目次
ブックマーク
応援する
10
コメント
シェア
通報

第10話・超爆誕ニャン!!

 みんなのおかげで、なんとかベルノを助けだすことができた。無事でよかった、ほんっとよかった。結局ウチは自力でなにも成し得ていないけど……そんな反省なんてあとでいい。


 今はまずこの子だ。白い毛並みにしっぽの先の焦げ跡、そして金色の瞳。なにより呼びかけに反応している。


 ……間違いなくウチの飼い猫のベルノだ。


「幼い頃に死に別れて、再会したのが白亜紀って……」


 腕の中で震えている小さいもふもふ。川の水を浴びているし、いつからあそこに放置されていたのかわからないしで体力が心配だ。


「この子もチョコで体力回復するかな?」

〔それはわかりません。さすがに猫まで想定していないので……〕

「と言うか、こんな弱肉強食の時代に転生させたバカ神やつはどこまでアホなんだ? 子猫のままってエサにしかならんだろ」

〔バカなのかアホなのかどちらかにしましょう〕


 ……両方でいいだろ。


「ったくもう、擬人化するとか考えなかったのかよ」

〔ですがもし擬人化していたら、あなたの飼いネコと気がつかなかったのでは?〕


 ああ、言われてみればその通りだ。むしろ結果から見ればよかったと思うべきか。……まあ、理解はしても納得はできないけど。 


「ベルノ、ちょっと口開けて~」


 と、薬を飲ませるときの要領で口を開き、小さく割ったチョコを放り込んだ。……これで体力回復しなかったらどうしよう?


 しかし運命というものは、アッサリとウチを裏切ってくれる。悪い方にも、


 ――煙deポンッ!!


「猫耳モフモフ美少女超爆誕ニャン!!」


 どこかで聞いたようなセリフとともに、猫耳モフモフ”幼女”が。まあ、なんというか死ぬほど、い!


「え、ライズ化? ……ベルノは猫やぞ⁉」

〔あらあら、なんてことでしょう〕

「ちょ、おま、恐竜を変身させるスキル言うてたやないか。『あらあら』じゃないっての!」


 幸せの象徴、ふわふわのしっぽと猫耳!


 人間年齢で言えば五~六歳くらいだろうか。アーモンド形の瞳はクリクリしていて、ほっぺはプニプニ。

 そして、一瞬アンバランスにも思えるゴスロリ調のワンピースが、小悪魔的演出にひと役買っている。


 なんというかもう……食べたくなる可愛さ。そして、萌え系を極めたような可愛いボイス


 だ。


「はうぅ……かわゆいですぅ~」


 ちなみにプチは木の上に逃げていた。猫パンチがよほど嫌だったのだろうか、『かわゆい』言いながら逃げてる矛盾、それもまた可愛い。


「マジか~」

〔あら、嫌なのですか?〕

「嫌とかそういうんじゃなくて、なんかすごく複雑な心境というか、思考がおいつかねぇ……」

「……なんだコイツ? 食っていいか?」


 いたずらっぽく笑いながら言うティラノ。


「やめて下さいティラノさん私のです!」


 さっきまでなら怒っていたこのひと言に、今なら笑って返せる。


 それは、ウチが彼女たちに持っていた先入観、弱肉強食に生きる野生生物への“間違った認識”に気づかされたからだ。





 ベルノを助けるために丸太を渡っているとき、なんとなくティラノに聞いてみた。


「さっきワニを蹴り飛ばしたじゃん?」

「ああ、綺麗に入っただろ、あの回し蹴り!」

「うん。……ってそうじゃなくて。この木を切る時に使った技あるでしょ、レックス・ブレードだっけ? 最初からあの技使っていればサクッと倒せたんじゃないの?」

「はぁ? なにいってんだオメー?」


 ——この時、ウチには思いもよらない返答があったんだ。


「あんな強力な技使ったら、アイツ殺しちまうだろ?」

「でも、殺して食べるんじゃないの?」

「確かに俺様たちは食べるために殺す。だけど腹が減ってねえ時に、意味なく殺すことはありえないぜ?」


 ショックだった、マジでその通りだ。知っていたハズなんだけど、脳の隅っこにこびりついていた程度の知識で、ウチは、そこまで考えが至ってなかった。


 彼女たちの考え方を変えようとか、押さえつけようとか、その時点で間違っていた。

 この時代を生き抜いてきた者としての考えを認めた上で、共存できる道を模索し、理解することが必要だったんだ。


 ――こんな単純な事にやっと気がついたよ。


「これが、ジュラシック世代の在り方なんだな……」





「女神さん、頼みがあるんだけど……」

〔なんでしょう?〕

「この娘たちの為に、カバンから他の食材もだせるようにしてもらえないかな?」

〔いいですよ〕


 え……アッサリと言いやがった。渋ると思って土下座するつもりだったのに。


〔八白亜紀、あなたがこの時代に向き合う一歩となるのですから〕

「まあ、まだそれは微妙なんだけど……異世界転生は諦めてないし」

〔ただし条件があります〕

「条件って?」

恐竜人ライズを五人集めてください。それができたら許可しましょう〕


 五人か。あと三人の……あれ?


「なあ、それってベルノも含むの?」

〔悩ましい所ですが、あなたのライズ化の効果なので含みましょう〕

「じゃあ、あと二人か。あ……」

〔どうしました?〕

「女神さんは恐竜人ライズに含まれますか?」


 直後、ウチの脳天に無言のカカト落としが飛んできました。


 それは“ぱふっ”とした蹴りで、小枝で叩かれた程度のダメージしかなかったけど。



〔『バナナはおやつに入りますか?』みたいな言い方をしないで下さい〕








――――――――――――――――――――――――――――

〇ライズについて

 恐竜を恐竜人化する“能力”や、“恐竜人”を総称してライズと呼ぶ。ライズを行う事象/行為についてはライズ化という書き方をしているので区別がつくと思います。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?