま身動きができない。
二人の
「……完敗でござる」
ドライアドは空を見つめたまま、静かに言った。
「よし、ジュライチ来たで~~!」
ウチにはその時のドライアドが、なにか
〔なんと見事な……〕
「お、珍しく女神さんが感心しとるんか?」
〔いえ、本当にお見事です。勝負に勝つばかりか、まさかティラノまで取り返すとは……〕
……なんですと?
「……ティラちゃん、ウチの
〔なぜ本人が気づいていないのですか。八白亜紀、指示をださずともあなたの意思を感じて動くという事は、“そういう事”なのですよ?〕
「それってウチとティラちゃんの絆が、ジュラたまの力を上回ったんだよな?」
〔そうですね。その判断で正しいと思います〕
振り返るティラノ。そしてフラフラと駆け寄るウチ。
「ティラちゃん!」
「おう、亜紀っち!」
――太陽の下、『パンッ!』と響く音。
そこには……太古の砂浜で“令和のアラサー猫耳少女”と“白亜紀の暴君ティラノサウルス少女”が、砂まみれになりながらハイタッチをしている光景があった。
「テ、ティラノさん~。よかったです~」
「よかったでございますわ!」
「ティラニャ~!」
あとは、そこに這いつくばっている
「……なんか照れるゼ」
「ああ、これはティラちゃんの貴重な照れ顔。誰かスマホ持ってないか、スマホ。これはルカちゃんにも見せたかった~」
「あ、ルカと言えば……亜紀っち、さっき
「そうそう。ルカちゃんにコツを教えてもらったんだ。コークスクリューの打ち方」
「やっぱりか~。なんか見覚えあるパンチだと思ったよ」
さすが、妹分の事はしっかり見ているんだな。
それにしても、なんというか……ホント皆の協力でなんとかなったんだ。ありがたいなんてもんじゃない。
ほっとしたら、なんか感情が爆発してあふれたのだと思う。気がつくとウチは、ティラノとタルボをまとめて抱きしめて……号泣していた。
少しして、これは、多分ウチの感情を読み取ってくれたのだろう。涙がおさまった頃にガイアが声をかけてきた。
「マスター……
「ああ、そうだ……ぐすん。ちょっと待ってね……」
初代新生がどこにジュラたまを持っているかはわかっている。
ティラノがレックス・ブラストを撃った時、ジャケットの左ポケットから光が見えたからだ。
動けない人間から物を取るってのはちょっと抵抗があるけど、これはそもそもウチのジュラたまなんだから
「……これでよし。ガイアちゃん……何気にMVPだよ!」
邪魔が入らないのが、どんなにやりやすかったか。サムズアップしといたけど、ガイアの目に映っているのだろうか?
そしてティラノのジュラたまを、左の薬指にはめた。
――その瞬間!
ウチは、体力の限界を迎えて砂浜に顔面から突っ伏してしまった。
「タルボちゃんのジュラたまをつけたままだって忘れていたよ……」
〔はぁ……おきつきなさい、八白亜紀〕
そのあと、ラミアの“こみこみヒール”でなんとか回復したウチ。残る問題は、チーム新生の
「
「くそっ、ふざけるな、誰がお前なんかに……」
「そうは言ってもさ、お前は今なにもできないだろ。黙ってジュラたま奪ってもよかったんやで?」
う~ん……なんだろう、やはり黙って奪うのは抵抗があるな。こう言うの現代だったら強盗罪になるんだっけ?
「なあ、初代新生。自分からジュラたま渡してくれないか?」
「そんなん奪っても同じだろ。なんでオレがやらなきゃならねぇんだよ」
「もう、この
「欲しければオレを殺してでも奪えよ。ま、どうせできねぇだろうけどな」
ウチが強引な手を使わないってわかっていて、笑いながら『殺せ』とか言ってくる。
初代新生も根は悪いヤツじゃないと思うんだけど、この尖りすぎた性格はちょっと引いてしまう。
「ん~、これは……どうすれば大人しくジュラたま渡してくれるんだろ?」
「——ああ、それはね」
……ん? この声はアンジー?
「
無慈悲な一言と共に翼竜から飛び降りたアンジーは……その手に持つ剣で初代新生の左胸を刺し貫いた。