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第11話・ジュラたま。

「ベルノ大丈夫? ウチのことわかる?」

「はいニャ! 二日ぶりのご主人様ですニャ!」


 二日ぶり⁉ ベルノからしたら、トラックにひかれてから二日しかたってないのか。


 でも、今は元気に返事しているけど……転生させられてからずっと、訳も分からず中州に一人でいたって事だよな? 

 二日間どれだけ不安だったんだろ? それもあんなでかいワニがうろうろしている場所で。 


 偶然なのか必然なのかわからないけど、助ける事ができてほんとよかった。


「ベルノ、ご主人様はやめてね。なんかムズ痒いよ」


 ムズ痒いのは、飼い猫と会話しているという妙な高揚感が原因なのだろう。ありえないことばかり起きているけど、正直これは嬉しい。


 猫好きならみんな思うんじゃないかな『猫と話してみたい』と。


 なにより、また生きて会えたことが嬉しくて顔がニヤけっぱなしだ。


「マスターさんって意外と照れ屋なのですねぇ」


 う、プチに見抜かれてる。と言うか……


「もう、ティラちゃんまでニヤニヤしない!」

「な、オメェ、”ちゃんづけ“してんじゃねえよ」


 照れているのか喜んでいるのか、パタパタとしっぽを振るティラノ。


「ま……いいけどヨ」


 恐竜もしっぽで感情表現をしていたなんて、歴史学者が知ったら喜ぶのだろうな。


「ベルノ。ご主人様じゃなければ、好きな呼び方でいいよ」

「じゃあ、ネネ。ベルノのネネなのニャ!」


 ネネって……姉? まあ、見た目だけなら転生猫人なのかライズ猫人なのか区別つかないだろうし。


 ……ママと言われたら全力で訂正したけど。


「なんにしても、これでベルノもウチのライズだ」 


 とにかくこの笑顔は守る。もう、訳の分からん転生トラックにひかせはしないぞ。


「そして、GETや! ベルノは微かに黄色っぽい白色だな」


〔……ジュラたまとは?〕

「ああ、約束珠の指輪って言いにくいからさ。ジュラシックな珠で“ジュラたま”ってどう?」

〔『どう?』と言われましても……微妙なネーミングセンスで押し切るところが、八白亜紀、とてもあなたらしいですね〕


 ……微妙言うな。


「ところで女神さんや!」

〔だから、ちりめん問屋のご隠居みたいな呼び方はやめて下さい〕

「今更なんだけどさ。魔王軍って、なんなん?」

〔やっとその質問ですか。では、少し説明しましょう〕


 そう言うと女神さんは腕を組んで話し始めた。


〔この地球とは別次元にある世界ヴェイオン。そこは、あなた方の言うところの異世界です〕


 そっちに行っていれば異世界転生だったのか。

 魔法とかバンバン使えたかもしれなと思うとちょっと残念……と言うかまだまだあきらめてないんだけど。


〔ある日ある時、そのヴェイオンに邪悪な魔王が誕生しました。魔王は死ぬ事がなく、長い年月をかけて多くのモンスターを配下にしていき、世界を支配しようと企んでいます〕

「不死の相手なんて、どうしろと?」

〔不死ではありますが、倒せない訳ではありません〕

「……?」

〔倒しても死なずに、一定期間ののち復活するのです。大体、十年ほどでしょうか〕


 なるほど。つまり魔王ってば、倒されて復活してまた倒されて……それを繰り返している、と。


「大人しくしていれば転生勇者に目をつけられる事もないのに」

〔ほんとそれです。そして先日、負けが込んだ魔王軍が転生勇者討伐会議を行いました。そしてその席でとある幹部から『転生される前に、逆に地球に乗り込んで人類を滅ぼそう』と提案がありました〕


 それは理にかなっているけど、地球に来たからと言って勝てる保証はないんだよな。むしろ勇者よりも近代兵器の方が強い気がするし。


 それに、日常にいきなり魔王がでてきても、すぐに適応して戦車とか出動してくるんじゃないかな。


〔しかし、それを聞いた別の幹部がさらに助言をします。『ならば地球人が誕生する前に行って地球ごと潰したらどうか?』と〕

「だから白亜紀に来て地球を潰そうって事か。なんか……こすからいな~」

〔概ね賛同します。しかし、転移そのものに必要な魔力は膨大なものです。時空も次元も跳躍するのですから。その為魔王軍各人、一往復しかできません〕

「つまり、魔王軍を追い返せばいいのか。それで万事解決だね!」

〔サクサク殺してしまったほうが早いのですが?〕


 ……うちの女神さんも相当物騒だぞ。


「メルヘンチックな妖精の姿で『サクサク殺す』とか違和感ありまくりマクリスティだろ」

〔なんですかその変なパワーワードは……〕

「平成初期の流行語だけど、知らない?」

〔また適当なことを……のんびりしている時間はないのですよ? いつ戦闘になるか、わからないのですから〕

「まあまあ、慌てる乞食は貰いが少ないって言うで~」

〔八白亜紀、貴方は少し慌てるべきです〕



「——マスターさん、マスターさん!」



 なんか女神さん説教臭くなってきたな~なんて思っていたら、いいタイミングでプチちゃんに呼ばれた。


「お、どうしたの?」


 木の上で見張りをしていた彼女はなにか見つけたようだ。まあ、視力が滅茶苦茶弱いから、ちゃんと見えてはいないのだろうけど。


「誰かこっちに向かってきますよ~」






 world:01 猫耳転生とJ世代 完

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【ジュラたま】

 恐竜をライズ化した時に出てくる“約束の珠が付いた指輪”を八白亜紀が命名。この指輪をはめる事でライズ化が完了する。約束の珠にはそれぞれ色が付いていて、その色には意味がある。(どんな意味かはworld:05ででてきます)

 また、この指輪を付ける事でマスターの力が恐竜人ライズに供給されパワーアップするが、つけている間はマスターの体力が減り続ける。

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