――ウチがキティの名を叫んだのは、単なる直感だった。
”その辺りにいる感じがした“ってだけだったが、もしかしたらこれは、マスターと
「すごいよキティちゃん。『非力』だなんて、自己評価低すぎ!」
単純なパワーや戦闘力という点ではティラノやルカには
そして、完全に気配を消す
「うぜえな。おいカス、おぼえとけよ!」
「あ~、むりむり。カスだから記憶できませ~ん」
「くそが……」
「女の子がそんな汚い言葉を使うもんやないで~」
猫耳ブラックはトゲトゲした殺気をウチに向けたまま、
「逃がさないっスよ!」
「待って、二人ともストップ!」
ルカとキティは追いかけようとしたんだけど、この場は止めるしかない。
「マスター、なんで止めるのだすか?(キリッ)」
「あいつの性格を考えるとさ、ヤケになったら平気で
可哀想だけどあいつの
ライズ化ってのは『強力な制約』だと女神さんが言っていた。それはジュラたまの力を使えば自死も命じる事ができるくらいのもの。
もし猫耳ブラックが『死んでも戦え』なんて命じたら、あの
そんな事態だけは絶対に避けなきゃ。
「それにしても姐さん、助かったっス! あんな技を持ってたとは」
「ふっふっふっ……誰かを助けるのに理由がいるのかに?」
「……かに? っスか?」
「かに、だすなぁ(キリッ?)」
〔噛みましたね。肝心なところで〕
そっとしておいてくれ。……ウチのHPはもうマイナスやで。
♢
一夜明けて。
〔
「やはり送り込まれたって事か」
〔ええ、彼女の場合は“魔王討伐依頼”を受けて転移して来たそうです〕
これは、あのあと女神さんに調査を頼んでおいた件だ。
猫耳ブラックのキツイ性格ってのは、なにか余程の事があったのだろう。だからと言って、昨日のあの言動を許すつもりはない。
それにしても凄い名前だな。新生って書いて”ねお“とか、あいつ、キラキラネーム世代なのか。
「そ、それで、どうするのですか? マスターさん」
「ん~なんというか……タルボちゃんたちを救ってあげたいってのもあるけど、なにもしなくても先々ぶつかる相手なんだよね」
「早いうちに決着つけた方がよさそうだすな(キリッ)」
「それはそうなんだけどさ~」
無意味な敵対心を持った相手を説得するのは、ほぼ不可能に近い。
「たださ……解放する方法がわからないとね。
「亜紀っちの師匠の女神さんは知らないのか?」
……師匠じゃなくて詐欺師なんだけど。
〔はいはい、師匠が通り過ぎますよ。っと〕
「だからどこでそういうネタ仕入れてくるんだよ。それで……あいつの、初代新生の
〔あります〕
――よっしゃ! サクサク解放して無力化して、そのあとはどこかに隠居してもらおう。
「それで、その方法って?」
〔ジュラたまを奪えばライズ契約から解放されます〕
……まあ、正直それなのかな~とは思っていたけど。ひねりもなにもなくそのまんまか。
〔奪ったジュラたまを指にはめれば、八白亜紀、あなたの
「手段は考えるとして、とにかくジュラたまを手に入れる事が唯一の解決方法なんやな」
しかし、これは諸刃の剣だ。初代新生の
「裏を返せば、初代新生がウチのジュラたまを手に入れたら、この
〔そういう事ですね〕
「そんな重要な要素は聞かなくても教えろっての」
しかしこれはかなり難しいミッションだ。『くれ』と言ってもくれるわけじゃないし、そんな簡単に奪えるものでもない。
無力化させてから奪い取るのが一番堅実なんだろうけど、そうなると結局戦わなければならない。
チョコで回復するとは言っても、怪我する前提でみんなを戦わせるのはちょっと気が引けてしまう。
「痛いものは痛いからな。できるだけ怪我させたくないんだ……」
〔でしたら八白亜紀、あなた自身が成長し、ジュラたまを通して
「マジか~。大嫌いな“努力というやつ”をしなければならないのか……」
でもやらないとウチの娘たちがタルボと同じ目に遭ってしまう可能性があるし、やればタルボたちを解放できるかもしれない。
「ならば答えは一つか……しかたねえ。その気になった時のオタクの底力見せたるか!」
〔やる気になったのですね。はぁ……やっと面倒事が減ってくれる〕
「ひと言多いって。で、成長ってなにを目安にすればいいの?」
〔人としての成長は数値化も可視化もできません〕
まあ、そりゃそうだよな。自分で判断しろってことか……なんかいきなり社会の荒波に放りだされた感じがするわ~。
元居た時代も白亜紀も、結局自分次第なんだよな。
「……