「亜紀っち、あいつか?」
「マジか~。なんでこんなとこに来てるんだよ。当分会いたくなかったんだけどな……」
こちらに向かってくる一団に不穏な空気を感じたティラノは、木刀を構えて睨みを効かせた。
『あいつか?』と聞いてきたのは、直感的にルカを襲った猫耳ブラックこと“
「うぜぇ君。君はストーカーでもしてんのかね?」
「んなわけねぇだろ!」
「んじゃ、あれだ。ウチたちの水源の上流に毒でも流そうとしたんだろ」
「……残念ながら痺れ薬だけどな」
「え……マジ? 適当に言ったのに。つか、『残念ながら』じゃないっての。なにがあったらこんなにひねくれた人間ができるんだよ。ったく、親の顔が見たいわ」
余程気に障ったのだろうか。『親の顔が見たい』と言った時に一瞬見えた初代新生の表情は、怒りと殺気に満ち
「てめぇだな? ルカに汚ねぇマネしやがったのは」
にらみ合いで硬直している中、ティラノが割り込んで来た。ルカの件が相当頭に来ているのだろう。
「なんだおまえは……駒がオレに話しかけんじゃねぇよ!」
「ホント、いつもいつも喧嘩腰だねぇ。……また返り討ちにしてほしいのかな?」
「はぁ? あんなのはタルボがしくじっただけだ」
「いやいや、君はキティに一瞬にして無力化されたじゃんか。全部
初代新生はウチのツッコミを無視して手招きをすると、木陰から四人の
そのうち二人には見覚えがある、この間もいたアクロとスピノだ。そして初めて見る顔が二人。……って、あれ?
「タルボちゃんはどうしたのよ?」
「お前には関係ねぇだろ」
小柄で可愛らしい、それでいてルカを動けなくするほどのパワーを持つ
……まさか、あの
「仕方がない、やるよ。ぶっ倒してタルボちゃんを探そう」
「了解したぜ!」
「ガイアちゃんとベルノは危ないから下がっててね」
チーム
そしてその真ん中にもう一人、三本のスパイクが飛びでているごっつい盾を持った娘がいる。
こちらはティラノと戦闘力みじんこのウチと、能力不明のガイア。うむ、いつもながらのピンチじゃないか。
「ターゲット……ロックオン。デス!」
「え……ってこらこら」
話を聞いていないのか、無防備に進み出るガイア。もしかしてこれはやる気なのかな? 表情から読み取れないってのは結構不便だ。
「仕方ないなぁ、もう。ガイアちゃん、手加減はするんだよ? 大怪我させちゃダメだからね」
「がってん……承知の助。デス」
いまいち会話の傾向がわからないけど……まあ、ウチの知識らしいから仕方がない。
ガイアが両手を広げると、それに呼応するように背中にある菱形の羽根板が、回転しながら放射状に広がった。
なんかこれ、どこかで見た事あるんだけど。
「あ~これはきっと……あのアニメで観た、脳波とかで自在に動かせるアレだ」
八枚の板は頭上で旋回し、自身の周りを囲むように宙に浮いた。
……それにしても綺麗だ。ジュラたまと同じく虹色に輝いている。
「
〔なぜこのタイミングで命名しているのですか、あなたは〕
「え~、会心のできだと思ったんだけどな」
〔まあ、今までで一番まともですが……。それよりも敵をちゃんと見てくださいな〕
初代新生の指示で左右から突っ込んでくるアクロとスピノ。大口を叩きながら、やっている事は前回とまったく一緒だ。
ガイアが手を動かすと、それに反応して
キラキラと光を反射して、この上ない存在感をアピールしている。
——しかし、これは完全な囮だった。
頭上の
ガイアは、そんな二人の足元に”横から回り込ませた“別の
つまづき転倒するアクロとスピノ。多分彼女たちは、なにが起こったのかわかっていないだろう。
そしてガイアは残りの
「鮮やか……ガイアちゃん強すぎない?」
キラキラ輝く
覇気のない静かな印象だったけど、冷静でトリッキーな戦術を使う娘だった。
しかし、
これは間違いなく、初代新生のせいなのだろう。力押しで突っ込ませるだけじゃ、勝てるものも勝てない。
指示ミスと言うか、特性を活かす戦い方を全く知らない感じか。
……ま、ウチの戦術も漫画やゲームで得た知識だけどね。