――ティラノを
もっとも注意しなきゃならない事だったのに。それも、よりによって
ベルノも捕まっているし、ウチは一体なにをやってんだよ。
……戦術もなく、
「おい、チビのジュラたまもよこせよ」
「ふざけるな、やる訳ないだろ。ティラちゃんを返せ!」
「負け犬の遠吠えってやつだな。取り返せるならやってみろよ……。やれ、ティラノ。こいつぶっ倒して持ってる指輪を全部奪うんだ!」
「うぅ……あ……亜、亜紀っち……ごめん……」
頭上に木刀を構えたまま、必死に抵抗しているティラノ。小刻みに震え、尋常ではない量の汗が噴きだしていた。
ジュラたまの持つ強制力が相当なものだって事がよくわかる。
「ふふ、さっさと負けを認めろ、クズ」
「クズクズクズクズって、確かに
とは言ったものの、結局は虚勢でしかないってわかっている。初代新生だけならまだしも、ティラノや他の
――だけど、なにもせずに屈するのは、絶対に違う。
パワハラに負けて引き篭もった前世。そんなウチが
「彼女たちを裏切る事だけは、絶対にしてはいけない。例え、死ぬことになっても」
〔しかし、死んだらみんなを守れませんよ? それは裏切ったことになりませんか?〕
……なんでこんなときにド正論言うんだよ。
確かにウチには
それでも、まだ手はある。ティラノの攻撃をかい
――猫人の身体能力ならワンチャン行けるはず。
「あ、そうそう、八白亜紀。うちの神さんって意外と優秀らしくてさ」
「……?」
「お前がオレを直接狙ってくるんじゃないか? って予測してるんだけど」
「な……」
「お、当たり? 神さんマジ優秀じゃん」
と、バカにした笑いを向けてくる初代新生。
それまでウチの中で色々な感情が入り乱れていたけど、その表情をみた時、モヤモヤっとした嫌な気分が支配していくのを感じていた。
そのまま感情にまかせて踏みだそうとした時、ティラノのうしろにいたトリケラトプスの
「レックス……」
地面に突き刺した巨大な盾が光を帯びる。
「ディヴァインベイル!!」
光は左右に分裂し、その場に光の盾を発生させた。
トリケラトプスの
それは、『ここは通さない』という意思が籠った、絶対防御に振り切ったスキルだった。
「嘘だろ……ティラちゃんを避けるだけでも相当困難なのに」
「ちっ、さっさとやれよ、アホが」
初代新生は舌打ちをして、ティラノに悪態をつく。そして、その指に光るジュラたまが絶対順守の命令を
「――亜紀っち避けてくれ。頼む!」
ティラノの意志に反して、容赦なく振り下ろされる木刀。
そして、空気を切り裂く爆音をまとった一撃が、なにもできないウチに迫っていた。