「なんのゲームだったかな……ジャンルはRPGなんだけど。呪いのアイテムかなんかで、一歩進むごとにモンスターに
〔いきなりどうしたのですか?〕
「いや、あいつを見てるとさ。なんというか、思いださずにはいられなかったというか……」
♢
チーム猫耳恐竜の拠点からのんびりと半日くらい歩くと、そこにはとんでもなくセレブな風景が広がっていた。
コートダジュールかモルジブか、はたまたセーシェルかと言ったラグジュアリーなビーチリゾート空間だ。
もちろん、写真でしか見た事がないし、『生きているうちに一度くらい行ってみたかったな』と思っていたが、それ以上の光景が目の前に広がっているのを見ると、人生プラマイでプラスかもしれない。
ウチは先々の事を考えて、“水棲恐竜”を仲間にしようと数人で海に遠征してきた。
伝令役のプチにサーチ役のガイア、そして物理アタッカーのタルボ。そして、愛でるためのベルノ。
あとは留守番という名目の本拠地防衛だ。
白亜紀の海岸と言っても転生前の景色と大して変わらない。唯一、植物が恐竜に合わせたサイズになっている事だけが違っていた。
ここは人の手が入っていない正真正銘の大自然。更には入江になっていて、プライベートビーチ感がハンパなく最高だ!
「ふっ、心が洗われるぜ!」
「マ、マスターさん、訳わからないこと言ってないで……」
「魚探すニャ!」
「ベルノ~、魚獲りに来たんじゃないんだぞ」
「さかニャ~!」
……それにしてもルカを置いて来てよかった。こんなロケーションを見たら、止める間もなく光の速さで全裸になるだろうから。
「マスター……向こうの海岸。デス」
「お? なにかいそう?」
「大勢……チカチカしている。デス」
この『チカチカ』というのはガイア独特の表現だ。
ウチは最初、ガイアの能力は“透視”だと思っていたんだけど、実際はちょっと違っていた。
彼女が感知しているのは生命エネルギー、俗に言うオーラとか気とか呼ばれるアレだ。ガイアはこれを“マナ”と呼んでいる。
その“マナ”が強くなったり弱くなったりしているのがチカチカして視える”って事だそうだ。
「大勢チカチカって、運動会でもしてんのかな~」
〔そんな訳ありません!〕
女神さんの“ぱふっ”としたカカト落としがウチの後頭部をなでた。
ところで、ガイアには普段ウチたちの事も“動く熱源”に見えるのだろうか。
だとすると、周りの人の表情や仕草が見えないから、それが原因であまり会話に参加できないのかもしれない。
……でも、それじゃちょっと寂しいよな。今度から彼女には、直絶触れたりしてコミュニケーション取りながら話すようにと、みんなに提案してみよう。
海岸沿いに少し歩くと入り江の区切りがあり、そこはゴツゴツした岩山になっていた。ガイアが『チカチカ』を視たのはこの先だ。
ウチは音を立てないように、そっと登り、岩陰からのぞき込んだ。
「なるほど、大漁……いや、大量にいるなぁ」
魔王軍が四人と、またもやチーム
「あいつ、マジで呪いアイテム持ってんじゃね?」
見た感じ、
このまま見物していたいけど、都合よくアイツだけ気絶するなんてことはないだろうし、その間にティラノたちが大怪我でもしたら目も当てられない。
……気は進まないが、ここは共闘するしかないか。
「プチちゃんとベルノはここに待機で。プチちゃん、例の合図したらこの間みたいに手榴弾ヨロシク!」
「わ、わかりました~!」
そう言うとすぐに双眼鏡をのぞき込み、相変わらず目の前の空間を手でまさぐっている。怪しさ全開、いつものプチだ。
「ニャ……ニャ⁉」
不規則に動くプチの手にベルノが反応した。
目をキラキラさせながら、とびかかりたくてウズウズしているのがよくわかる。猫科の習性だよね。でも、我慢するんだよ~。
「あと、タルボちゃんも待機で。
「いえ、大丈夫ですわ。あの人とは、もう……終わりましたの」
なんだその『別れました』みたいな言い方は。
連ドラなら過去になにがあったのか気になる所だぞ。きっと相手のDVが原因なのよね。
そしてドアの陰から家政婦が見ているんだよ。家政婦はみたらし団子。
……と、いらん妄想はこれくらいにして、と。
「んじゃ、いくよ。ガイアちゃん、タルボちゃん」