目次
ブックマーク
応援する
8
コメント
シェア
通報

第22話・生き別れの妹?

 ベルノが見間違えるという事は、ウチの他にも猫人がいるのか? 


「まさか、生き別れの妹がここに⁉」

〔八白亜紀、あなたは一人っ子のはずでは?〕

「言ってみたかっただけやで。流しといてくれ~」


 なんにしてもこれは確認に行ったほうがいいだろう。


 転生者は一人だけとは限らないし、なにより、女神さんにも心当たりがないってのがひっかかる。


「ティラちゃんとプチちゃん、ベルノはここに残って~。もし恐竜さんがいたらチョコよろしく!」

「おう、まかせろ! 強え~やついるかな?」

「やさしくね、やさしく。武器は使わないで、やさ~しくよろしく!」


 ……頼むから頭突きとかしないでくれ。


「ルカちゃんとキティちゃんは一緒に確認に行こう」

「了解っス!」

「もしなにかあったら、それぞれプチちゃんとキティちゃんが伝令役って事でよろしく!」


 うむ、これで完璧。ウチもリーダーっぽくなってきたじゃないか。と、自画自賛。


〔ところで捕獲したラミアはどこに?〕

「捕獲とか言うなよ。ミアぴ(ラミア)はもう仲間だってば」


 “ミアぴ”というのは俗に言うギャル語での友情表現だ。

 ラミアに合わせて話をしていたら、いつの間にかお互いを『亜紀ぴ』『ミアぴ』と呼ぶ事になってしまった。


 正直言うと、滅茶苦茶恥ずかしい。……ウチ、中身はアラサーなんやで。


 ラミアには魔界とつながる転移門の状況を見に行ってもらっている。“魔王軍の動向を探てもらう”とまではいかなくても、現状の把握はしておいた方がよいと思ったからだ。


 女神さんは『魔王軍を連れてくるのでは?』と言っていたけど、ラミアは裏切るような性格ではないと思う。


 ラミアに転移門を見に行ってもらったのにはもう一つ理由があった。


 タイミングがよければミノタウロスたちと合流できるかもだし、そしたらこちらの拠点を教えておく事ができるからだ。


 まあ、『うまくいけばこっちに引き込めるかもしれない』という打算や下心がちょっとは……いや、半分……80%くらいあった事は言うまでもない。


ミアぴ(ラミア)は大丈夫だよ。もちろんうっし~(ミノタウロス)たちも」

〔まだそんな事を言っているのですか。さっさと殺っておしまいなさい!〕

「殺らないって。地球を守れとは言われたけど、敵を殺せとは言われてないぞ」

〔そんな詐欺師みたいな事を……〕

「え~、詐欺女神がなんか言うとる~。ウチはウチのやり方で地球を守る。それでいいじゃん。意味もなく殺すとか“なしなしのなし”やで!」


 と、詐欺女神さんと会話していたら、そろそろベルノが言っていた場所に着きそうだ。


 この辺りは木々が密集し生い茂っていて視界がメチャクチャ悪い。太陽の光が届かず、薄暗い上に足元はジメジメしていた。


「――姐さん、下がるっス!」

「え……どした?」


 と言いつつも、ルカの異様な雰囲気を感じて素直に下がった。

 やはりこのも戦闘民族、危機管理能力は恐ろしく高いのだろう。


 恐竜人ライズたちはみんな、こういう“突出した能力”を持っているから、ウチはそれを最大限に引きだしてあげられるようにしなきゃだ。


「でて来るっス! 隠れていても臭うっスよ!」


「……ちっ、鼻がくヤツがいたのか」


 そして、正面の木の陰からでて来たのはまさしく猫耳しっぽ。間違いなくウチと同じ、元現代人だった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?