大自然を満喫できる白亜紀の海岸で、魔王軍と戦うことになってしまったチーム猫耳恐竜とチーム
ここまでの闘いは、ハーピーとセイレーンを倒したウチたちが1ポイントリードしている。
……しかし、本当ならマイナス2ポイントになっている所だった。
横からインプを殴り落した事、そしてウチがガイアを守る為に乱入した事で本当なら完敗だったけど……なんとか口八丁手八丁でノーカンにしてしまった。
そしてここからは、本命・ティラノとタルボの出番だ!
「その木刀の代わりに団扇でも持ったらどないや?」
と、無駄に煽ってくるインプ。
「砂まみれでほざいてんじゃねぇよ。ラーメンで顔洗って出直しやがれ!」
対するティラノも黙っていない。体力もそこそこ回復し、七割程度の力はだせる感じか。
「言うやないかい。ええで、奥歯ガタガタ言わし……」
――瞬間、インプの言葉が木刀にさえぎられた。
“ブオン……”と風をぶち抜く音とともに、ティラノの木刀がインプの鼻先をかすめる。
「今の俺様は、さっきとは違うぜ?」
今の一振りは、“風を切る”ではなく“ぶち壊す”って表現が合っているように思う。
「女神さん、なんか今の凄くなかった?」
動きが全然違う、というか以前の状態に戻った感じだ。『七割なんてもんじゃないぞ』と意表を突かれて驚いていると、ウチの肩に女神さんがちょこんと乗って来た。
〔八白亜紀、あなたの力がジュラたまの影響を上回りかけているのかもしれません〕
「マジ⁉ ウチ強くなってるんか。それって、このままいけばティラちゃんを取り返せるかもしれないってことだよね?」
〔そうですね、あなたの力がティラノに影響を与えているように見えます。これは絆の力が戻りつつあるのでしょう〕
「なんか風向きが変わって来たぞ。このままいい方向にドリフト大爆走や!」
〔やめておいた方がよいですよ。あなたは普段からスベり気味なのですから〕
……めがみさん、いけずやで。
木刀の一振りでインプを黙らせたティラノは、そのまま返す刀で右下から斬り上げる。
——だが、残念な事にこれはドライアドに読まれていた。
ティラノが攻撃に切り替えた瞬間インプとの間に入り込み、刀の鞘で攻撃を受け止めていた。
「そう簡単にやらせはしないでござる」
しかし、相手の動きを読んでいたのはタルボもだった。ティラノとドライアドの交差する刀の下をくぐり抜け、インプの前に躍りでる。
これはドライアドと戦うと見せかけてかわし、先にインプを落とす作戦だ。
「さっきの宣戦布告はブラフだったんやで。ティラちゃん、そのままドライアドを押さえ込むんや!」
「言われなくても! こんなつえーヤツ、放さねぇぜ」
この作戦は、ティラノがドライアドをしっかり抑え込むのがカギだ。調子が戻りつつあるとは言ってもまだ不安はある。
だからまずは、攻撃よりも防御優先で様子を見るのがベターって判断だ。
〔相変わらず、興奮すると変な関西弁がまざりますわね〕
……ほっとけ。『変な』言うなって。
「選手交代かいな。ええで、こっちの
「あら、意見が合いますわね。わたくしもあなたの方が好みですわ。倒しやすそうで!」
「なんやと? ワイをなめとんのか、このアマ」
「あら、なめるだなんてとんでもない。わたくし、腐ったミカンは遠慮いたしますわ!」
言うと同時にタルボはインプに攻撃を仕掛けた。
しかし、明らかに様子がおかしい。なにもない所にバトルハンマーを叩きつけたり、足元がおぼつかなかったりと、目標が定まっていなかった。
〔ティラノの攻撃が当たらなかったのはこのせいですね〕
「って、なにかわかったの?」
〔
「そこに無い物があると錯覚したり、目の前にいる者がそこにはいなかったりってやつ?」
そもそもインプの得意とするのは物理的な攻撃でも強力な魔法攻撃でもなく、相手を惑わせるといった類の魔法。
魔法耐性をほぼ持たない
「厄介な魔法やけど……。だが甘いで。この時代の娘には通用しても、ウチには通用せえへん!」
〔対策があるのですか?〕
「まあ、みとけって。ウチの
〔知っているからこそ不安なのですよ。はぁ……〕
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(注)サブカル
サブカルチャーの略。主流ではない文化。時代によって該当するものが異なるが、今現在、令和の日本ではアニメやゲーム、漫画等が該当する。過去においてはロックミュージックやアイドル、声優、鉄道マニア等もその範疇にあった。
※八白亜紀の知識ベースはサブカルであり、それを応用した戦術や交渉術を使う。