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第27話・不思議ちゃん。

「なんというか……この不思議なはなんだろう?」

〔ステゴサウルス科のミラガイアですね〕

「あ、いやそういう意味じゃなくて。つかみどころがないというか、不思議ちゃんなんだよね、この娘」 





 チーム猫耳恐竜の拠点から小川を一時間ほどさかのぼった辺り。


 密集した木々が途切れ、そこには太陽が降り注ぐ風光明媚ふうこうめいびな場所があった。


 咲き乱れる色とりどりの花が、殺伐とした戦いを忘れさせてくれる。ウチは、そんな安らいだ気分に浸っていた。


 最初はティラノだけ連れての周囲散策のつもりだったんだけど、ベルノがどうしてもついていくと言って聞かない。


 どうやって説得しようかと思っていたら、『まあ、いいんじゃねぇの?』というティラノの一言でついてくる事に。



 ――ベルノベビーシッター・ティラノが爆誕した瞬間だった。



「口は災いの元……と」

〔八白亜紀、あなたの口が一番災いに近いと思いますが〕

「……女神さんいけずやで」 


 ちょろちょろと走り回るベルノを追いかける、ベルノシッター・ティラノ。お花畑でキャッキャウフフな空間がそこにあった。


 ……い。


 そしてそこには、走り回る娘たちを全く気にすることもなく黙々と水を飲み草をむ恐竜がいた。


 もちろんこれはライズ化するしかないだろう。


 女神さんはライズ化を”戦力にする為“と言っていたけど、ウチは魔王軍から保護するって側面もあると考えている。


 特にこういったマイペースな恐竜は、戦力とか関係なくライズ化して状況を理解してもらった方がよいと思う。


 ――ミルクチョコin!

 ――煙deポンッ!!


 ぼーっとしていて、時々遠くを凝視したり……この娘にはなにか見えているのだろうか? 


 ほっぺはぷにぷにしていて触り心地がよい。つつくとプルンッと跳ね返ってくる。透き通るような色白の肌に、鮮明な青色服のコントラストがなんとも美しい。


 不思議なのは背中に飛んでいる菱形の板。恐竜の時、背中についていたトゲトゲみたいなんだけど、これが武器なのか? 


 さらにはジュラたまの色も特殊だった。今までにない虹色をしていて、角度によっていろんな色の光がみえる。


「ミラガイアのガイアちゃんか。よろしくね!」

「はあ……よろしく。デス」


 少したどたどしい話し方をするガイア。


「大丈夫か? こいつ」

「こらこら……」


 ティラノは思ったことを口にしてしまう性格だ。素直なのはよいけど、良し悪しで言ったらこの場は悪しの方だと思う。


「人それぞれとでも言うか、まあ、色々いていいじゃない!」

「亜紀っちがイイなら俺様は全然かまわないけどよ~。そんなに増やす必要あんのか?」

「魔王軍がどのくらいの規模かわからないからね。仲間は多いほうがいいじゃん」

「なんだよ。もっと俺様に頼れって!」

「もちろん、ティラちゃんには十分すぎるほど頼ってるよ。だから、負担を少なくしたいんだ」


 なんでもかんでも一人に押しつけると、心がすり減ってしまう。そして心に余裕が無くなると、色々ミスがでるようになる。


 そういうのが積み重なると、気がついた時には心身共にボロボロ。


 彼女たちには、そんな思いはさせたくないんだ。……つか、ウチも二度とあんなのはゴメンだわ。


「ちっ、もう充分じゃねぇか。……浮気ばかりすんなよ」

「え……ああ⁉ そうか、ティラちゃんもしかして妬いてる?」

「な……」


 顏を赤らめて焦っている。誰がどう見ても動揺しているのがわかる。


「ティラノ、妬いているのニャ!」


 ベルノのもふもふ平手が“ぽふんっ!”とティラノの尻を叩く。


「……からかうなって」


 元々は十メートルを超す巨大なティラノサウルスの恐竜人ライズ。そんな彼女が嫉妬するとか、なんかギャップ萌えしてごっつ可愛い。 


 そんなウチたちを横目に、ガイアはなにかに反応して身を乗りだした。


 一点を注視する彼女にベルノが声をかける。


「ガイア、どうしたのニャ?」

「あそこ……いる。デス」


 ガイアの凝視する方向をじ~っと見てみるが、なにも見えない。

 木しかない、いや、木々が生い茂っているから見通すことができないと言うのが正しい。


 ……ガイアには、これでも見えているって事なのか?


「なんだ? 俺様にも見えねぇぞ?」

「危険……来てる。デス」

「ティラちゃん警戒しといて。ベルノは少し下がって!」


 もしかしたらこの娘は、遠くの場所を透視できるのかも。特殊能力って感じなのかな。


「亜紀っち、あいつか?」


 ……そしてみんなの視線の先から、あまり遭いたくない腹黒のアイツが顔を見せた。

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