「お~い、ティラちゃん聞こえる~?」
「グア?」
あ、反応した。どうやら
そして会話はできなくても、こちらからの言葉は通じている。と言う事は……
「もしかして、知性を持った恐竜って最強じゃね?」
〔八白亜紀、地球の重力はこの時代も令和も変わらないのですよ?〕
「……なんで急に重力の話になるの?」
〔地球上の生物は長い年月を経て、それこそ一億年以上の歳月をかけて、環境に最も適した形、サイズになって行ったのです〕
「うん、それはわかるけど……」
〔つまり、恐竜の大きさと人間の大きさとでは、地球の重力に対する負担が段違いなのです〕
分析系の動画で『地球上に怪獣は存在できない』的なのが結構あったけど、あの理屈って事か。
「圧倒的な体格という利点よりも、マイナス面の方が大きいって感じ?」
〔マイナスではなく、重力に適応したサイズのヒトの方が、応用が利くと言ったところでしょうか。素早く動けたり道具が使えたりと、特に
「なるほど……恐竜同士ならまだしも、魔王軍みたいなのを相手にするには、身体の大きさがアドバンテージになるとは限らないのか」
それでも、恐竜に戻った方がよい場面もあるかもしれない。と考えもしたが、変身のトリガーが気分次第となると、不安定すぎて戦術には組み込めない。
「つか、むしろ“恐竜還り”は封印しないといつか踏みつぶされそうだよ」
って事で、
――ミルクチョコin!
――煙deポンッ!!
「いや~、久々に楽しかったぜ!」
額の汗を腕で拭いながら
「めっさイイ笑顔しとるな。これ写真撮ったら『一億五千万年に一人の美少女』とか『奇跡の一枚!』とかネットで話題になるぞ。その後アイドル街道まっしぐらや! 猫もまっしぐらや! ウチはマネージャーとしてウハウハな人生まっしぐらや!」
〔はいはい、妄想暴走はそれくらいにして、それよりも目の前の恐竜さんはどうするのですか?〕
「ああ、そうそう、この娘ってさ……」
ウチの真上にある巨大な頭を見上げると、カルカロドントサウルスがこっちをじ~っと見ている事に気が付いた。いや、見ているというよりもこれはむしろ……
「ティラちゃん、ウチを“睨んで”くるこちらのお方は?」
「おう、こいつは俺様の後輩だ」
「後輩ってまさか……。ま、ここはとりま……」
――ミルクチョコin!
――煙deポンッ!!
「ティラさん、ちーーーーーーーーっす!!」
「おう、元気そうじゃねえか!」
「う~ん、やはりか。後輩って言ってたもんな」
足を肩幅に開いて腕を後ろにまわし、腰を直角にまげての挨拶。想像通りの……後輩ヤンキー恐竜!
ティラノと同じ黒の特攻服に、背中には『
フワッと風にそよぐ髪は、明るめの茶色でセミロングのストレート。手には黒いバンテージグローブが見え、その上から鎖が巻きつけてある。……この娘は鎖が武器なのだろうか?
ジュラ珠は紫がかった白で爽やかなイメージだ。
「君はルカちゃんって言うのか~」
「ああん? なんで勝手に名前呼んでんだよ? ティラさん、なんスかこいつ?」
うわ、こえ~。この娘も美形だから迫力あるんだよな。
ヤンキー座りをしながらウチを睨みつけ、右手の鎖をヒュンヒュンと回して威嚇してきた。
「ティラちゃん、なんとかして~」
「おいこら、ティラさんに気安く話しかけてんじゃねーっスよ! シメるぞオラ!!」
ゴッッッ……
鈍い音が響く。これはティラノの鉄拳がルカの脳天に垂直に打ち下ろされた音だった。
「
ヤンキー座りのまま頭を押さえるルカ。
「おいルカ。俺様のマブにふざけた口きいてんじゃねーよ!」
「失礼しましたーっス。ティラさんのマブ殿とは露知らず
なんか……難しい言葉知ってるのね、この娘は。
というかツレからマブダチ属性に格上げされている。なんか照れるな。
「お詫びのしるしに、肩でも揉むっスよ、姐さん!」
「姐さんって……まあ、悪くはないか」
バキバキバキ……
「おぉう! そこそこ……ええわぁ~。ルカちゃん、ツボ心得てるね」
「ってか姐さん、体中バキバキじゃないっスか。運動しないとヤバイっスよ」
……座りっぱなしヒッキーが
「いててて……。そう言えばルカちゃん、さっき向こうで見ていたのはなんで?」
バキバキバキ……
「んと、なんかティラさんの気配を感じたんで来たんスけど、姿が見えなくて」
「ああ、それで困惑してたのか~」
「そしたら突然ティラさんが出てきたから嬉しくなってしまったっス!」
なるほどなるほど。ティラノは慕われてるのね! さすがジュラシックカーストNo.1だわ。
「ここ、激ツボっス!」
バキバキバキバキバキバキ……
「むおっ……くぅ~効く~」
って、激ツボってなんだよ。……初めて聞いたぞ。
妹分のルカ、か。一本気な性格の娘ってウチには眩しすぎるけど、それでも素直に信用できる素敵な
「あ、ところで姐さん」
「なに~?」
「脱いでいいっスか?」
……はい? なんですと??